裏へと至る道 その伍
そんなこんながあって、俺はこんな非日常側の人間になってしまったわけだが……一応、後日談は語っておくべきだろうか。
そうだな、必要だろう。
あれから……次に目を覚ましたのは旅館の布団の上だった。
後で話を聞いたところによると、廃寺で俺が気絶しているのを、他の連中が見つけてくれたらしい。
ついでに言っておくと、帰りが遅かった女子はひょっこり帰ってきたそうだ。何とも皮肉な話である。
あと幽霊(?)の件についてだが、ぶっちゃけ夢オチを期待していた。なので起きた時、まるで夢オチかのように「なんだ、夢か…」と言ってみたところ……
【あ、起きたんだ魔王様。おはよう】
とか言う返事が返ってきたりしたりして……結局、悪霊(?)は俺に取り憑いたままだということが判明した。
それから何日もしないうちに、俺はその悪霊(?)……『彼女』に名前をつけることにした。
どうやら『彼女』には名前らしい名前が無いらしく、つけた方が呼びやすいから、俺が命名してやった。
「なんかお前…犬みたいにキャンキャンやかましいから、『ポチ』でいいか?」
これを言ったら、猛反論された。だが最終的に結構気に入ったらしく、それから俺に取り憑いた『彼女』の名前は『ポチ』になった。そう、今ではとても考えられないほどおしとやかであったこの少女こそが後のポチなのだ。ちなみに、まだこの時点では、まさかこんな大人しい子が俺の趣味の影響であんな口調になるとは夢にも思っていなかった。
何はともあれ、これが俺の始まりの物語。
これ以降、ポチはちょくちょく俺の身体を乗っ取り、勝手なことをするようになる。
それが俺の『多重人格』の正体。
俺の多重人格は先天的なものではなく、後天的なものだったのだ。それも最初は『悪霊(?)が取り憑いた』という奇天烈な形から始まっている。これこそが俺の多重人格の真の異常性。
本来、多重人格とさえ呼べないような代物なのだ。これは。
だが、俺はその後、本当の意味で多重人格者になることになる。また、ポチと俺が会話出来なくなるのも、まだ先の話。
そして俺がカミクズの存在とその意味を知り、奴らを狩る決心をするのも……先の話。
今回はあくまで始まりの物語。これから先の物語は、またいつか語ろう。
そろそろ目が覚めそうだ。これで一先ず過去話は終わりだ。
続きは、また今度……
……てか俺さっきから誰に話しかけてんだろ?
「ん…んん…はっ!?」
目を覚ますとそこは、カーテンで仕切られたベッドの上だった。
その空気感からか、それとなくここが保健室だと理解する。
……何故、俺はこんなところで寝ているのだろう。あ、そういえば夕凪に殴られて気を失ったんだっけ。それでここに、か。誰が運んでくれたのやら。いや、もしかしたら自分の足で歩いてきたのかもしれないな。
色々と思考を巡らせ、現状を把握しようとする。
が、その前にやるべき事を思い出し、意識を集中させる。
いわばこれは『お約束』というやつだ。これだけは何があってもやっておきたい。
これで全てが無かったことにはならないが、念のためやっておきたいのが人情だ。
すぅ、と息を吸う。
そして、今までの出来事がまるで夢オチだったかのように、あるいはそう願うように、俺はこう言うのであった。
「なんだ……夢か……」
当然、返事をくれる声なんてあるわけがなく。
なんだか面白くなくて、俺はふて寝の意味も兼ねて二度寝した。




