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裏へと至る道 その弐

 頭がくらくらする。

 意識が遠のき、どんどん曖昧になっていく。

 いつの間にか俺は夢を見ていた。

 夢の中の俺は、月明かりが眩しい森の中に居た。大勢の人間が集まっているところに混じって、何かを待つかのように立っていた。

「ねえ、零次。恐くない?」

 目の前の誰かが質問を投げかけてくる。

 ……ていうか御堂じゃねぇか。

「そんなことねぇよ。フツーの肝試しだろ?」

 夢の中の俺が語る。

 どうやらこれは『肝試しの夢』らしい。

「でも不気味じゃない? だってこの辺、最近まで心霊スポットでもなんでもなかったんだよ?」

「嘘、マジ?」

「ほんとだって。つい最近になってからだよ。変な噂立ち始めたのなんて」

「へ、へぇ」

 夢の中の俺は露骨に顔をしかめた。

 表面上では強がってるが、少し挙動がぎこちない。

 ……ヘタレだな、俺。

 それにしても不思議だ。夢なのに意識がはっきりしすぎている。

 そのくせ自分で身体を動かすことも出来ず、身体が勝手に動いて話が進むという親切設計。なにこれ何時もの夢と違う。

 それとこの夢を見始めてから感じる、妙な懐かしさと既視感は何だろう。

「はーい、全員集合ー!」

 遠くから声が聞こえる。

 おそらくこの集団を仕切っている連中だろう。肝試しの実行委員とかその辺だと考えて、間違いはなさそうだ。

 その声でバラけていた集団が一ヶ所に集う。もちろん俺と御堂もだ。

「それじゃあ今からルール説明をしまーす。しっかり聞いとけよー!」

「「「へーい」」」

 やる気のない返事を返され、若干ムッとする実行委員(仮)。

 だがすぐに調子を取り戻し、説明を続ける。

「まずルールその1、肝試しには一人ずつ出発すること!」

「「「えー」」」

 また周囲からやる気のない声が漏れる。

 やや不満そうな声音だ。それはそうだろう。

「ペアじゃないのかよー!」

「ふつー男女ペアだろこういうのは!」

「空気読めー!」

 ……若干納得しかねる意見もあったが、概ねみんなの言う通りだ。

 いくら夢とはいえ『一人ずつ向かう肝試し』は流石に無い。肝試しの利点を削っているとしか思えない。

「はいはい、これ決まったことだから文句言わなーい。大丈夫だって、一度出発したら後は合流するのも自由だから、な?」

 その一言で不満の声は少しおさまる。

 ていうかそのルールだと、全員が打ち合わせして合流する可能性もあるよな。

 ……万が一そうなったらどうするつもりなんだろう?

「続いてルールその2! これから諸君には墓場を通ったのち、その先にある廃寺に行ってもらう!」

 実行委員が声を張り上げてる中、俺の肩をちょいちょい叩く奴がいた。御堂だった。

「……ちなみにその廃寺らしいよ。『出る』っていうのは」

「へぇ、でもいくらボロボロだからって勝手に入っていいのか? 寺だぞ?」

「ぶっちゃけ駄目。だからこっそりバレないように、ね」

「……そゆことか」

 誰かに気づかれたらちょっとした問題になるだろう。

 どうやらこの肝試しは、幽霊以外の恐怖とも戦わなければならないらしい。さすが夢、支離滅裂だ。

「ルートを書いた紙は出発時に渡す! ちなみに廃寺内にはいくつか絵馬を仕込んでおいた! 諸君らにはそれを探して持ってきて欲しい! あ、もちろん一人一個な」

 おいおいついに宝探しゲームの要素まで混ざってきたよ。

「そして最後にルールその3! 二時間以内に帰ってこない者がいたら、中断して全員で捜索に当たる! 以上!」

 これで説明は終わり、肝試しを始める前の事前準備が始まった。

 ……それにしても、尋常じゃないぐらいデジャブを感じるのは気のせいだろうか。

 まるで過去に一度体験したかのような既視感、そして実際の出来事のようなリアリティ。

 さらにそれを裏付けるような証拠まである。

 ……実をいうとこのエピソード、俺の記憶にあるものなのだ。

 あまりにも一致しすぎて気持ち悪かったから、現実から目を逸らして『これは夢だ』と思いたかったが、そうはいかなさそうだ。

 ひとつ、仮定しよう。

 俺は今、夢で、過去にあった出来事を追体験しているのでは無いだろうか。一応、俺は多重人格者だ。それも超がつくほど異端な類なのだ。何が起きても不思議ではない。

 そしてその説が正しければ、俺はこれから嫌な思いをすることになるだろう。

 何故ならこの夢が、もし本当に俺の記憶と同じものなら、これは最悪の悪夢になるからだ。

 ……一番やり直したい記憶を、もう一度体験させられるとかどんな拷問だ。

 たぶん、これは中学生の宿泊研修の時の記憶。

 夜中こっそり集まって、生徒達で独自に肝試ししたんだっけ。

 そしてそうであると同時に、これは俺が『多重人格者』になった日の記憶。

 この日から俺は、非日常側の人間になったのだ。

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