第7話:胃袋を掴む女神(初めての調理実習)
挿絵を追加しました。
「今日の調理実習は班ごとに分かれてハンバーグとスープを作ってもらうぞ」
家庭科の先生の説明を聞きながら、都姫はエプロンと三角巾を身につけていた。
長身ウルフカットの銀髪を後ろで緩くまとめ、フリル付きのエプロンを着た姿は、新婚の若奥様のような破壊力抜群のオーラを放っている。同じ班になった男女の同級生たちは、それだけで生唾を飲み込んでいた。
「如月さん、料理とかできる……? 私、タマネギみじん切りにすると涙が出ちゃうから代わってもらっても……」
班の女子が恐る恐る尋ねると、都姫は「うん、いいよ。任せて」とゆるふわに微笑んだ。
トントントントントントン……!
次の瞬間、調理室に驚異的なリズムの包丁捌きが響き渡った。
都姫の手元を見ると、タマネギが一瞬にして狂いのないミリ単位のみじん切りになっていく。それどころか、流れるような手付きでひき肉を捏ね、空気抜きをして、綺麗な楕円形に成形していく。その動きには一切の無駄がない。元々天才で手先が器用な修(都姫)にとって、料理のレシピを完璧に再現することなど造作もないことだった。
「す、すごすぎる……プロのシェフか何かなの……!?」
「手際が良すぎて、見てるだけでウットリする……」
同じ班の男子たちは、テキパキと、かつ優雅にフライパンを操る都姫の横顔を見つめながら、全員が全く同じことを考えていた。
(こんなの、絶対にいいお嫁さんになるじゃん……!)
(もし都姫ちゃんが毎日『ご飯にする?』って迎えてくれたら、俺、一生馬車馬のように働けるのに……!!)
ジュウジュウと美味しそうな音を立てて焼き上がったハンバーグに、都姫は手際よく赤ワインとケチャップを使った特製ソースをかける。
「はい、できたよ。みんなで食べよ」
完成したハンバーグを口に入れた瞬間、班員たちはそのジューシーさと本格的な味わいに雷に打たれたような衝撃を受けた。あまりの美味しさに、他の班の生徒や家庭科の先生までが匂いに釣られて集まってくる始末。
「如月さん、うちの班の焦げた肉と交換してくれない!?」
「都姫ちゃん、私を将来の旦那(仮)にして!!」
美味しいご飯と圧倒的な包丁捌きで、クラスメイトたちの胃袋とハートを完全に掌握した都姫。
本人は「みんなで食べると美味しいね」とのんびりスープを飲みながら、学園の完璧なマドンナとしての地位をさらに盤石なものにするのだった。




