第77話:キャンパスの突破と、如月家のロイヤルディナー
大学のコスプレ部での阿鼻叫喚の試着・採寸を終え、カフェテリアで約束の「プレミアム特製極厚フレンチトースト・生クリームトリプル盛り」をあぐあぐと美味しそうに平らげた如月 都姫。
大学でやるべきことをすべて終えた都姫は、姉の天音、そして天音に「今日、うちで一緒に夕食食べていきなさいよ」と誘われた白鳥 薫の二人を伴って、如月家の大豪邸へと帰宅することにした。
だが、レンガ造りの部室棟を出て大学の正門へと向かう道中、一行は再び「噂の波紋」の直撃を受けることとなった。
雑誌のモデルである『銀髪の天使』が一目見たいと集まっていたエリート大学生やチャラ男たちが、都姫の姿を見つけるや否や、緊張で震えながら一斉に押し寄せてきたのだ。
「あ、あの! 雑誌見ました! もしよかったら、握手かツーショット写真を撮っていただけませんか!?」
キャンパス内が瞬く間に即席のサイン会会場のようになっていく。
普通の女子高生なら大学生たちの気迫に圧倒されるところだが、都姫は放課後のメイド喫茶『ル・ロワイヤル』で、目がガンギマリになった狂信的な常連客を毎日相手にしている、いわば無双のプロだった。
「うん、いいよー。はい、チーズ」
都姫はウルフカットの濃い銀髪を揺らし、長い睫毛の瞳でコテンと小首を傾げながら、鈴を転がしたような美声で卒なくこなしていく。
薄手のトップスのフロントをB99のGカップでパツパツに押し上げ、左目の下のホクロを覗かせて完璧なゆるふわ笑顔とウインクを添えるだけで、並んだエリート学生たちは「あ、握手した手が天国の香りがする……」「ツーショット撮れた、今日からこれが我が人生の家宝だ……」と、次々と胸を押さえてその場に静かに崩れ落ち(卒倒し)ていった。
押し寄せるファンの波を、メイド喫茶の経験で卒なくいなし、撃破していった都姫。
やがて玲司の裏の手配による高級送迎車に乗り込み、三人で賑やかに如月家の大豪邸へと帰宅した。
「ただいまー……。あー、フレンチトースト美味しかったけど、やっぱりお家が一番落ち着くなぁ」
リビングに入ると、そこには日課のランニングを終え、すでにお風呂を済ませてリビングでくつろいでいた完璧超人の父親・玲司と、二十代にしか見えない天然スレンダー母親・美夜が待っていた。
「おかえり、都姫ちゃん! あら、薫ちゃんも一緒ね! 可愛い娘たちが三人揃うなんて、今日のご飯は一段と張り切っちゃうわ!」
美夜がトップモデル時代の手際の良さを活かし、リビングの食卓には、プロのシェフ顔負けの豪華な夕食となった。山盛りのジューシーなハンバーグ、ローストビーフ、新鮮なサラダにグラタンがズラリと並ぶ。
「お、お邪魔します……っ。ひゃああん、如月家のディナー、空間そのものがロイヤルすぎてオタクの私が席に座っていいのかしら……っ!?」
薫が豪華な料理と、目の前に座るイケオジ社長・玲司のオーラにドギマギしながらも、着席した。
「よく来てくれたな、白鳥くん。天音と都姫が大学でお世話になったようで感謝する。……さぁ、冷めないうちに食べてくれ」
玲司が冷静沈着な表情のまま、都姫のためにハンバーグを優雅に切り分けてあげる。
「お父さん、ありがとー。お肉ジューシーで美味しい!」
都姫が幸せそうにハンバーグを頬張り、コーラを美味しそうにコクリと飲む。
その隣で、薫は「はうぅ、都姫ちゃんのもぐもぐ姿が至近距離で見られるなんて、やっぱり一睡もできなかった甲斐があったわ……っ!」と、再び尊さのあまり白目を剥きそうになりながら、スプーンを震わせていた。
裏のファンクラブ(本部・支部)の間で、薫が流した『布少なくスケスケな試着写真一枚』によって、冬コミに向けた絶対防衛計画という名の大狂乱が始まっているとも知らず。
都姫は最強の家族と、完全に調教された薫に囲まれながら、どこまでも気ままに、ゆるふわに贅沢な夜のロイヤルディナーを満喫していくのだった。




