第78話:色づく季節と、マドンナを巡る文化祭の幕開け
渋谷でのプロモデル並みのスタジオ撮影や、お姉ちゃんの大学でのコスプレ衣装大試着サミットを経て、季節は秋へと移り変わっていた。
明恭学園の広大な敷地に植えられた木々が、秋の紅葉が彩る中、赤や黄色に美しく染まり、爽やかな秋風が校庭を吹き抜けていく。
そんなある日の放課後。
2年D組の教室で、学校のホームルームでついに担任からお知らせが来る。いつもは気怠げな担任の先生が、教壇をパンパンと叩いて声を張り上げた。
「えー、みんな静かに。……今年もついにこの季節がやってきた。一か月後に迫る『明恭学園祭(文化祭)』についてだ。今日から各クラス、出し物の企画と準備をスタートしてもらうぞ」
「「「うおおお、ついに文化祭キターーーッ!!!」」」
先生の発表を聞いた瞬間、教室内は一気に夏休みの解放感をも凌駕するほどのお祭りモード、大歓喜の渦に包まれた。
東京ドーム二個分という規格外の敷地を持つ明恭学園の文化祭は、他校の生徒や一般客が何万人も押し寄せる超一大イベントなのだ。
しかし、ひとしきり盛り上がった後、D組の男女――すなわち、都姫のファンクラブ幹部であるいぬくん達の目が、一斉に鋭く光った。教室内が、まるでこれから戦場に赴く戦士のような、緊迫した静けさに包まれる。
全員の視線が、窓際の特等席で「文化祭かぁ。お団子とか、お好み焼きの屋台出るかなぁ」とのんびり考えている如月 都姫へと集中した。
(待てよ……。一ヶ月後の文化祭といえば、あの全国区の雑誌の表紙を飾った黒ドレス姿の都姫ちゃんが、一般客の前に堂々と姿を現すってことだろ……!?)
(他校の連中やチャラ男どもが、我がクラスの女神を一目見ようと、D組に殺到するに決まってる……!!)
クラス中に目に見えないレイザービームのような緊張感が走るなか、当の都姫はいつも通りのゆるふわな様子でコテンと小首を傾げた。
衣替えしたばかりの女子用長袖ブラウスに紺色のサマーニットベスト。しかし、夏を経てさらに育ったのか、B99のGカップという凶悪なボリュームは布地を極限までパツパツに押し上げ、フロントのボタンが今にもはち切れそうなほど悲鳴を上げている。
そこからキュッと絞られたW60のウエストラインと、ウルフカットの濃い銀髪、そして左目のすぐ下のホクロから漂う大人っぽい色気は、秋の柔らかな光を浴びて神々しいまでのオーラを放っていた。
「ねぇ、みんな。文化祭の出し物、何にするの~? 私、美味しいものが食べられるお店がいいなぁ」
都姫が鈴を転がしたような美声でゆるふわに呟いた瞬間、クラスの男子全員、そして女子たちまでもがその破壊的な可愛さにハートを撃ち抜かれ、無言で胸を押さえて悶絶した。
「よし! クラス委員長! 出し物の提案です!」
いぬくんが血眼になって立ち上がった。
「我がD組の女神……じゃなくて如月さんの圧倒的なビジュアルと、あのプロ級の料理スキルを最大限に活かせる『コンセプトカフェ』を提案します! 衣装は女子全員、最高に可愛い衣装で!」
「ちょっと待って! 都姫ちゃんの手料理が食べられるカフェなんて、待ち時間がディズニーランドを超えて暴動が起きるわよ!?」
女子生徒たちも負けじと声を上げ、早くもホームルームは都姫の衣装と役割を巡る「D組の大争奪戦」へと発展していった。
裏のファンクラブ本部と聖華支部が、この文化祭の一報を受けて「都姫ちゃん絶対防衛網・文化祭編」の極秘予算(軍資金)調達のために動き出しているとも知らず。
都姫は「文化祭、楽しそうだねぇ」と、どこまでもマイペースに、一ヶ月後の約束の季節を楽しみにしながらゆるふわな笑顔を輝かせるのだった。
自らの異次元スペックが、一ヶ月後の明恭学園祭でどれほどの「歴史的大狂乱」を巻き起こすかも知らずに、女神の新しい章が、秋の紅葉と共に優雅に幕を開けるのだった。




