第75話:女神のコミケ参戦決定と、お姉ちゃんの覚悟
天音の一喝によって、廊下で壁のシミのように張り付いていたエリート大学生たちが蜘蛛の子を散らすように去っていった後。
都姫は自動販売機で買ったココアを細く白い指先で持ち、部室に戻ってのんびりと喉を潤していた。
蘇生した薫が「都姫ちゃんの胸の柔らかさは宇宙のビッグバン……」とまだ虚空を見つめてブツブツ呟くなか、天音は冬コミ用の衣装を愛おしそうにトルソーに片付け、バッグを肩にかけながら都姫を振り返った。
「これで一旦は大丈夫よ。来週にまた来て頂戴。コミケはまだまだ先だけど少しずつ調整しないとね」
天音のその言葉に、都姫はココアをコクリと飲み干すと、特大のクマのぬいぐるみを小脇に抱え、銀髪ウルフカットを揺らしながらいつものゆるふわな笑顔を浮かべた。
「わかったー。忘れないでおくー」
「……いいや、私が連れていくしかないか……。」
都姫の「忘れないでおく(絶対に忘れる顔)」を100%察した天音は、即座に自分で抱っこ(強制連行)して連れてくるしかないと深く心に誓い、やれやれとため息をついたのだった。
そうして、都姫のコミケ参戦が決定した。
五万円のギャラと、この後に約束されているプレミアムフレンチトースト(生クリームトリプル盛り)の魅惑の報酬によって、気ままな女神のスケジュールは、冬のビッグサイトという日本最大の聖戦へ向けて完璧にロックされてしまったのだ。
自らの異次元スペック(B99/Gカップ・W60)が、冬の聖戦で何万人ものオタクやカメラマンをどれほどの「歴史的大狂乱」に陥れ、ビッグサイトの地盤を沈下させるかも知らずに。
都姫は「お姉ちゃん、フレンチトースト早く食べにいこー」と、目の前のご褒美へ向けて、どこまでもマイペースにゆるふわな足取りで歩き出すのだった。




