第72話:限界突破のメジャー、そして阿鼻叫喚の楽園
外の廊下にエリート大学生たちの目がガンギマリな人だかりができ始めているとも知らず、コスプレ部の部室では、都姫の冬コミ衣装の「大試着&サイズ調整」が厳かにスタートしようとしていた。
「はーい、じゃあ都姫。これに着替えてみて頂戴。採寸も同時にやるからね」
天音から手渡されたのは、露出度とスタイリッシュさが極限まで洗練された、布地の面積が非常に絶妙な冬コミ用の特製コンセプチュアル衣装だった。
都姫は「はーい、いーよー」といつものゆるふわな返事をして、部室のパーテーションの奥へとトボトボと向かった。
数分後、衣服の擦れる音が止まり、都姫が姿を現した瞬間――部室内の空気が「物理的な衝撃波」に襲われたかのように完全静止した。
「なんか、これ、胸のところがすごくスースーして落ち着かないんだけど……」
そこにいたのは、衣装を身にまとった神々しいまでの超絶美女。
デザインの都合上、フロントが大胆にカッティングされた衣装は、都姫のB99のGカップという凶悪なボリュームを全く隠しきれておらず、今にもはち切れんばかりにムチッと押し出されて極上の谷間を描いている。そこから急激に絞られるW60の驚異的なウエストラインと、H71の美しい曲線。ハーフアップにもしていない銀髪ウルフカットと、左目のすぐ下のホクロが持つ大人っぽい色気が、衣装の持つ世界観と奇跡の融合を果たしていた。
「「「(ぶふっ……!!! お、お労しや……!!!)」」」
次の瞬間、メジャーを手にしたコスプレ部の部員(男女問わず)たちの間で、鼻血を堪えながらの阿鼻叫喚の限界突破が巻き起こった。
「だ、ダメだ! スタイルがバグりすぎてて、どこにメジャーを当てたらいいのか分からない……!」
「ウエスト60って実在したの!? 触れたら折れちゃいそう……いや、それより胸の遠心力が強すぎてメジャーが弾かれる!!」
部員たちが手元を震わせながら、パニック状態で採寸を進める。
都姫が「うーん、歩くたびに胸が重いんだよねぇ」とコテンと首を傾げて豊かなバストを少し手で支える仕草をするたびに、部員たちの脳内物質が限界突破し、部室内は尊さのあまり天を仰ぐ者たちの悲鳴で地獄絵図(楽屋の楽園)と化した。
そんな大混迷の中、ただ一人、完全に目がガンギマリになっている少女がいた。薫である。
「天音ぇぇぇぇぇっ!!! 見て、見てよあの奇跡の芸術品!! 採寸!? 調整!? 違うわ、これは神による世界創生よ!! 都姫ちゃんのGカップが衣装を限界まで押し上げてるの、これ冬のビッグサイトじゃなくて、ただの女神の降臨祭じゃないのよおおおおっ!!」
薫は昨夜の寝不足ゾンビ状態から完全に一転、未知の活力をみなぎらせて都姫の周囲を高速で周回しながらスマホのシャッターをマッハで連写していた。
「薫、うるさいわよ。ほら、あなたもプロなんだから、そこの胸元の布地の浮き具合、ちゃんとピンで留めるの手伝いなさい!」
天音がテキパキと指示を出すが、薫は「喜んでその神聖な肉体にピンを打たせていただきますぅぅ!」と、限界オタクの形相のままメジャーとまち針を握りしめて都姫の至近距離へと肉薄していった。
当の発端である都姫は、部員たちの阿鼻叫喚の騒ぎも、薫のガンギマリなプレッシャーもどこ吹く風。
「五万円と、生クリームトリプル盛りのフレンチトーストのため……」と頭の中で美味しいおやつを思い浮かべながら、されるがままに「お着替え人形状態」でゆるふわに微笑んでいるのだった。
自らの圧倒的なスペックで大学の部活動の理性を完璧に消し飛ばし、冬のコミケを前にして早くも一サークルを完全調教してしまった都姫。
彼女の気ままなゆるふわ無双ライフは、限界突破したメジャーの数字を刻みながら、さらに混沌と興奮の渦へと突き進んでいくのだった。




