第70話:白亜の学び舎と、お姉ちゃんの超弩級サプライズ
翌日。
如月 都姫は、大学生の姉・天音に連れられて、都内でも有数の格式を誇る有名大学のキャンパスへと足を踏み入れていた。
「わぁ……っ! お姉ちゃんの学校、すっごく広くて建物が綺麗だねぇ」
お着替え部屋から美夜ママに選ばされた、お洒落な私服に身を包んだ都姫。薄手のトップスのフロントボタンをB99のGカップという圧倒的な質量でパツパツに押し上げ、ウエスト60の異次元のくびれラインを強調したその姿は、キャンパス内でも尋常ではないオーラを放っていた。
普段通っている明恭学園とはまた違う、大人のインテリな雰囲気が新鮮だったのか、都姫は銀髪ウルフカットを揺らしながら、珍しく全部が珍しくキョロキョロする小動物のような様子で、天音と一緒に緑豊かな学内を回っていった。
すれ違うエリート大学生やチャラ男、教授たちまでもが、左目の下のホクロから圧倒的な色気を放つ都姫の美貌に脳の処理を消し飛ばされ、文字通り首が回るほど二度見、三度見していく。
キャンパスの奥にある、文化系サークルが集まる格式高いレンガ造りの部室棟へ。
天音に案内され、目的の場所である『コスプレ部』の看板が掲げられた部屋の前に到着した。
トントン、と天音が小気味よくノックをして、重厚な木製の扉を開ける。
「入るわよー。臨時の最強助っ人、連れてきたから」
「お邪魔します……」
都姫が鈴を転がしたような美声で挨拶しながら、中に入る。
部室の中には、冬のコミケ(聖戦)に向けてミシンを踏む部員たちや、大量の布地、そして昨夜一睡もできずに目の下にドス黒いクマを作ったゾンビ状態の白鳥 薫がいた。
薫は、入ってきた都姫の神々しい姿を見た瞬間、「ぎゃぁぁぁっ! 本物の銀髪の天使が私の部室にぃぃ!」と声にならない悲鳴を上げて机に突っ伏した。
都姫は、部室の真ん中に置かれたトルソー(マネキン)に飾られている、恐ろしいほどに精巧で、かつ露出度とデザイン性が極限まで洗練された「冬コミ用のコンセプチュアル衣装」を見つめながら、コテンと小首を傾げた。
「お姉ちゃん、衣装の調整のお手伝いって、私は何をすればいいのぉ~?」
五万円の報酬と、生クリームトリプル盛りのフレンチトーストを思い浮かべてゆるふわに尋ねる都姫。
すると、天音はミシンの手を止めた部員たちと薫が固唾をのんで見守るなか、ニヤリと不敵に笑って、今回のお手伝いの真の、そして超弩級のお手伝いの内容を厳かに明かした。
「都姫。衣装のサイズを測るだけなんて言ってないわよ。……あなたはこれ(最高峰の限定衣装)を着て、冬のコミケにサークル看板娘(絶対的エース)として出るのよ」
「え?」
あまりにも想定外な天音のサプライズ発言に、都姫は長い睫毛をパチくりさせて完全にフリーズした。
衣装の調整の「人手」ではなく、都姫のその歴史的な美貌とGカップムチムチボディをフルに活用し、冬のコミケという日本最大の聖戦で大無双を仕掛けることこそが、天音店長(兼コスプレ部幹部)の真の狙いだったのだ。
「ちょっと天音ぇぇぇぇっ! 都姫ちゃんにそれ着せてコミケに出すなんて、ビッグサイトが尊さのあまり地盤沈下して大崩壊しちゃうじゃないのよおおおおっ!!」
寝不足の薫がベッドの上(部室のソファー)からのたうち回りながら大発狂するなか、都姫は「ええ~、コミケって人がいっぱいいて疲れそうだなぁ……」と、早くも省エネモードのゆるふわな困り顔を浮かべるのだった。
自らの異次元スペックが、冬の聖戦でどれほどの「歴史的大狂乱」を巻き起こすかも知らずに、五万円のギャラと目の前の豪華な衣装を交互に見つめる女神。
お姉ちゃんの最強の策略にハメられた都姫の気ままなゆるふわ無双ライフは、大学のコスプレ部という新たなる混沌の聖地で、さらに熱く、爆発的に幕を開けるのだった。




