第69話:新たなエサと、お姉ちゃんの大学潜入依頼
放課後のゲーセン無双、そして早朝のロイヤルカフェ合流を終え、至福の二度寝から目覚めた如月 都姫。
大豪邸のリビングのソファーの上で、昨日勝ち取った特大のクマのぬいぐるみにしがみつきながら、いつものように限界までだらだらとゴロゴロ過ごしていた。
長身の体を寝返らせるたびに、銀髪ウルフカットがふわりと揺れ、薄手のスウェットパーカーの胸元からB99のGカップという凶悪なボリュームがムチッとソファーに押し潰されている。
そんな風に都姫が息をしてカロリーを消費しているだけの空間に、パジャマからお洒落な私服に着替えた大学の秀才お姉さん・天音が歩み寄ってきた。
ソファーの横に腰掛け、ゴロゴロしている妹(元・弟)の顔を覗き込む。
「ねぇ、都姫。ちょっといいかしら? 明日、私が通っている大学に来てくれない? 少し手伝ってほしいことがあるのよ」
「お手伝い……?」
都姫はぬいぐるみの頭に顎を乗せたまま、コテンと小首を傾げた。長い睫毛を眠そうにパチくりさせながら、鈴を転がしたような美声でゆるふわに問いかける。
「そうそう。大学のコスプレ部で、冬のコミケに向けて色々と衣装の調整をしているのだけれど、どうしても人手が足りないのよ」
天音の口から飛び出したのは、メイド喫茶の店長であり、自身もコスプレを趣味とする彼女らしい「大学の部活動」のお手伝い要請だった。
ちなみにそのコスプレ部には、昨夜天音から送られた写真のせいで一睡もできず、ボロボロのゾンビ自撮りを送りつけてきた白鳥薫も、相方として所属している。
「えー? 冬のコミケの調整~? 私、お家でこのクマさんとゴロゴロしてたいなぁ。衣装の調整って、なんだか難しそうだしぃ……」
都姫がクッションに顔を埋めて完全に拒絶の姿勢を見せると、天音はすべてを見切ったようにニヤリと不敵に笑い、ポケットからお約束の切り札を提示した。
「もちろん、ただでとは言わないわよ。今回はコスプレ部の予算と、私のポケットマネーから……しっかりお手伝い報酬として五万円出すわ。それに、うちの大学のキャンパスにしかない超有名カフェテリアの『プレミアム特製極厚フレンチトースト・生クリームトリプル盛り』を好きなだけ奢ってあげる!」
「ほう?」
基本ギャラ五万円という破格の現金(時給)補正、そして『生クリームトリプル盛り』という至高の甘味を提示され、都姫のウルフカットの銀髪がピクッと跳ねた。
ソファーの上で這いつくばっていた超絶美女は、現金な一面を大爆発させて上半身をパッと跳ね起こした。左目のすぐ下のホクロから漂う大人っぽい色気を一瞬でシャキッとさせ、笑顔を輝かせる。
「五万円と、生クリームトリプル盛りのフレンチトースト……。……やります。お姉ちゃんがそこまで困ってるなら、可愛い妹として助けてあげなきゃね!」
「(現金と甘いものに釣られただけなのに、急に健気な妹の顔するの本当にタラシだわ……っ!)」
天音は心の中で激しくツッコミを入れつつも、冬のコミケ衣装を完璧に着こなすであろう「絶対的エース」の招集に成功し、勝利のガッツポーズを掲げた。
こうして、お姉ちゃんの策略(と至高のご褒美)によって、有名大学のコスプレ部へと潜入することが決まった都姫。
自らの規格外のビジュアル(Gカップムチムチボディ)が、冬のコミケ衣装に袖を通した瞬間、あの寝不足ゾンビの薫や、大学のコスプレ部員たちをどれほどの大狂乱に陥れるかも知らずに、気ままな女神は明日のフレンチトーストを夢見て、ゆるふわに胸を躍らせるのだった。




