第65話:女神の戦利品と、夜の如月家撮影会
ゲームセンターでの全てのゲームを天才スペックで完全支配し、大量の戦利品を獲得した如月 都姫。クラスメイトの男子(いぬくん達)に大豪邸の玄関前まで荷物を運んでもらい、「みんな、ありがとー。また遊ぼうね」とゆるふわに手を振って帰宅した。
「ただいまー。お父さん、お母さん、お姉ちゃん、見て見てー。今日ゲーセンでいっぱい取れたんだよー」
都姫がリビングへ這い入っていくと、そこには相変わらずのラグジュアリーな空間でくつろぐ完璧超人の家族たちが揃っていた。
「おかえり、都姫ちゃん! まあ、そんなに大きなぬいぐるみを自分で取ったの!?」
元トップモデルの母・美夜が目を輝かせる。
「ふむ。クレーンゲームか。都姫が欲しいものなら、私がそのゲームセンターごと買い取って自宅に設置してもよかったのだが……自分で勝ち取るとは、さすが我が娘だな」
大企業KMHの社長である父・玲司が、顔を微塵も崩さないまま、お約束の凄まじい親バカ発言で都姫を労った。
「あんた、またそうやって天才的な運動神経を無駄遣いして……。でも、そのクマのぬいぐるみ、普通に可愛くてちょっと悔しいわね」
大学の課題を片手に冷たい麦茶を飲んでいた姉の天音も、呆れつつ微笑む。
都姫は「太鼓のゲームとか、車のゲームもやって1位になったんだよー。楽しかったなぁ」とのんびり自慢話を終えると、ゲームの疲れ(省エネモード)が一気にやってきたのか、大きなあくびを一つ漏らした。
「んー……なんか眠くなっちゃった。おやすみなさいー……」
都姫は自分の部屋へ戻る気力すら惜しみ、リビングの庶民的な居心地の良いこたつ(またはソファー)の上で、先ほど獲得したばかりの特大のモフモフなクマのぬいぐるみを、細く白い両手で「ぎゅっ」と愛おしそうに抱きしめた。
そのまま、コテンと首を傾げて静かな寝息を立て始める。
乱れた銀髪ウルフカットの隙間から覗く、涼しげな首筋と左目のすぐ下のホクロ。そして、ぬいぐるみを強く抱きしめたことによって、B99のGカップという凶悪なボリュームがムチッと押し潰され、ウエスト60の細い曲線美がこれでもかと強調されていた。
無防備かつ神々しすぎるその「女神の就寝姿」を前に、如月家のカメラマンたちが一斉に音を消して動き出した。
パシャ、パシャ、と無音カメラのシャッターを連写する美夜と玲司。
「まぁ、本当にお人形さんみたいに可愛いのよ……!」と美夜が身悶えし、玲司は冷静沈着な表情のまま、指先をマッハで動かして『最高機密フォルダ(二段階認証つき)』へ本日の新着データを最優先で格納。驚異のスピードでバックアップを完了させていた。
そして、天音もまた自身のスマホで、その尊すぎる妹(元・弟)の寝顔を特等席からパシャリと撮影した。
天音はその画面を見つめながら、意地悪くニヤリと商売人の笑みを浮かべる。
「ふふ、これ、薫に送ったらどんな反応するかしらね」
天音は面白半分で、その「特大ぬいぐるみをギュッと抱きしめてはち切れそうな都姫」の極秘写真を、新入りメイドの白鳥 薫のスマホへLINEで送信した。
――その数秒後。
渋谷かどこかの自宅にいるであろう薫から、聞こえはしないが「ギャァァァァァァァァァァッ!!! 尊い、尊すぎて心臓がビッグバンを起こして宇宙が新しく誕生しちゃうぅぅぅぅっ!!! 天音ありがとう、一生の家宝にする、いや家宝じゃ足りないから国宝に指定してぇぇぇぇっ!!!」と、激烈に発狂しているであろう姿が、天音の脳裏に鮮烈にフラッシュバックした。
「あはは、薫のやつ、今頃絶対にベッドの上でのたうち回って発狂してるわね。なむなむ」
天音はスマホを閉じて声を出して笑った。
家族全員にその圧倒的な可愛さを再確認させ、他校のプロモデル(新入会員)を遠隔で完全に発狂させてしまった都姫。
当の本人は、特大のクマに包まれながら、どこまでも気ままに、ゆるふわに、幸せな夢の世界を満喫していくのだった。




