第64話:天才の暇つぶし、あるいは放課後ゲーセン無双
ファンクラブに生徒会長の沙奈絵とプロモデルの薫が電撃加入し、裏での崇拝ネットワークが国家レベルへと進化しているとも知らず。
如月 都姫は、その日の放課後、クラスメイトの男女グループ数人に誘われ、駅前にある地域最大のゲームセンター『アミューズ・ワンダー』へとやってきていた。
「わぁ……っ! 音がいっぱいで、キラキラしてて楽しそうな場所だねぇ」
都姫が女子用長袖ブラウスのフロントボタンをGカップでパツパツに押し上げ、ウルフカットの銀髪を揺らしながら入店した瞬間、店内にいた他校のヤンキーや格ゲーマー、一般客の視線が一瞬にして『静止』した。
左目のすぐ下のホクロから漂うお姉さん系の色気が、ゲーセンの派手なネオンに照らされて神々しいまでのオーラを放っている。
「都姫ちゃん! まずはあっちのクレーンゲームやろうよ!」
クラスの女子に手を引かれ、都姫は最新の大型クレーンゲームの前に立った。ガラスの向こうには、都姫が自宅のベッドで抱きしめているのと同じくらいの、超特大のモフモフなクマのぬいぐるみが鎮座している。
「これ、可愛いなぁ。……よし、ちょっとやってみようかな」
都姫が細く白い指先で100円玉を投入し、コントロールレバーを握る。
元・細マッチョの天才的な運動神経と、狂いのない精密な空間把握能力を持つ都姫にとって、クレーンゲームのアームの軌道を見極めることなど造作もないことだった。
のんびりした表情のまま、ボタンをトントンと絶妙なタイミングで叩く。アームがクマのぬいぐるみの重心を寸分の狂いもなくガッチリと捉え、持ち上げた。
ゴトン、と大きな音を立てて、一発で特大ぬいぐるみが取り出し口に転がり落ちてきた。
「「「えええええええええっ!? 一発!?!?!?」」」
クラスメイトたちが驚愕するなか、都姫はさらに隣の筐体へ移動。
難攻不落と言われていた最新の美少女フィギュアの箱を、アームの爪でミリ単位で押し出す「技」を披露し、わずか数回で次々と撃ち落としていった。
「はい、これみんなにあげるね。重いから持っててー」
大きなぬいぐるみとフィギュアの箱を両手いっぱいに抱えさせられた男子(いぬくん達)は、「女神からの授かり物(聖遺物)だ……!」と涙を流して拝んでいた。
続いて一行が向かったのは、リズムゲームの定番『太鼓の鉄人』だ。
「都姫ちゃん、これ叩くだけだから簡単だよ!」と勧められ、都姫は「はーい」とバチを両手に持った。選んだ曲は、カラオケでも歌ったことのある難易度「鬼」の超難関曲。
ドン、カッ、ドン、カッ、ドンドンドコドコドコ……!!
曲が始まった瞬間、体育館を震撼させたあのチート級の反射神経と手先の器用さが完全に覚醒した。
都姫の両手のバチが、目にも留まらぬ高速の残像となって太鼓の面を乱れ打ちしていく。長身の体をしなやかに揺らすたびに、B99のGカップが激しく上下左右に暴れ、それを見た後ろの男子ギャラリーたちは心拍数が限界を突破して鼻血を堪えるのに必死だった。
画面に流れるノーツを完璧に叩ききり、結果は驚異の『フルコンボ・全良』。
「ふぅ、結構腕の運動になるねぇ」とゆるふわに微笑む都姫の後ろには、あまりの神プレイに他校のギャラリーまでが集まり、割れんばかりの拍手喝采が巻き起こっていた。
「よし、最後はみんなで対戦レースゲーム『マルオカート』をやろう!」
4台並んだ運転席の筐体に、都姫とクラスメイトたちが乗り込む。
ピ、ピ、ピ、ポーン! とシグナルが鳴り、レースがスタートした。
都姫は「いっくよー」とのんびりハンドルを握りながらも、天才的なド派手ドリブルでコーナーを完璧なインコースで攻め立てる。アイテムボックスから手に入れたアイテムを、天才的な戦術眼で最適なタイミングで発射し、先行するクラスメイトたちを次々とクラッシュさせていった。
ファイナルラップ、執念で追いすがる男子のカートを、ゴール直前で華麗なミニターボを使って差し切り、見事に1位でチェッカーフラッグを受けた。
「わぁ、1位だ。このゲーム、ドライブみたいで楽しかったなぁ」
父親の玲司の助手席でドライブを眺めていた経験(?)が活きたのか、レースでも完全無双した都姫は、大満足の笑顔を浮かべた。
クレーンゲーム、太鼓、レース、そのすべてで圧倒的な天才スペックを発揮し、ゲームセンターの全筐体を完全支配してしまった都姫。
美味しいお土産と勝利の余韻を引っ提げ、クラスメイトたちの信仰心をさらに盤石なものにしながら、女神の放課後はどこまでも気ままに、ゆるふわに過ぎていくのだった。




