第63話:聖地の同盟と、二人の新入会員
放課後、例の少し大きなカラオケ店『カラオケ・マイルーム』の特大パーティールーム。
明恭学園「如月都姫ファンクラブ」の本部幹部たちが定期的に開く極秘サミットの場に、その日はかつてない激震が走っていた。
「し、失礼するわ……。勘違いしないでよね! 私はあくまで、学園外における如月さんの風紀の乱れ、および不埒な男どもの動向をシステム的に監視するために……その、ここに来ただけなんだからねっ!」
ドアを開けて入ってきたのは、美しい黒髪をハーフアップにまとめた現生徒会長、五十嵐 沙奈絵だった。
生徒会室で見せる鉄の女のプライドを必死に保とうとしているが、その顔は茹でタコのように真っ赤。机の上に「入会申込書」をバンッと叩きつけるその手は、極度の恥ずかしさで小刻みに震えている。
「か、会長が……我がファンクラブへの加入を直々に直訴してこられるとは……!」
代表のいぬくんをはじめとする幹部たちが、畏怖と感動のあまりその場でガタガタと席を立ち上がった。
学園の規律のトップが、ついに都姫の神々しさに全面降伏し、公式な「信者(会員)」として籍を置くことを決意した歴史的瞬間だった。
しかし、驚愕はそれだけで終わらなかった。
沙奈絵の後ろから、ぬるりと影が滑り込んできたのだ。
「ちょっと五十嵐ちゃん、抜け駆けは許さないんだからね! 本部のみなさーん! 私、白鳥 薫も今日からこのファンクラブに加入させてもらいまーす! 都姫ちゃんとの限定ペアチェキ原画、入会費代わりに持ってきました!!」
「えっ、薫ちゃん!? なんであなたまでここにいるのよっ!?」
沙奈絵が目を見開いて叫ぶ。
体験入店先のメイド喫茶『ル・ロワイヤル』で都姫の隣をキープするプロモデルにして限界オタクの白鳥 薫が、ちゃっかりと沙奈絵の後をつけてサミット会場に乱入してきたのだ。
「「「(ぶふっ……!!! 薫ちゃんの、都姫ちゃんペアチェキ……!!!)」」」
薫がテーブルに提示した、ドレス姿や夏服仕様のメイド服で都姫と密着する超お宝チェキの山を見た瞬間、幹部たちは一斉に鼻血を堪えて天を仰いだ。
「認める……! 認めるぞ、五十嵐会長、そして白鳥薫殿の加入を!!」
いぬくんが涙を流しながら入会を即承認し、パーティールーム内は一瞬にして拍手喝采の嵐に包まれた。
「いい、二人とも。これであなたたちは、都姫ちゃんの尊さを守る同志だ」
「ふ、ふん。私は監視役よ」と沙奈絵がそっぽを向く。
「私は都姫ちゃんを全方位から愛でる親衛隊長を目指すよ!」と薫が目を輝かせる。
こうして、ツンデレ生徒会長とプロモデルの限界オタクが正式にファンクラブへ加入したことで、都姫を崇める組織の戦闘力と情報収集力は、国家レベル(バックのKMH含む)の強固なものへと大進化を遂げたのだった。
その頃、当の発端である如月都姫は、お家のリビングのソファで「うーん、今日のご飯、ハンバーグだといいなぁ」とクッションに顔を埋めてのんびりゴロゴロしていた。
自分の知らないところで、学園のトップとプロのモデルがファンクラブの席を並べ、自らの写真の権利を巡って熱い視線を交わしているとも知らず、女神の放課後は今日もどこまでもマイペースに、ゆるふわに更けていくのだった。




