第61話:風紀委員(仮)の決壊と、お隣のメイド会長
生徒会室でのあの衝撃的な出会いから数日。
明恭学園の絶対的トップである生徒会長、五十嵐 沙奈絵のツンデレ防衛線は、如月 都姫のゆるふわな美貌を前にして、文字通り完璧に決壊していた。
「勘違いしないでよね! 私は生徒会長として、あなたの破廉恥なプロポーションが巻き起こす学園の風紀の乱れを、最短距離で強制執行するために……その、監視しているだけなんだからねっ!」
沙奈絵は真っ赤な顔でそうまくし立て、宣言通り、毎日都姫のクラスである2年D組の前に現れるようになった。
休み時間になるたびに、美しい黒髪ハーフアップを揺らし、凛とした気品あふれる所作で都姫の席のすぐ横に陣取る沙奈絵。
クラスの男女(主にファンクラブ幹部のいぬくん達)が「おい、あの鉄の女が、都姫ちゃんのパーソナルスペースに毎日不法侵入してるぞ……」「でも、都姫ちゃんに見つめられるたびに顔真っ赤にしてツンツンしてるの、実質ただの重度のご褒美待ちじゃない?」とザワつくなか、都姫は「会長さん、今日も監視お疲れ様。お徳用のアイス、半分こする?」と、いつも通りのマイペースさで沙奈絵を懐柔(調教)していった。
しかし、沙奈絵の「監視(という名のストーカー)」は、学園内だけに留まらなかった。
放課後、都姫が時給の高さに釣られて働く聖地、メイド喫茶『ル・ロワイヤル』。
最初の数日間、沙奈絵は「放課後の私生活まで完璧に更生させるのが私の義務よ!」と門限を無視して一般のお客さんとして来店していた。
クラシカルなお店のソファー席の端っこに座り、都姫がB99のGカップでフリルを限界まで押し上げながら「萌え萌え、きゅんっ!」を放つたびに、メニュー表で顔を隠して「ぶふっ……!」と悶絶していたのだ。
だが、そんなツンデレ会長の様子を、店長である姉の天音が見逃すはずがなかった。
天音は持ち前の広い交友関係と、KMH(如月ホールディングス)仕込みの極上の交渉スキル、そして「顔面偏差値の異常に高い女子をスカウトする嗅覚」をフル稼働させ、裏で沙奈絵にそっと接触した。
「ねえ、五十嵐会長。そんなに遠くから都姫を凝視して悶絶するくらいなら……一番特等席で、合法的に『お隣』を監視してみない?」
そして今日――。
「お待たせいたしました、ご主人様……。あれ?」
更衣室から出てきた都姫は、いつものゆるふわな様子でコテンと小首を傾げた。
都姫のすぐ隣に立っていたのは、いつの間にか天音と悪魔の契約(?)を交わし、フリルたっぷりのクラシカルなメイド服を完璧に着こなした五十嵐沙奈絵だった。
元々モデルをしていてもおかしくない抜群のスタイルと気品を纏っているため、メイド服との相性は恐ろしいほどに抜群。しかし、その顔はこれ以上ないほど茹でダコのように真っ赤に染まっていた。
「か、会長さん? どうしてその格好で、私の隣にいるのぉ~?」
「な、何言ってるのよ! 席からじゃ、あなたの『萌え萌えきゅん』の殺傷能力が高すぎて、お店の男たちの理性が崩壊するのを防げないでしょ! だから、最も至近距離である『同じメイド』として、あなたを24時間体制で徹底的にマークすることにしたのよっ!! べ、別に、あなたと同じ衣装を着て、隣で『おまじない』のポーズを鏡の前で毎日こっそり練習してたからじゃないんだからねっ!!」
都姫の細く白い手を震えながらギュッと握り、お約束の完璧なツンデレ台詞を叫ぶ沙奈絵。
そのお隣には、プロモデルでありながらオタクとして既に体験入店している白鳥 薫が、「ちょっと天音!! 五十嵐生徒会長まで私の都姫ちゃんに急接近してるんだけど!? ズルイ、私もペアチェキに混ぜてぇぇぇっ!」とバックヤードで大絶叫している。
「ふふ、会長さんのメイド姿、すっごく似合ってて可愛いよ。じゃあ、一緒にお給仕がんばろうね」
都姫が長い睫毛を揺らし、至近距離で極上のゆるふわ笑顔を向けると、沙奈絵は「う、うう……! 監視、がんばるわよ……っ!」と、尊さのあまり白目を剥きそうになりながら全面降伏した。
新入りメイドの薫に続き、学園の絶対的トップであるツンデレ会長・沙奈絵までをもメイドとして隣にハベらせてしまった都姫。
聖地の売上を過去最高に跳ね上げながら、彼女の気ままなゆるふわ無双ライフは、性別も立場も規律すらも無自覚に置き去りにして、さらに賑やかに、熱く続いていくのだった。




