第60話:ツンデレ会長の、可愛すぎる言いがかり
二学期が始まって数日。
雑誌の表紙を飾り、放課後のメイド喫茶でも大無双をかました如月 都姫は、朝のホームルームが終わった直後、担任の先生から「如月、ちょっと生徒会室に行ってくれ」と告げられた。
「生徒会室? うーん、なんだろう……。お昼寝の場所でも貸してくれるのかなぁ」
相変わらずのゆるふわな思考のまま、都姫はカツカツとローファーを鳴らして、重厚な扉の前に立った。
トントン、とノックをして扉を開ける。
「失礼します……」
そこは、明恭学園の全生徒を統べる、格式高い生徒会室だった。
部屋の奥、大きなデスクの後ろに佇んでいたのは、本物のモデルをしていてもおかしくない抜群のスタイルを誇る、現生徒会長の「五十嵐 沙奈絵」だった。
艶やかな黒髪を美しいハーフアップにまとめ、名門校のトップにふさわしい気品あふれる所作を纏った美少女である。
沙奈絵は、入ってきた都姫の姿を見た瞬間、そのウルフカットの濃い銀髪、B99のGカップでブラウスをパツパツに押し上げた圧倒的なプロポーション、そして左目の下のホクロから漂う神々しいまでの美貌に、内心で凄まじい衝撃を受けていた。
(な、何よその暴力的なスタイル……! 雑誌の表紙で見たときも絶句したけれど、実物は綺麗すぎて同じ人間とは思えないじゃない……っ!)
沙奈絵の心臓は爆音で高鳴り、顔がカッと熱くなる。
実は、沙奈絵は重度の「ツンデレ」だった。
例の雑誌を見て以来、都姫の圧倒的な美しさに一目惚れし、どうしても彼女と直接会って話したくて仕方がなかったのだ。
しかし、生徒会長としてのプライドと、極度の恥ずかしさがそれを許さなかった。
結果、何日も悩んだ末に彼女が導き出した結論が、「学園の風紀を乱す者に、直々に注意を与える」という、苦肉の筋書き(建前)だった。
沙奈絵は、内心の動揺を必死に隠して冷徹な生徒会長の仮面を被り、机を小さく叩いて凛とした声を響かせた。
「あなたね! 如月都姫さん! ……この学園の風紀を、大いに乱しているのは!」
「え?」
都姫は、あまりにも唐突な、かつ何とも言いがかりのような言葉に、コテンと小首を傾げた。長い睫毛をパチくりさせながら、うるうるとした瞳で沙奈絵を見つめる。
「風紀……? 私、何か悪いことしちゃったのかなぁ~?」
「な、何って……全部よ! その、ブラウスのボタンが弾け飛びそうな、その、破廉恥で規格外なプロポーションのせいよ! あなたが廊下を歩くだけで、男子生徒も女子生徒も全員目がガンギマリになって、授業に集中できていないって報告が上がっているの! あ、あと、そのスマホの待ち受け画面にあなたの写真が設定されすぎて、学園内で奇妙なカルト宗教のパワースポットみたいに扱われているのも問題よ!」
沙奈絵は顔を真っ赤にしながら、ツンツンとした態度でまくし立てた。
しかし、その視線は、都姫のGカップムチムチボディと、左目の下の艶っぽいホクロに釘付けになっており、嫉妬と憧れが隠しきれていない。
都姫は、沙奈絵の怒濤のツッコミ(建前)を前にしても全く動じず、生まれつきの気分屋とゆるふわ属性を遺憾なく発揮した。
歩くだけで胸が重くて痛いのは事実だし、待ち受け画面はみんなが勝手にやっていることだ。
都姫は少し困ったように、でも嬉しそうに微笑みながら、ふんわりと沙奈絵のデスクへと近づいた。
「そっかー、みんなに迷惑かけちゃってたんだねぇ。教えてくれてありがとう、五十嵐会長。……でもね、会長さん、すっごくお顔が赤くて可愛いよ? もしかして、体調が悪いのかなぁ~?」
都姫が鈴を転がしたような美声で優しく囁き、細く白い手を沙奈絵のおでこにそっと近づける。
「ひゃ、ひゃあんっ!? な、何言ってるのよ! 私が顔が赤いのは、あなたの風紀の乱れ方に憤慨しているからよっ!! べ、別に、あなたのことが気になって、雑誌を3冊も買って家で毎晩眺めてるからじゃないんだからねっ!!」
墓穴を掘るレベルの完璧なツンデレ台詞を叫び、真っ赤になって取り乱す沙奈絵。
都姫は、その可愛すぎるリアクションに「ふふ、会長さんって、なんだかツンツンしてて可愛い小動物みたい」と、どこまでもマイペースに、ゆるふわな笑顔を輝かせるのだった。
学園の頂点に立つ生徒会長すら、初対面のわずか数分で無自覚に完全攻略(調教)し始めてしまった都姫。
新たな「迷える子羊(ツンデレ信者)」を前に、彼女の気ままなゆるふわ無双ライフは、生徒会室という新しい聖地を巻き込みながら、さらに面白おかしく続いていくのだった。




