第56話:至高の神写真と、限界オタクの貢ぎカフェ
「――はい、カット! 撮影終了です! 最高、本当に最高の発掘でした!!」
カメラマンの狂喜乱舞した叫び声とともに、緊迫した撮影スタジオの空気が一気に解き放たれた。
モニターに映し出されたのは、大人っぽい黒のシースルードレスを身にまとい、銀髪ウルフカットと左目のホクロから異次元の色気を放つ如月 都姫と、プロの意地を見せた白鳥 薫の奇跡のペアショットの数々だ。
現場にいた全員が、伝説のモデル・如月美夜の遺伝子を目の当たりにして大満足の笑顔を浮かべている。
しかし、天音だけはモニターに並ぶ、どれもが表紙級の神写真の山を見つめながら、心の中でそっと手を合わせていた。
(……これ、どれをボツにしてどれを採用するか選ぶ編集部の人たち、贅沢な悩みの末に徹夜確定ね。地獄を見るだろうな。なむなむ。)
そんな大人の事情などこ吹く風で、ドレスからいつもの私服に着替えた都姫が、楽屋からトボトボと這い出してきた。
「ふぅ……。ちょっとポーズ変えるだけで結構カロリー使ったなぁ。お姉ちゃん、お腹空いちゃった」
「都姫ちゃん、本当にお疲れ様!! もう私、都姫ちゃんの美貌の余韻で一生白米が食べられるレベルだよ!!」
撮影を終えてなお興奮が冷めやらない薫が、キラキラとした「限界オタクの目」で都姫の手を握りしめる。
「ねえ天音、都姫ちゃん! この後、スタジオのすぐ近くにある有名なお洒落カフェに行かない!? 今日の代役のお礼に、私が何でも好きなもの好きなだけ奢るから!!」
「ほう?」
『薫の奢り』という、現金五万円+売上六割に続く新たなる魅惑の報酬を提示され、都姫のウルフカットの銀髪が再びピクッと跳ねた。コテンと首を傾げ、うるうるとした瞳でゆるふわに微笑む。
「薫ちゃんの奢り……? じゃあ、私、生クリームたっぷりのパンケーキと、ガトーショコラと、いちごパフェが食べたいな」
「いくらでも頼んで!! お姉さん、財布の紐をドブに捨てて全部貢いじゃうからね!!」
都姫の無自覚な可愛さにハートを消し飛ばされた薫は、二つ返事で快諾。天音も「やった、私も便乗して高い紅茶頼もーっと」と、便乗する気満々でスタジオを後にした。
こうして三人は、渋谷の一角にある、隠れ家風の高級デザイナーズカフェへと移動した。
アンティーク調の落ち着いた間接照明が照らす店内に、長身ウルフカットの超絶美女(都姫)と、有名大学の秀才お姉さん(天音)、そして現役プロモデル(薫)の美女三人組がカツカツとローファーを鳴らして入ってきた瞬間、カフェにいた他のお客さんや店員たちの動きが文字通り一瞬にして『静止』した。
特に、タイトな私服の上からでもはち切れんばかりに自己主張している、都姫のGカップという圧倒的なボリュームと、そこから絞られるウエストラインは、薄暗い店内でも眩いほどのオーラを放っていた。
「わぁ、このお店、すごく可愛いねぇ」
都姫がのんびりとソファー席に腰掛け、メニューを開く。
プロの現場を完璧な遺伝子の力で完全支配した女神は、放課後の渋谷の街でも無自覚に視線のレイザービームを浴びながら、五万円の臨時収入と薫の奢りという至高のご褒美を前に、ゆるふわな笑顔を輝かせるのだった。




