第54話:楽屋の質問攻めと、完璧すぎる遺伝子
白鳥薫を完全に限界化させた如月都姫は、スタッフに案内されてメイクと衣装へのお着替えに向かった。
楽屋の扉が閉まった瞬間、撮影スタジオに残されたカメラマン、マネージャー、そして薫の一行は、一斉に天音の元へと猛ダッシュで詰め寄った。
「ちょっと天音!! あんなの聞いてない、聞いてないわよ!!」
薫が天音の肩をガシガシと揺らしながら、血眼になって質問を浴びせる。
「なによあの濃い銀髪の天使!! 睫毛長すぎだし、左目のホクロは反則だし、何よりあのスリーサイズどうなってんのよ!? 本当に人間の女子高生なわけ!?」
「そうですよ天音さん!」
プロのカメラマンも、カメラを握る手が震えるほどの興奮を隠しきれずに身を乗り出してきた。
「あの長身であの圧倒的な胸の立体感、それなのにウエストは信じられないくらい細い! 骨格の段階から次元が違います! 彼女、どこの事務所に所属してるんですか!? うちで独占契約を結びたいレベルです!!」
スタッフたちからの怒涛の質問攻めに、天音はハーブティーを一口飲み、やれやれとため息をついた。
「みんな落ち着きなさいよ。都姫はどこにも所属してない、ただの普通の(?)高校一年生よ。私の妹。……まぁ、ちょっと前までは弟だったような気もするけど……」
天音はさすがに「今朝起きたらTS(性転換)してた」という大人の事情をそのまま話すわけにもいかないため、そこはさらりと濁した。
「普通の女子高生が、あんなハリウッド女優みたいなオーラ放てるわけないでしょ!?」
薫がなおも食い下がると、天音はニヤリと不敵な笑みを浮かべ、如月家の「最強の血筋」という事実を切り札として提示した。
「まぁ、強いて言うなら遺伝かしらね。うちの母親の名前、知ってる?」
「え? 母親……?」
薫が首を傾げると、天音が厳かにその名前を口にした。
「如月美夜。元・トップモデルで、数々の賞を総なめにしたあの美夜よ。都姫のあの規格外のGカップムチムチボディも、指先まで美しい所作も、完全に母親の遺伝子が爆発した結果なのよ」
「「「……えええええええええええっ!?!?!?」」」
スタジオ内に、この日一番の驚愕の大絶叫が響き渡った。
業界人なら誰もが知る伝説のトップモデル、如月美夜。その実の娘であれば、あの異次元の美貌とオーラも100%納得がいく。大人の理屈と納得が一瞬にしてスタジオ内を支配した。
「なるほど、美夜さんの遺伝子……! それならあの神々しさも納得だ……!」
「なんてサラブレッドだ……! 今日は歴史的な撮影になるぞ……!」
カメラマンたちが興奮で身震いするなか、楽屋の扉から「お姉ちゃん、着替えたよー」と、鈴を転がしたような美声が響いた。
いよいよ、ちょっとのメイク(素肌が綺麗すぎてほぼ手直しなし)と、大人っぽいコンセプトの「タイトな黒のシースルードレス」を身にまとった都姫が、姿を現そうとしていた。




