第50話:放課後の密会と、神々の情報公開(ファンクラブ合同サミット)
姉妹校交流会が閉幕したその日の放課後。
明恭学園の周辺にある、防音設備の整った少し大きな地域最大手のカラオケ店『カラオケ・マイルーム』の特大パーティールームには、異様な緊張感が漂っていた。
テーブルの上に置かれたポテトやドリンクには誰も手をつけず、制服を着た男女が数何人か、鋭い視線を交錯させている。
彼らは他でもない――数百人規模を誇る明恭学園「如月都姫ファンクラブ」の幹部たちと、この交流会を通じて爆発的な勢いで発足した「聖華支部」の代表メンバーたちであった。
「――それでは、これより第一回『明恭・聖華合同・如月都姫聖誕監査サミット』を執筆する」
明恭本部の幹部である男子(通称:いぬくん)が、歴史の教科書を閉じるように重々しく告げた。
「我々の目的はただ一つ。我がクラスの、いや両校の女神である如月都姫ちゃんの尊さを守り、かつ共有することだ。聖華支部の諸君、そちらの進捗はどうだ?」
聖華支部の代表である女子生徒が、ゴクリと唾を飲み込みながら自身のスマホを差し出した。画面に映し出されていたのは、交流会二日目に聖華学園の白亜の校舎で撮影された、都姫の驚異的なツーショットデータの数々だった。
「こちらが、我が校の遠征時に確保した『白亜の校舎を背景に、コテンと首を傾げる都姫ちゃん』の限定画像です。さらに、家庭科部でのプロ級の包丁捌き直後の、フリルエプロン姿の美しすぎる微笑みも押さえています」
「っ……!!」
画面を見た明恭本部の幹部たちの間に、激しい衝撃波が走った。
薄手のブラウスのフロントボタンをはち切れんばかりに押し上げているB99のGカップの立体感、そしてお嬢様学校の背景とウルフカットの銀髪が織りなす、奇跡のアンサンブル。
「素晴らしい……! なんという圧倒的な聖華補正だ。これほどの最高機密データを一瞬で揃えてくるとは、聖華支部の情報収集力を侮っていたな」
いぬくんが鼻血を堪えながら、震える手で自身のタブレット端末を操作した。
「ならば、我が本部からも相応の『誠意』を示そう。……これだ」
スライドされた画面に表示されたのは、中間テスト期間中に開催された『都姫先生の秘密の特別授業』で、本物の女性教師スーツをパツパツに着こなした知的なお姉さん系都姫の姿。さらに、球技大会でのミニスカ仕様のチアガール衣装で健気にポンポンを振る、歩く大量破壊兵器とも言える超貴重なショットだった。
「「「(ぶふっ……!!!)」」」
今度は聖華支部のメンバーたちが、あまりの神々しさに一斉に胸を押さえて悶絶した。
「な、何これ……! 理想の美人女教師すぎる……!」
「チアコス姿の胸の揺れ、これ完全に生けるパワースポットじゃない……! 拝みたい、今すぐこの場で拝みたいレベルなんだけど……!」
パーティールーム内は、カラオケの音すら鳴っていないのに、両校の幹部たちの限界突破した心拍数と興奮の声で、さながら神聖なオークション会場のようになっていた。
「取引成立だな。これより、本部の『チア・女教師データ』と、支部の『白亜の城マドレーヌデータ』の相互シャッフル(暗号化通信)を開始する」
「感謝します、本部。これで我が支部の全会員のスマホの待ち受け画面が、さらに神の領域へと限界突破します」
がっちりと固い握手を交わす明恭本部といぬくん。
お互いの端末がBluetoothで繋がり、データ転送の進捗バーが100%になるたびに、部屋の中には尊さのあまり涙を流すリピーター(信者)たちの静かな歓声が響き渡るのだった。
その頃、当の発端である如月都姫は、お家の衣装部屋で母親の美夜に「これ着てー」と言われるがままに新作のハイブランドの服を着せ替えさせられながら、「うーん、おやつ何かなぁ」と、どこまでもマイペースに、ゆるふわな笑顔を浮かべていた。
自分の知らないところで、二つの学校のコミュニティがさらに強固な崇拝ネットワーク(同盟)で結ばれたとも知らず、女神の放課後は今日も平和に更けていくのだった。




