第48話:二つの学園、白熱の球技大会! そして青空の大交流会(聖華学園交流会・最終日)
聖華学園と明恭学園による、三日間の合同交流会。
その二日目も、無事に幕を閉じた。
初日から続く学園見学や部活動体験、そして研究成果発表会。
普段は交流する機会の少ない二つの学園の生徒たちは、さまざまな活動を通じて互いのことを知り、少しずつ距離を縮めていた。
……もっとも。
その交流会において、誰よりも強烈な印象を残している人物が一人いた。
如月都姫。
艶やかな銀髪のウルフカットに、長い睫毛と左目のすぐ下にある艶っぽいホクロ。
長身で抜群のプロポーションを誇る、神々しいまでの超絶美女。
そして、その圧倒的な容姿とは裏腹に、どこまでもゆるふわでマイペースな性格の持ち主である。
二日目の発表会では、各部活動の研究内容を真剣に聞き、的確な質問を投げかけ、発表者たちを次々と感激させていた。
結果、聖華学園内では彼女の人気がさらに上昇。
一部の生徒からは、すでに『聖華に舞い降りた銀髪の女神』などという大仰な呼び名までつけられていた。
そして迎えた、交流会最終日の三日目。
この日は、これまでの見学や研究発表とは打って変わって、身体を動かし、食事を楽しむ一日となっていた。
午前中は、両学園による対抗球技大会。
種目はバスケットボールとバレーボールの二つ。
そして昼からは、学園の広大な屋外施設を利用した合同バーベキュー大会が予定されている。
まさに、聖華学園ならではの豪華な交流イベントだった。
「おはよ〜」
聖華学園の正門前。
明恭学園の生徒たちが続々と到着する中、のんびりとした声が響いた。
振り返った生徒たちの視線の先には、いつも通りの穏やかな笑顔を浮かべた都姫がいた。
「「「お、おはようございますっ!!」」」
なぜか、聖華学園の案内係たちが一斉に背筋を伸ばした。
「ん? みんな元気だねぇ」
「は、はいっ! 本日もよろしくお願いいたします、如月様!」
「うん、よろしくね〜」
にこっ。
「「「…………っ!!」」」
朝一番から、案内係の数名が胸を押さえていた。
そんな彼女たちをよそに、都姫は手渡された本日の予定表に目を落とす。
「えーっと……午前中はバスケとバレーで、午後はバーベキュー……」
ぱちり。
その美しい瞳が、わずかに輝いた。
「わぁ、バーベキューだ。楽しみ〜」
「……都姫ちゃん、球技大会の方は?」
隣にいた明恭学園の女子生徒が尋ねる。
「ん〜? そっちも楽しみだよ。でも、バーベキューってお外でみんなと食べるから美味しいよねぇ」
「……あはは、都姫ちゃんらしいね」
そう。都姫にとって、この日の最大の楽しみは球技大会ではなく、バーベキューだった。
一方、聖華学園の運動部員たちは違った。
「……今日、如月様は出場されるのかしら」
「……明恭学園の方に確認したところ、バスケットボールに参加されるそうよ」
「……バスケットボール……!」
「……あの如月様が、コートに立たれる……!」
その情報は、瞬く間に学園中へと広がっていった。
そして。
「バスケの試合、絶対に見に行きますわ!!」
「私もです!」
「最前列を確保しなくては!」
球技大会開始前から、体育館の観客席は異様な熱気に包まれ始めていた。
午前九時。
聖華学園の第一体育館。
広大なフロアには、正式な規格のバスケットボールコートが設置され、二階には大勢の生徒たちが座れる観客席まで備えられていた。
「すごいねぇ。体育館がこんなに広いんだ」
都姫は感心したように天井を見上げる。
すでに女子用の体操着に着替えた彼女は、銀髪のウルフカットを軽く整え、準備運動を始めていた。
長身ですらりとした手足。
引き締まったウエストと、女性らしい豊かな曲線を持つ抜群のスタイル。
ただストレッチをしているだけなのに、観客席からは感嘆のため息が漏れていた。
「……綺麗……」
「……脚、長すぎませんこと……?」
「……本当に同じ高校生なのでしょうか……」
しかし、都姫本人はまったく気にしていない。
「ん〜っ。よし、身体もほぐれたし、頑張ろ〜」
軽く腕を回して、ふんわりと微笑んだ。
一方。
聖華学園の女子バスケットボール部員たちは、真剣な表情で円陣を組んでいた。
「いいですか、皆さん。相手は明恭学園です。交流試合とはいえ、手を抜くつもりはありません」
「もちろんです、部長!」
「それに……」
部長の視線が、反対側のベンチへと向けられる。
そこには、チームメイトと楽しそうに会話する都姫の姿があった。
「……如月都姫様が、出場されます」
「「「…………!」」」
「お相手がどれほど美しい方でも、コートの上では一人の選手です。全力で挑みましょう!」
「「「はいっ!!」」」
その意気込みは素晴らしかった。
……ただし。
彼女たちはまだ、都姫の本当の身体能力を知らなかったのである。
ピーーーッ!!
試合開始のホイッスルが鳴り響いた。
ジャンプボールから始まった試合。
最初にボールを確保したのは、聖華学園だった。
「行きますわよ!」
聖華学園のポイントガードが、素早くドリブルで攻め上がる。
左右への切り返しも鋭く、さすがは強豪運動部の選手といった動きだった。
しかし。
「……あ、そっちだね」
ふわり。
都姫が、一歩動いた。
パシッ!
「……え?」
次の瞬間。
聖華学園の選手が出したパスは、都姫の白く長い指先に、いとも簡単に奪われていた。
「えっ、ちょっ!?」
「じゃあ、行くね〜」
タンッ!
床を蹴った瞬間、都姫の姿が一気に加速した。
「は、速っ!?」
「ディフェンス! 戻って!」
慌てて戻る聖華学園の選手たち。
しかし、都姫は止まらない。
右へフェイント。
次の瞬間には左へ切り返し、相手の間をするりと抜ける。
その動きは、まるで風だった。
「う、嘘……!」
そして、ゴール手前。
都姫は軽やかに踏み切った。
ふわっ。
銀髪が宙に舞う。
長い手足が美しい軌道を描き、ボールがバックボードへと放たれた。
トンッ。
シュパッ!
鮮やかなレイアップシュート。
試合開始から、わずか三十秒足らずの出来事だった。
「……え?」
「……今、何が……?」
聖華学園の選手たちが呆然とする。
そして。
「「「きゃああああああああああ!!!」」」
観客席が爆発した。
「如月様ぁぁぁ!!」
「か、格好よすぎますわぁぁぁ!!」
「今の動き、見ました!?」
「まるで映画のワンシーンですわ!!」
黄色い歓声が体育館中に響き渡る。
一方、当の都姫は。
「やったぁ。入った〜」
にへら、と笑っていた。
……その笑顔で、観客席の被害はさらに拡大した。
試合が進むにつれて、聖華学園の選手たちはある事実を理解し始めた。
如月都姫。
この少女は、ただの超絶美女ではない。
運動能力そのものが、規格外なのである。
「三人で囲んで!」
「はいっ!」
聖華学園の選手三人が、都姫の進路を塞ぐ。
しかし。
「ん〜……じゃあ、こっちかな」
都姫は、ふわりとボールを持ち替えた。
次の瞬間。
タン、タンッ!
素早いステップで一人目を抜き、二人目の横をすり抜ける。
三人目が腕を伸ばした時には、すでに都姫はシュート体勢に入っていた。
「えいっ」
シュッ!
スパァン!
美しい放物線を描いたボールが、リングの中心を射抜く。
「ス、スリーポイント……!」
「しかも、あの距離から……!」
観客席から、どよめきが起きた。
明恭学園の生徒たちは、どこか懐かしそうにその光景を見つめていた。
「……ああ、いつもの都姫ちゃんだ」
「……球技大会の時もそうだったよな」
「……あいつ、何でもできるんだよなぁ」
「……しかも本人は楽しそうにしてるだけっていう」
一方、聖華学園の選手たちは必死だった。
「ま、まだですわ! 諦めません!」
「そうです! 私たちだって、毎日練習しているんですから!」
その言葉に、都姫は小さく微笑んだ。
「うん。みんな上手だよね。さっきのパス回し、すごく綺麗だった」
「…………っ!」
「私も負けないように頑張るね〜」
「「「…………!!!」」」
聖華学園の選手たちの顔が、一斉に赤くなった。
(ほ、褒められましたわ……!)
(如月様に……!)
(しかも、こんな至近距離で……!)
……精神的には、すでに大敗寸前だった。
それでも、試合は最後まで白熱した。
聖華学園の選手たちも、息の合ったパスワークと堅実な守備で粘り強く得点を重ねる。
都姫も一人で攻め続けるのではなく、味方へ絶妙なパスを送り、全員が活躍できるように試合を組み立てていった。
そして、終了のホイッスル。
ピーーーッ!!
結果は、明恭学園の勝利。
「やったぁ。みんな、お疲れ様〜」
都姫は、チームメイトたちと笑顔でハイタッチを交わした。
そして、聖華学園の選手たちにも歩み寄る。
「楽しかったね。みんな、すごく強かったよ」
すっ。
差し出された、白く美しい手。
「……っ!」
聖華学園の部長は、少しだけ震えながらその手を握った。
「こ、こちらこそ……! 素晴らしい試合をありがとうございました!」
「うん。また一緒にやろうね」
にこっ。
「…………っ!!」
部長の顔が真っ赤になった。
……ちなみに。
この日以降、聖華学園の女子バスケットボール部では、練習への参加希望者が急増することになるのだが。
それはまた、別のお話である。
続いて行われたのは、バレーボールの対抗試合だった。
「次はバレーかぁ」
都姫は観客席に腰を下ろし、スポーツドリンクを飲みながらコートを見つめていた。
今回、都姫はバスケットボールの代表として出場したため、バレーでは応援に回ることになっている。
「みんな、頑張ってね〜!」
都姫が手を振る。
すると。
「「「うおおおおおお!!!」」」
明恭学園の選手たちの士気が、一気に跳ね上がった。
「都姫ちゃんが応援してくれてるぞ!」
「絶対勝つ!!」
「いいところ見せるんだ!!」
一方。
聖華学園のバレー部員たちも負けてはいなかった。
「如月様が見ていらっしゃるのよ!」
「無様な試合なんて見せられませんわ!」
「全力でいきますわよ!!」
……どうやら、両学園とも動機はほぼ同じらしい。
試合開始。
聖華学園の鋭いサーブがコートに突き刺さる。
明恭学園も負けじとレシーブをつなぎ、力強いスパイクで応戦。
ブロック、トス、アタック。
互いに一歩も譲らない熱戦が繰り広げられた。
「おお〜! 今のレシーブすごい!」
「ナイススパイク〜!」
都姫は純粋に試合を楽しみ、両学園の好プレーに惜しみなく拍手を送った。
そのたびに。
「「「如月様が拍手してくださった……!!」」」
聖華学園の選手たちが、謎の覚醒を見せる。
明恭学園の選手たちも、負けじと奮起。
結果、試合は最終セットまでもつれ込む大接戦となった。
最後は聖華学園のエースが放った渾身のスパイクが決まり、聖華学園が勝利を収めた。
「やったぁぁぁ!!」
「勝ちましたわ!!」
大歓声に包まれる体育館。
都姫も立ち上がり、ぱちぱちと拍手を送った。
「すごかったねぇ。最後までどっちが勝つか分からなかったよ」
その言葉に、聖華学園の選手たちは満面の笑みを浮かべた。
こうして、午前中の対抗球技大会は。
バスケットボールは明恭学園。
バレーボールは聖華学園。
それぞれが一勝ずつを分け合う、見事な結果となった。
そして。
いよいよ、都姫が朝から楽しみにしていた時間がやってきた。
「わぁぁ……!!」
都姫の口から、感嘆の声が漏れた。
目の前に広がっていたのは、聖華学園の広大な屋外交流施設。
綺麗に整備された芝生。
木陰には大きなテーブルと椅子が並べられ、その周囲には何十台ものバーベキューグリルが設置されている。
さらに。
「お肉……!」
都姫の瞳が輝いた。
テーブルには、牛肉、豚肉、鶏肉、ソーセージ、色とりどりの野菜。
さらには海鮮類まで、ずらりと並べられていた。
「すごいねぇ。これ全部食べていいの?」
「も、もちろんです! 本日は両学園の親睦を深めるための特別なバーベキュー大会ですから!」
案内役の聖華学園の生徒が、嬉しそうに答える。
「やったぁ〜」
にへら。
その幸せそうな笑顔に、周囲の女子生徒たちが一斉に胸を押さえた。
「……か、可愛い……」
「……さっきまでコートで無双していた方と同一人物とは思えませんわ……」
「……お肉を見て喜ぶ如月様……尊い……」
しかし、都姫本人はすでに別のことを考えていた。
(お肉もいいけど、焼きとうもろこしも食べたいなぁ。あと、焼きおにぎりとかあったら最高だよね)
……どこまでも、食欲に忠実だった。
「それじゃあ、班ごとに分かれて準備を始めてください!」
運営委員の声とともに、両学園の生徒たちが動き始めた。
今回のバーベキューでは、明恭学園と聖華学園の生徒を混ぜた合同班が編成されている。
都姫の班にも、聖華学園の女子生徒たちが数名参加していた。
「よ、よろしくお願いいたします、如月様!」
「うん、よろしくね〜。一緒にいっぱい食べようね」
「は、はいっ!」
緊張する聖華学園の生徒たち。
しかし、都姫はそんなことなど気にせず、食材を確認していた。
「ん〜……お肉は厚さが違うから、焼く順番をちょっと考えた方がいいかなぁ」
「え?」
「あと、野菜も火の通り方が違うから、先に焼いておくものを分けようか」
そう言うと、都姫は慣れた手つきで食材を並べ始めた。
その動きは、実に手際が良かった。
午前中の部活動体験でも披露した、驚異的な料理の腕前。
それが、ここでも遺憾なく発揮されていた。
「じゃあ、私がお肉焼くね〜」
ジュウウウウッ!!
熱したグリルの上に、綺麗に並べられていく肉。
都姫は火加減を確認しながら、トングで手際よく肉を返していく。
「わぁ……!」
「すごい……! 焼き方まで綺麗……!」
「如月様って、本当に何でもできるんですね……!」
「ん〜? そんなことないよ。焼くの楽しいだけだし」
そう言いながら、都姫は絶妙なタイミングで肉を皿へ移した。
「はい、できたよ。熱いから気をつけてね」
にこっ。
「「「…………っ!!」」」
差し出された皿を受け取った聖華学園の生徒たちは、まるで国宝でも授かったかのような表情になっていた。
「……如月様が……」
「……私たちのために……」
「……お肉を焼いてくださった……!」
「……一生の思い出ですわ……!」
「えへへ。冷めちゃうから、早く食べよ?」
「「「は、はいっ!!」」」
ぱくり。
「「「…………!!!」」」
次の瞬間。
「お、美味しい……!!」
「焼き加減が完璧ですわ!!」
「こんなに美味しいお肉、初めて食べました……!」
都姫は嬉しそうに微笑んだ。
「よかったぁ。まだいっぱいあるから、どんどん食べてね〜」
……こうして。
ただのバーベキューだったはずの合同班は、いつの間にか『如月都姫の特製バーベキューを味わう会』へと変貌していた。
しばらくすると、都姫は自分の皿に焼きとうもろこしを一本乗せていた。
「ん〜♪」
ぱくっ。
「……おいひい」
幸せそうに頬を緩める都姫。
その姿を見た聖華学園の女子生徒が、小さく呟いた。
「……如月様って、意外と親しみやすい方なんですね」
「ん?」
「い、いえ! その……最初は、あまりにもお綺麗なので、近寄りがたい方なのかと思っていました……」
「あはは。そうなの?」
都姫は小さく笑った。
「私、普通にお喋りするの好きだよ〜。美味しいもの食べながらだと、もっと楽しいし」
「……!」
「だから、そんなに緊張しなくていいよ。都姫って呼んでくれてもいいし」
「と、都姫……さん……?」
「うん。それでいいよ〜」
にこっ。
「…………っ!!」
聖華学園の女子生徒は、顔を真っ赤にした。
「で、では……都姫さん!」
「はーい」
「……っ!!」
そのやり取りを見ていた他の生徒たちも、次々と会話に加わっていく。
「都姫さんは、普段どんなことをして過ごしているんですか?」
「ん〜。学校行って、バイトして、お家でのんびりかなぁ」
「アルバイトをなさっているんですか!?」
「うん。メイド喫茶で働いてるよ〜」
「「「メ、メイド喫茶!?」」」
一瞬の静寂。
そして。
「都姫さんが……メイドさん……!?」
「そ、それは……ぜひ拝見したいですわ……!」
「どちらのお店ですか!? 今度お伺いしてもよろしいでしょうか!?」
「あはは。もちろんいいよ〜」
その瞬間。
聖華学園の女子生徒たちのスマートフォンに、ものすごい勢いでメモが打ち込まれ始めた。
『如月都姫さんのアルバイト先』
『最優先訪問候補』
『次の休日に行く』
……どうやら、姉の天音が経営するメイド喫茶に、新たな常連客が大量発生する未来が確定したらしい。
一方。
明恭学園の生徒たちは、少し離れた場所からその光景を見守っていた。
「……あーあ、またファン増やしてる」
「……もう聖華学園にもファンクラブできるんじゃない?」
「……いや、たぶんもうあるだろ」
「……確かに」
全員、妙に納得していた。
午後のバーベキュー大会は、時間が経つにつれてさらに賑やかになっていった。
最初こそ、互いの学園の生徒たちは少し遠慮がちだった。
しかし、一緒に食材を焼き、料理を取り分け、笑い合っているうちに、その距離は自然と縮まっていった。
「明恭学園って、文化祭はどんな感じなんですか?」
「結構盛り上がるよ! そっちは?」
「聖華学園では毎年、一般公開の演奏会があるんです!」
「へぇ、面白そう!」
「今度遊びに行ってもいい?」
「もちろんですわ!」
あちらこちらで、そんな会話が交わされていた。
午前中の球技大会で競い合っていた選手たちも、今では同じテーブルを囲んで笑い合っている。
「さっきのスリーポイント、本当にすごかったですわ!」
「いやいや、そっちのディフェンスもめっちゃ強かったって!」
「また試合しましょうね!」
「もちろん!」
そして、その中心には。
「はい、焼きそばできたよ〜」
いつものように、のんびりと微笑む都姫の姿があった。
「「「わぁぁ!!」」」
「都姫さんの焼きそば!」
「私もいただいてよろしいですか!?」
「うん、いっぱい作ったからね〜」
都姫は大きな鉄板の前に立ち、慣れた手つきで焼きそばを皿に盛り付けていく。
その姿を見ていた聖華学園の生徒会役員が、ふと微笑んだ。
「……素敵な交流会になりましたね」
隣にいた明恭学園の生徒も頷く。
「そうだね。最初はどうなるかと思ったけど」
「ふふっ。都姫さんのおかげかもしれません」
「……まあ、あの子はいつもあんな感じだけどね」
二人は顔を見合わせ、くすりと笑った。
そう。
都姫は、特別なことをしようとしているわけではない。
ただ、自分が楽しいと思うことを楽しみ、周りの人たちにも自然に優しく接しているだけ。
しかし、その何気ない振る舞いが、人と人との距離を縮めていく。
それこそが、如月都姫という少女の持つ、不思議な魅力なのかもしれなかった。
やがて、午後の時間も終わりに近づいた。
片付けを終えた両学園の生徒たちは、聖華学園の広場に集まっていた。
「これをもちまして、三日間にわたる合同交流会の全日程を終了いたします!」
聖華学園の生徒会長が、マイクを手に挨拶する。
「今回の交流会を通じて、私たちは互いの学園について多くのことを知り、新しい友人を作ることができました」
生徒たちの間から、温かな拍手が起こる。
「この交流が、今後も末永く続いていくことを願っています。本当にありがとうございました!」
「「「ありがとうございました!!」」」
大きな拍手が、青空の下に響き渡った。
そして、いよいよ明恭学園の生徒たちが帰る時間。
「都姫さん!」
聖華学園の女子生徒たちが、次々と駆け寄ってきた。
「三日間、本当にありがとうございました!」
「またぜひ、聖華学園にいらしてください!」
「次は私たちが明恭学園に遊びに行きます!」
「メイド喫茶にも絶対に伺いますわ!」
都姫は、そんな彼女たちを見て、ふんわりと微笑んだ。
「うん。私も楽しかったよ〜」
そして。
「またみんなで遊ぼうね」
にこっ。
「「「…………っ!!!」」」
その一言に、聖華学園の生徒たちは一斉に胸を押さえた。
「……絶対ですわ……!」
「……またお会いしましょう……!」
「……都姫様ぁぁぁ……!!」
中には、感極まって涙ぐむ生徒までいた。
一方、明恭学園の生徒たちは。
「……あー、完全に聖華学園まで落としたな」
「……三日間でここまで人気になるって、やっぱりすごいよね」
「……本人、絶対気づいてないけど」
「……まあ、都姫ちゃんだし」
もはや、誰も驚いていなかった。
帰りのバス。
窓際の席に座った都姫は、流れていく景色をのんびりと眺めていた。
「ん〜……楽しかったなぁ」
隣の席に座っていた女子生徒が、微笑む。
「都姫ちゃん、今回の交流会どうだった?」
「うん。すっごく楽しかったよ〜」
「一番楽しかったのは?」
「ん〜……」
都姫は少しだけ考えた。
部活動体験。
研究発表会。
バスケットボールの試合。
そして、青空の下でみんなと囲んだバーベキュー。
どれも楽しかった。
どれも、素敵な思い出だった。
「……やっぱり、みんなと仲良くなれたことかなぁ」
「……!」
隣の女子生徒が、少しだけ目を見開く。
都姫は、窓の外を眺めながら続けた。
「学校が違うと、普段はなかなかお話しする機会ないでしょ? でも、こうやって一緒に遊んだり、ご飯食べたりすると、すぐ仲良くなれるんだねぇ」
そして、ふんわりと微笑んだ。
「また、みんなに会いたいな」
「……うん。そうだね」
女子生徒も、優しく笑った。
しばらくすると、都姫は小さく欠伸をした。
「ふぁぁ……。いっぱい動いたし、ちょっと眠くなっちゃった」
「寝てていいよ。着いたら起こすから」
「ん〜……ありがとぉ……」
こてん。
窓際に頭を預け、静かに目を閉じる都姫。
銀髪がさらりと頬にかかり、その美しい寝顔は、まるで精巧な人形のようだった。
「……ほんと、綺麗だなぁ」
隣の女子生徒が、小さく呟く。
しかし、都姫はすでに夢の中。
三日間の楽しい思い出を胸に、すやすやと眠っていた。
こうして、明恭学園と聖華学園による三日間の合同交流会は、無事に幕を閉じた。
二つの学園の間には、新たな友情と絆が生まれた。
そして、聖華学園には。
『銀髪の女神・如月都姫』
という、決して忘れられることのない伝説が残されたのである。
……ちなみに。
交流会終了後、聖華学園の生徒会には、ある要望が殺到したという。
『次回の合同交流会は、できれば来月に開催してください』
理由は、言うまでもない。
一方、その頃の都姫は。
「……んにゃ……焼きとうもろこし……もう一本……」
帰りのバスの中で、なんとも幸せそうな寝言を呟いていた。
――神々しい超絶美女は、今日もどこまでもゆるふわなのであった。




