第43話:静かなる大狂乱、見えない包囲網(聖華学園の激震)
都姫が校舎の自動ドアをくぐり、一歩中に入った瞬間。聖華学園の内部は、表向きの厳かな静けさとは裏腹に、文字通り「大騒ぎ」の渦に巻き込まれていた。
それもそのはず、一日目のコミュニティサイトやSNSでの大拡散により、聖華学園の全校生徒は『あの都市伝説の女神が、今日この学校にやってくる』という事実を完全に把握していたからだ。
「おい、来た……! 掲示板に書いてあったウルフカットの超絶美女だ……!」
「嘘だろ、本当にGカップだ……! ウエスト細すぎ、スタイルどうなってんの……!?」
廊下ですれ違う聖華学園の生徒たちは、名門校のプライドと規律を保つため、表立って大声を出すことこそ堪えていた。
しかし、その視線は完全に釘付けであり、すれ違った瞬間にスマホを取り出す指が激しく震えている。
歩行速度を落としてじっと都姫を見つめる男子生徒。階段の上から身を乗り出すようにして覗き込む女子生徒。
校舎のあちこちから、隠しきれない興奮の混じった視線のレイザービームが都姫へと集中していた。
コミュニティのチャット欄は、リアルタイムでのリーク情報で一秒ごとに更新されていく。
『現在、女神が2階の東廊下を通過中。実物ヤバい、尊すぎて心臓止まる』
『あのホクロ反則。すれ違いざまに良い匂いした、あれは天国の香りだ』
そんな「静かなる狂乱」の中心にいる当の本人は、「聖華学園の人たち、みんなすごく静かで大人っぽいなぁ」と、コテンと小首を傾げてゆるふわに微笑んでいた。
その無防備で圧倒的な破壊力の笑顔が向けられるたびに、周囲の聖華学園の生徒たちが胸を押さえてバタバタと無言で悶絶していく。
一日目にして他校のコミュニティをパンデミックに陥れた都姫の美貌は、聖華学園の本陣へと乗り込んだことで、さらに多くの迷える子羊たちを急速に増殖させ、校内を完全なる興奮状態へと叩き落とすのだった。




