第37話:夜空のパレットと、永遠の刹那(花火大会)
賑やかな屋台通りを十分に満喫した一行は、お祭りのアナウンスに促されるように、花火が一番綺麗に見えるという少し開けた高台の広場へと移動した。
辺りはすっかり暗くなり、心地よい夜風が、アップにまとめた都姫の銀髪とうなじを優しく捺でていく。浴衣の向日葵の模様が、遠くの提灯の光に淡く浮かび上がっていた。
「あ、もうすぐ始まるみたいだよ」
都姫が巾着袋を両手で大事そうに持ち、長い睫毛の瞳で夜空を見上げる。その隣に並ぶクラスメイトたちは、これから始まる大輪の花火への期待と、すぐ隣にいる「女神」の圧倒的な美しさに、誰もが静かに胸を高鳴らせていた。
ドン……ッ!!!
お腹の底に響くような重低音とともに、漆黒の夜空に最初の一発が打ち上がった。
一瞬の静寂の後、パラパラパラと音を立てて、鮮やかな金色の光が夜空いっぱいに大きく広がっていく。
「わぁ……っ!」
都姫の口から、鈴を転がしたような感嘆の声が漏れた。
次々と打ち上がる赤、青、緑、紫の光。その大輪の輝きが、都姫の超絶美貌を鮮やかに照らし出していく。光の色彩が変わるたびに、彼女の白い肌や、左目のすぐ下にある艶っぽいホクロが違った表情を見せ、言葉を失うほどに幻想的で神々しいオーラを放っていた。
クラスの男女は、夜空の花火を見るのも忘れ、ただひたすらに、花火の光に彩られる都姫の横顔に見惚れていた。
(綺麗だ……。花火も、都姫ちゃんも……)
(このままずっと、この時間が続けばいいのに……)
そんな切なさと愛おしさが混ざった感情が、みんなの胸の中に静かに広がっていく。
やがて、夜空を埋め尽くすほどの特大のしだれ柳が何発も打ち上がり、最高潮の光と音の渦の中で、花火大会はフィナーレを迎えた。ゆっくりと光の破片が闇に消え、あたりに心地よい静寂が戻ってくる。
夏の終わりを告げるようなその素晴らしい余韻の中で、夜空を見つめながら、都姫を含めたみんなが心の中で全く同じことを考えていた。
(また来年も、みんなと行けるといいな……)
言葉には出さずとも、通じ合うように、お互いの顔を見合わせて少し照れくさそうに笑い合うクラスメイトたち。
都姫もまた、ウルフカットのアップ髪を揺らしながら、いつものゆるふわな、しかしどこか愛おしそうな優しい笑顔をみんなに向けていた。
最強のスペックを手に入れた都姫と、彼女に救われ、彼女に魅了されたクラスメイトたち。
一生忘れることのない、最高に贅沢で輝かしい「初めての夏の思い出」が、来年への確かな約束とともに、みんなの心に深く刻み込まれた瞬間だった。




