第36話:無自覚な甘味、至高の屋台巡り(お祭り食べ歩き)
お祭り会場に到着すると、そこは色とりどりの提灯に照らされ、数多くの屋台と人混みで溢れかえっていた。
浴衣姿の都姫が歩くだけで、周囲の一般客やチャラ男たちがモーセの十戒のように道を譲り、遠巻きにため息を漏らす。
「わぁ、美味しそうな匂いがいっぱい! みんな、何から食べる?」
都姫はウルフカットのアップ髪を揺らし、目を輝かせて楽しそうに屋台を見渡した。
まずは定番の焼きそばとたこ焼きを購入し、近くのベンチでみんなで食べることに。
「熱っ……でも美味しい!」とクラスメイトが賑やかに食べる中、都姫もフーフーとたこ焼きを冷ましていた。
「あ、いぬくん。これ、すっごく美味しそうだよ。食べる?」
都姫は何の気なしに、自分が箸で掴んだ大きなたこ焼きを、隣に座っていた男子の口元へと差し出した。
「え……?」
いぬくんは目の前の光景に心臓が爆発しかけた。
至近距離には、お祭りの明かりに照らされた都姫の超絶美貌。Gカップの豊満な胸元が目の前に迫り、左目のホクロが艶っぽく微笑んでいる。そして、女神からの無自覚な「あーん」である。
「はい、あーん」
「は、ふ、ふぇいっ……!」
いぬくんは限界突破した赤面でたこ焼きを口に押し込まれ、あまりの尊さと美味さにその場で白目を剥いて悶絶した。
「う、羨ましすぎるぞいぬくん……! 俺にもくれ都姫ちゃん!」
「私にもあーんして!」
周りの男女が嫉妬と興奮で大騒ぎになり、都姫は「はいはい、みんな順番ねー」と、ゆるふわな笑顔で次々と無自覚な「あーん」を炸裂させ、クラスメイトたちを次々と撃沈させていった。
お腹がいっぱいになった後は、娯楽の屋台へ。
ヨーヨー釣りでは、細く白い指先で器用に水風船を釣り上げ、周囲の男子を「指先まで美しい……」とウットリさせる。
さらに射的の屋台では、元・細マッチョの天才的な運動神経と集中力を発揮。
「これでいいのかな?」とのんびり銃を構え、狙いを定めた瞬間、その佇まいはスナイパーのように美しく一変した。
パンッ! パンッ! とコルク弾をすべて命中させ、一番上の豪華な景品(大きなぬいぐるみのセット)を次々と撃ち落としていく。
「わぁ、たくさん取れた。これ、みんなにあげるね」
大きなぬいぐるみを抱え、少女のように微笑む浴衣姿の都姫。
お祭りの賑やかな光の中で、無自覚に魅力を振りまき続ける彼女に、クラスメイトたちは完全に心も胃袋も掴まれ、夢のような夏の夜を満喫するのだった。




