第35話:百年の一見、夜道に咲く大輪(浴衣姿での合流)
「ちょっと都姫、動かないで! 帯が緩んじゃうでしょ!」
「まあまあ、都姫ちゃん、本当に綺麗よ。まるでお人形さんみたい!」
夏祭り当日の如月家のリビングでは、美夜と天音が総出で、都姫の浴衣の着付けを行っていた。
普段は気分屋でゆるふわな都姫も、この時ばかりはおとなしくされるがままになっている。
「――よし、完成! 完璧よ!」
天音の満足げな声に、都姫は姿見の鏡の前に立った。
そこに映っていたのは、もはや言葉を失うほどの、神々しい和風の超絶美女だった。
いつもは無造作なウルフカットの濃い銀髪を、お姉ちゃんの手によって美しくアップにまとめ、白く細いうなじが大胆に露出している。左目のすぐ下のホクロが、夜のお祭りの雰囲気に合わせて艶やかな色気を放っていた。
浴衣は、銀髪が映える鮮やかな紺地に大輪の向日葵が描かれた大人っぽいデザイン。
B99のGカップという凶悪なボリュームのせいで、浴衣の胸元がはち切れそうなほど盛り上がり、逆にW60のウエストは帯によって限界までキュッと引き締められ、信じられないほどの曲線美を描き出していた。
「お母さん、お姉ちゃん、ありがとう。じゃあ、みんなと駅で待ち合わせだから行ってくるね」
「楽しんできなさいね!」
美夜の言葉を背に、都姫は巾着袋を手に、慣れない下駄でカランコランと音を立てながら家を出た。
合流場所の駅へ向かう道中、そして電車の中。都姫が一歩進むたびに、周囲の空気が一瞬で凍りついた。
すれ違うサラリーマンや浴衣姿のカップル、電車の乗客たちが、一斉に言葉を失って唖然とし、文字通り首が回るほど都姫を二度見、三度見していく。
「おい、今の見たか……? 天女か……?」
「異次元の美人がいるんだけど……!」
街中を瞬く間に魅了しながら、都姫は約束の駅の改札口へと到着した。
改札前には、先日宿題を終わらせたクラスの男女グループが、そわそわしながら待っていた。
「あ、みんな、お待たせー」
鈴を転がしたような美声が響き、みんなが振り返る。
「「「(……ッッッ!!!!!!!)」」」
その瞬間、クラスの男女全員が、呼吸を忘れてその場に彫刻のようにフリーズした。
「お、都姫ちゃん……? 美しすぎて、脳の処理が追いつかない……」
「女子だけど、本気で拝みたくなるレベルなんだけど……!」
顔を真っ赤にしてパニックになるクラスメイトたちに、都姫は「ふふ、浴衣ってちょっと歩きにくいね」とコテンと首を傾げてゆるふわに微笑む。
その一挙手一投足にハートを撃ち抜かれながら、一行は熱気あふれるお祭り会場へと歩き出すのだった。




