第12話:天才の暇つぶし(自習時間の家庭教師)
挿絵を追加しました。
キーンコーンカーンコーン。
1時間目の授業開始のチャイムが鳴ったが、教室に先生は現れなかった。
代わりに副担任の先生が慌てて入ってきて、教壇に立つ。
「えー、担当の先生が車の激しい渋滞に巻き込まれて、1時間目の到着が遅れるそうだ。中間テストも近いことだから、この時間は急遽、テスト勉強の自習とする!」
「えーーーっ」と不満の声を漏らしつつも、テストが近いこともあり、クラスメイトたちは一斉に教科書や問題集を取り出した。
しかし、都姫だけは違った。
天才で頭脳明晰な彼女は、すでに中間テストの範囲などすべて完璧に頭に入っており、復習する必要すら一切なかったのだ。
(うーん、やることがないなぁ……。お昼寝でもしようかな)
長身を机に預け、ウルフカットの銀髪を揺らしながら暇を持て余す都姫。
ふと隣の席を見ると、大人っぽい顔立ちの女子生徒が、数学のノートを前に「うう……」と頭を抱えて唸っていた。数IIの難解な証明問題とにらめっこしている。
「ねえ、どうしたの? 難しい?」
都姫が鈴を転がしたような声で優しく声をかける。
「あ、都姫ちゃん……。ここ、公式は分かるんだけど、どうしてこの数字がここに当てはまるのか全然分からなくて……。赤点かも……」
涙目になっている同級生を見て、ゆるふわで面倒見の良い都姫は、コテンと首を傾げて微笑んだ。
「じゃあ、私が教えてあげる。ここね、実はこの公式をそのまま使うんじゃなくて、こっちの式を先に展開すると分かりやすくなるんだよ」
都姫は隣の席に椅子を寄せ、彼女のノートに細く白い指先でサラサラと数式を書き込んでいく。その教え方は、学校の先生よりも圧倒的に明快で、要点が完璧に整理されていた。
「あ……! 本当だ! 解けた! 都姫ちゃん、すごすぎる……!」
「ふふ、よかった。こっちの問題も、同じやり方でいけるよ」
二人が頭を寄せ合って勉強していると、都姫の左目のホクロから漂うお姉さん系の色気と、天才的な優しさに当てられた周りの生徒たちが、吸い寄せられるように集まってきた。
「え、如月(都姫)って数学もできるの!?」
「っていうか教え方めっちゃ分かりやすいんだけど! 俺もそこ教えて!」
「私も! 英語のここが分かんない!」
気がつけば、都姫の席の周りには大勢の生徒が集まり、即席の「都姫塾」が開講されていた。
都姫はどんな教科の質問にも、ゆるふわな笑顔のまま「これはねー」と完璧に答えていく。自習時間が終わる頃には、クラスの全員が「顔が良くて、スタイルが良くて、料理もできて、頭まで天才って……神様はどれだけ都姫ちゃんに属性を盛れば気が済むんだ……」と、その完璧すぎるスペックに改めてひれ伏すのだった。




