表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
常世現世境界録  作者: 深青 律
1章
PR
10/14

意思無き殺意

地下水路で発見されたのは、核ごと一刀両断されたLv4怪異の死体だった。


鑑識課のバンシーとメラマは現場を調査し、死体を回収する。

しかし、そこには殺害者の残留が一切残されていなかった。


なぜ殺したのか。

そして、なぜ何の痕跡も残さなかったのか。

ーー鑑識課。


一際慌ただしくなっていた。

課長サイス「バンシー、メラマ。急行だ。詳細はウェーバーを確認しろ。」


ーーウェーバー。

PNSR境界管理局での連絡端末。見た目はほとんどスマホと変わらない。


ウェーバーには、地下水路第七区画にてLv4、生命型の斬殺死体発見。至急要請と書かれている。

封印具を装備し現場へ向かう。


地下水路第七区画。辺りには数人の実働課が待機している。進入禁止のテープが貼られており、現場まで歩いて進んでいく。

バンシー「酷い匂い…。怪異の残留と血の匂いと…。」

メラマ「解説しないでよ…。早く終わらせて出よ。あぁ、もう吐きそう。」


歩きながらバンシーが不満そうに呟く。

バンシー「感知系の人間なら境界観測の人達が動けばいいのに。その方が早いでしょ…。なんでいちいち私たちが動かなきゃいけないの。」

メラマ「あたしらは中の上くらいの感知能力しかないからしょうがないよ。怪異の痕跡が見れるからここに配属されてるの。境界観測課の人達ほど敏感な訳じゃないし。勿体ないんじゃない?そこまでの能力がある人をいちいち怪異事件に寄越すの。」

バンシー「理にはかなってるけど…」

メラマ「もう少しだから。集中して。」


現場に近づくにつれ、匂いが酷くなっていく。

目の前には約4メートル。一太刀で核ごと両断されている。

バンシー「何これ。人間の死体…?人間食べてたの…」

メラマ「怪異は喰われてない。怪異同士の争い…?相当な手練なのは確定だね。報告書かなきゃ。」

メラマはウェーバーを手に取り、報告を書く。

『現場到着。全長約4メートル。一体。Lv4怪異は核ごと両断されており、摂食目的ではなく殺害目的だと推測。人間の残骸が散乱しており、Lv4怪異自体は摂食中だったと思われる。殺害した怪異の痕跡は無し。Lv4怪異を回収後帰還予定。』


メラマ「早く回収して帰ろ。」

バンシーは白い正方形の封印具を取り出す。


ーー白匣(はっこう)


白い正方形の箱型封印具。中央に一つだけ黒いボタンがあり、押すことで内部に封じられた「収奪型怪異」が起動する。起動すると、箱から無数の黒い手が出現。能力や気配なども封じられる。対象を掴み、箱の内部へ引きずり込む。箱の中に収容された時点で、対象の存在が現世側から切り離される。もう一度ボタンを押すことで対象を放出する。通称ダイス。


バンシー「うん。」

バンシーがダイスを起動し開いた瞬間、世界が歪んだ。無数の黒い腕が這い出すように溢れ出し、4メートル巨体を覆い尽くしていく。節足の一本一本、割れた仮面のような頭部、体――すべてに黒い指が絡みつき、音もなく吸収していった。湿った音すらない。ただ消えていく。


バンシー「今年は何体溜まるのかなぁ。年一で処理ってほんと効率悪いよね。死体確保したらすぐやればいいのに。」

バンシーはダイスを見ながら不満そうに呟く。

メラマ「去年多かったよね。機密事項なんだから知るわけないよ。コストかかるんじゃない?」

バンシー「回収完了っと。環境復旧課ももうすぐ着くでしょ。帰ろー。」

メラマ「んー。」


ーー車内。

メラマ「なんかさ。殺害目的にしては珍しくない?やり方。」

バンシー「何が?」

メラマ「いや、殺すのが目的だとしてももっと雑というかぐちゃぐちゃになると思って。殺すなりの目的が見当たらないんだよ。恨みとか残虐性?とか。ただただ殺したって感じ。」

バンシー「……たしかに。自分の意思じゃないってこと?意思型の従者ポジのやつとかかな。」

メラマ「んーどうなんだろ。」



ーーKスマイル不動産ビル。地下5階。

バンシー「シエロさーん。Lv4怪異の回収お願いしまーす。大きさ約4メートル。」

奥から30代半ばの雰囲気の柔らかい女性が出てきた。

シエロ「はーいよ。変な事件だったんだっけ。後で見てみるね。」

メラマ「見事に核ごと一刀両断。ただ殺した側の残留は無し。不気味じゃない?」

シエロ「なにそれ。殺し屋みたいなやつだね。」


ーー殺し屋。


メラマの中でひとつ引っかかった。怪異の中でも社会性を持つものは居る。もしその殺し屋が本当にいるのだとしたら……。

バンシー「メラマー。起きろー。また考え事でしょ。」

メラマ「んー。」

バンシー「頭使うとお腹空くよー?」

シエロ「早く戻んないとまた怒られるよ。報告書書いといで。」

バンシー「メラマが現場で終わらせたのですっ」

自信満々のピース。満面の笑み。

シエロ「あんたが書いてからピースしなさい…。お昼食べてないんでしょ。とにかく戻りなー。」

バンシー「はーい」

メラマ「じゃまた。」


シエロは2人の後ろ姿を目で追う。考え事をしながらバンシーの昼食話を聞くメラマに目が移る。

シエロ「のめり込みすぎないといいけど。」


ーー1時間後。23階。鑑識課。

メラマ「サイスさん戻りました。」

サイス「報告書は読んだ。時間かかりそうな案件だな…。お前の殺し屋と言う見解、ありそうだ。報告書このまま情報解析課にまわしておけ。残留が無いんじゃ進められないしな、一旦保留だ。」

メラマ「はい。」


サイス「2人とも今空いてるだろ。第2区の西公園で複数の斬殺死体だそうだ。行ってこい。」

バンシー「はーい」


今度も惨殺か。


バンシーとメラマはいつも通り、現場へ向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ