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無能と罵られ婚約者も奪われたので全てを捨てて辺境でスローライフを始めます  作者: 希羽


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第7話:エルフの移住と、ワンタッチ村づくり

「神の御使い様……。我らをお救いいただき、本当に、本当にありがとうございます」


 毒蜘蛛の群れを消し飛ばした後。

 エルフの長老が、地面に額を擦りつけるようにして俺に感謝を述べていた。

 周囲のエルフたちも、俺を拝むように手を合わせている。


「いや、シルフィの家族なら当然のことだから、頭を上げてくれ」

「なんと慈悲深い……っ! ですが、御使い様。我々の命は助かりましたが、この里はもう……」


 長老が悲痛な顔で周囲を見渡す。

 確かに、巨大蜘蛛が吐き散らした毒の酸によって、エルフたちの木造の家々は溶け落ち、見る影もなくなっていた。

 俺の浄化魔法で毒自体は消え去っているが、家を失った彼らがここで冬を越すのは厳しいだろう。


「……なぁ、長老さん。エルフの集落って、全部で何人くらいいるんだ?」

「は、はい。およそ三百人ほどですが……」

「三百人か。それなら、俺の家の周りに十分住めるな」

「えっ?」


 俺は、キョトンとする長老に提案した。


「ここから少し離れたところに、俺が作った更地があるんだ。そこに、みんなで引っ越してこないか? 水も引いてあるし、野菜もたくさん育ってるから、食べ物には困らないと思うぞ」

「ひ、引っ越し、ですか!? しかし、三百人が住める家など……」

「家なら俺が作るから心配いらないよ。とりあえず、全員で手をつないで集まってくれ」


 俺の言葉に、エルフたちは戸惑いながらも、シルフィの誘導で一箇所に固まった。

 全員が揃ったのを確認し、俺は指を鳴らす。


「『集団空間転移マス・テレポート』」


 一瞬の浮遊感の後。

 三百人のエルフたちは、俺の家の前にある広大な更地へと転移していた。


「な、なんとっ!? 一瞬にして、空間を跳躍したじゃと……!?」

「あ、ありえないわ! こんな神話のような大魔法、詠唱もなしに……!」


 エルフたちが騒然としている中、俺は家の前に広がる広大な土地を見渡した。


「さて、それじゃあパパッと家を作ってしまうか」


 俺は大地に両手をつき、エルフたちの家族構成や必要な間取りを頭の中で大雑把にイメージした。


「『超規模・土木建築(タウン・クリエイト)』」


 ズズズズズズズズッ!!!!


 凄まじい地鳴りと共に、更地の地面が盛り上がり、形を変えていく。

 一瞬にして、木と土とレンガで構成された、美しく頑丈な家屋が百軒以上も『生えて』きた。

 もちろん、俺の家と同じように、各家に地下水脈からの温かいお風呂(魔力給湯付き)も完備させてある。


「よし、こんなもんかな。適当に空いてる家を使ってくれ」


 俺がパンパンと手の土を払うと、更地には不気味なほどの静寂が落ちていた。


「…………」

「…………」

「あれ? デザインが気に入らなかったか?」


 俺が首を傾げると、長老が白目を剥いて泡を吹きそうになっていた。


「こ、こ、これが……神の奇跡……っ!」

「あぁ……なんて美しいお家……しかも、お湯まで出るなんて……っ」

「ルーク様、万歳! 我らが神、ルーク様、万歳!!」


 三百人のエルフたちが、一斉に涙を流して歓喜の声を上げた。

 シルフィも誇らしげに俺の腕に抱きついてくる。


「ルーク様、本当にありがとうございます! 私、ルーク様のためなら、なんでも……夜のお世話でも、なんでもしますからね!」

「よ、夜のお世話って……」


 こうして、俺の静かなスローライフに、俺を狂信的に崇める三百人のエルフたちが加わることになった。

 賑やかになるが、まあ、こういうのも悪くない。


 ◇◇◇


 ――同刻。王都、謁見の間。


「レオンッ!! 貴様、いったいどういうことだ!!」


 玉座に座る国王の怒号が、広間に響き渡っていた。


「西の防衛都市が、オーガの群れによって壊滅しただと!? 王都を覆う絶対防壁はどうした! なぜ魔獣の侵入を許している!!」

「ち、父上……! 申し訳ありません、魔導具の調子が……」

「言い訳など聞きたくない! お前とそこの女が『自分たちで完璧に管理できる』と言ったから、有能な宮廷魔術師であったルークを追放することを許可したのだぞ!」


 国王の鋭い視線が、レオン王子の隣で震えるアリアに突き刺さった。


「ヒィッ……!」


 アリアは顔を隠すようにうずくまった。

 無理もない。つい最近まで絶世の美女と謳われた彼女の顔は、老婆のようにシワだらけで、髪も白くパサパサになっていたからだ。


「陛下……! どうか、どうかお助けを……! あの結界は、ルークの術式がなければ維持できません! 私では、魔力を吸われるだけで……っ!」

「なんと……。ルークはそれほどまでに高度な術式を、十年間もたった一人で維持していたというのか……!」


 国王は愕然と目を見開いた。

 国中からかき集めた魔術師の集団でも維持できないものを、ルークは涼しい顔で(実際は寿命を削っていたが)こなしていたのだ。


「レオン! 今すぐ騎士団の精鋭を率いて、ルークを連れ戻せ!!」

「なっ……! しかし父上、奴はどこへ向かったか……」

「どこへだろうと探し出せ! 彼が戻らなければ、この国は魔獣の餌食になるのだぞ!!」


 国王の怒号に、レオン王子は悔しげに唇を噛み切り、アリアは絶望の涙を流した。


 彼らは必死にルークを探すだろう。


 だが、彼らがルークを見つけ出した時……ルークがすでに『エルフから神として崇められる、不可侵の絶対強者』になっていることなど、今の彼らには知る由もなかった。

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