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無能と罵られ婚約者も奪われたので全てを捨てて辺境でスローライフを始めます  作者: 希羽


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第18話:失われた古代魔法と、全自動洗濯機

 図書館カフェが完成してから、俺は暇さえあればそこに入り浸るようになった。


「へえ、今の世界の魔法レベルって、こんなに低かったのか」


 ふかふかのソファに寝転がりながら、俺はルミナス王国から貰った『現代魔法史』という分厚い本をパラパラと捲っていた。

 どうやら、宮廷魔術師時代に俺が一人で張っていた『王都を覆う絶対防壁』や、エルフの村を作る時に使った『超規模・土木建築(タウン・クリエイト)』は、現代の常識では何千人という魔術師が数年かけて行うレベルの儀式魔法らしい。


「通りで、アリアたちがあっさり失敗するわけだ」


 とはいえ、今さら考えても仕方がない。俺は歴史書を閉じ、別の本を手に取った。


『古代魔法文明の遺産~失われたロストテクノロジー~』

「面白そうだな。どれどれ……」


 ページを捲ると、数千年前の古代人が使っていたとされる、超高度な『魔導具』の設計図や概念が記されていた。


 空間を繋いで一瞬で移動する『転移門ゲート』や、あらゆる病を治す『万能医療ポッド』など、今の世界では再現不可能な夢の技術ばかりだ。


 その中に、俺の目を引くものがあった。


「『魔力駆動式・自動洗浄乾燥機』……これ、洗濯機じゃないか」


 服を中に入れてボタンを押すだけで、水流と温風の魔法が自動で発動し、汚れを落としてフカフカに乾燥させてくれるという魔導具だ。

 現代の魔術師の技術では、水魔法と風魔法、そして熱魔法の複合術式を魔導具に組み込むことは不可能とされているらしいが……。


「……これ、俺なら作れそうだな」


 村のエルフたちは、天衣魔蛛の糸で作った丈夫な服を着ているとはいえ、洗濯はわざわざ近くの川まで行って手洗いをしている。


 この洗濯機があれば、みんなの生活がもっと楽になるはずだ。


「よし、ちょっと作ってみるか」


 俺はカフェを出て、最近つくった家の裏の工房へ向かった。

 倉庫から、適当な鉄鉱石と、ワイバーンの魔石をいくつか取り出す。


「この本に書いてある古代の術式を、魔石に刻み込んで……鉄鉱石を箱型に成形して……『錬成クリエイト』!」


 カアァァァッ! と光が瞬き、数秒後。


 俺の目の前には、白く輝くドラム式の全自動洗濯乾燥機が完成していた。


「試しに俺の服を洗ってみるか」


 昨日着ていた服を放り込み、魔力で起動ボタンを押す。


 ゴォォォォ……という静かな音と共に、内部で水魔法の渦が発生し、服を優しく、かつ強力に洗い始めた。


 三分後には温風魔法に切り替わり、あっという間にフカフカに乾燥された服が出てきた。


「完璧だ。これを村の各家に一個ずつ配れば、みんな喜ぶぞ」


 俺は『複製コピー』の魔法を使い、完成した古代のロストテクノロジーを三百個ほど量産した。


 ◇◇◇


「ル、ルーク様! この四角い箱は、いったい何なのですか!?」


 広場にエルフたちを集め、一家に一台ずつ魔導洗濯機を配ると、みんな不思議そうに箱を突っついていた。


「『全自動洗濯機』だよ。汚れた服を入れてボタンを押すだけで、綺麗に洗って乾かしてくれるんだ。川まで洗いに行かなくてよくなるぞ」

「「「えええええっ!?」」」


 俺が実演して見せると、エルフたちはまたしても一斉にひれ伏した。


「か、神の奇跡だわ……! 辛かった水仕事が、ボタン一つで終わるなんて……っ!」

「ルーク様は、我らの手荒れまで気遣ってくださるのか……! あぁ、なんという慈悲深さ……っ!」


 エルフの女性陣が、洗濯機を抱きしめて号泣している。

 そんなに喜んでくれるなら、作った甲斐があったというものだ。


「ルーク様、ルーク様!」


 そこへ、シルフィが目をキラキラさせて駆け寄ってきた。


「私の分まで、ありがとうございます! でも……なんだか申し訳ないです。ルーク様には、毎日新しいものをいただいてばかりで……」

「気にするな。俺が作りたくて作ってるだけだから。シルフィが笑ってくれるのが、俺にとっての一番の報酬だよ」

「る、ルーク様ぁ……っ」


 シルフィが顔を真っ赤にして、俺の胸に飛び込んでくる。

 ふわりと甘い香りがして、俺は少しドキッとしながら彼女の背中を優しく撫でた。


「あの……お邪魔でしたでしょうか……?」


 その時、背後から控えめな声がした。

 振り返ると、そこにはルミナス王国の姫騎士・フローラが、手土産の茶葉を持って立っていた。彼女は最近、頻繁に村へ『お茶飲み友達』として遊びに来ているのだ。


「おお、フローラ。いらっしゃい」

「本日は、王都で流行っている焼き菓子をお持ちしたのですが……ところで、村の皆様が抱きしめておられる、その白い箱は一体……?」


 フローラが不思議そうに洗濯機を指差した。


「ああ、これ? そっちからもらった古代魔法の本に載ってた『自動洗浄乾燥機』を作ってみたんだ。一家に一台配ったところでさ」

「…………はい?」


 フローラの手から、手土産の焼き菓子がポロリとこぼれ落ちた。


「こ、古代の……ロストテクノロジーを……い、一家に一台……!?」

「うん。水魔法と熱魔法の複合術式が少し複雑だったけど、ワイバーンの魔石を使ったら簡単にできたよ」

「ヒィィィィッ……!!」


 フローラは両手で頭を抱え、その場にしゃがみ込んでしまった。


「あああ……! 我が国の魔術院が、数百年かけても復元できなかった伝説の遺産が……っ!!」

「フローラ? 大丈夫か? 顔色が悪いぞ」

「だ、大丈夫です……。ただ、我が国の常識が、また一つ粉々に打ち砕かれただけですので……」


 フローラは虚ろな目で宙を見つめていた。


 こうして、この村は『神話級の魔獣や国宝級の服があるだけでなく、古代の超技術まで完備された、世界一進んだスローライフ村』として、ますます大国から恐れ(崇め)られることになったのだった。

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