14-新人冒険者の試練
新人試験の案内
ルフィスは冒険者ギルドで「ルフィス」として登録を終え、冒険者証を手に満足げにギルドを出ようとした。だが、その瞬間、受付カウンターにいた黒髪のポニーテール女性――受付嬢が慌てた様子で彼を呼び止めた。
「あ、待って!ルフィス!ごめん、うっかりしてた!」
受付嬢は少し顔を赤らめながら、カウンターから身を乗り出してルフィスに謝った。
「実はね、新人冒険者は登録と同時にギルドの試験を受ける決まりなの。それを案内するのを忘れてて…本当にごめんね!」
ルフィスは少し驚いたが、受付嬢の申し訳なさそうな表情を見て、優しく微笑んだ。
「ううん、大丈夫だよ…。試験って…何をするの?」
受付嬢はホッとした表情を見せ、試験の内容を説明し始めた。
「試験は2つあるよ。1つ目は魔力の測定、2つ目は的当てだよ。魔力の測定は、ギルドにある魔力測定器を使って、君の魔力を数値化するの。的当ては、弓や魔法を使って的に当てる試験で、戦闘の基礎能力を見るんだ。試験に合格すれば、正式に新人冒険者として認められるよ。」
ルフィスは少し緊張しながらも頷いた。
「分かった…。ボク、やってみるよ…!」
受付嬢はルフィスをギルドの裏手にある試験場へと案内した。試験場は広々とした屋外の訓練場で、地面には的が設置され、中央には魔力測定器が置かれていた。
魔力測定試験
まず最初に行われたのは魔力の測定試験だった。魔力測定器は、絶対に割れないとされる特別な水晶で作られた球体で、内部に複雑な魔法陣が刻まれている。受付嬢がその仕組みを説明した。
「この水晶に魔力を送り込むと、君の魔力が数値として浮かび上がるの。普通の冒険者だと100~500くらいの数値が出るかな。強い魔法使いだと1000を超えることもあるよ。さあ、ルフィス、手を当てて魔力を送り込んでみて。」
ルフィスは水晶の前に立ち、深呼吸をしてから両手を水晶に当てた。
「よし…ボクの魔力…どれくらいかな…。」
ルフィスは目を閉じ、かつて「大聖女の癒し」の力として使っていた魔力を意識した。セレフィスとしてデスワームを倒した際、創造神エルディスから授かった「生命そのものに干渉する力」を理解した彼は、自分の魔力がどれほどのものかをまだ正確に把握していなかった。
「えい…っと…!」
ルフィスが魔力を送り込むと、水晶が一瞬だけ光を放った。しかし、次の瞬間、異変が起きた。水晶の内部で光が乱反射し、まるで暴走するように明滅し始めた。
「え…?何…?」
ルフィスの魔力は、癒しの力として使う際とは異なり、生命力を吸い取る性質を持っていた。セレフィスとしての真の力は、水晶に込められていた魔力を逆に吸い出してしまったのだ。水晶内部の魔法陣が耐えきれなくなり、ピシッという小さな音が響いた。
次の瞬間、絶対に壊れることのないはずの魔力測定器が、ガシャンという大きな音を立てて粉々に砕け散った。破片が試験場の地面に飛び散り、辺りは一瞬静寂に包まれた。
「…え!?うそ…!?壊れちゃった…!?」
ルフィスは目を丸くし、慌てて手を引っ込めた。
驚愕と混乱
受付嬢は呆然と立ち尽くし、砕けた水晶の破片を見つめた。彼女の顔はみるみる青ざめ、震える声で呟いた。
「うそ…!国宝級に希少な魔力測定器が…壊れた…!?絶対に割れないはずなのに…!何…何が起きたの…!?」
彼女は慌てふためき、試験場にいた他のギルド職員たちも異変に気づいて集まってきた。
「あの魔力測定器が壊れただと!?」「ありえない…!何が起こったんだ!?」
「嘘だろ!?何があっても壊れないっていう水晶が砕けたって!?」
ルフィスは壊れた水晶を見て、焦りと不安が一気に押し寄せた。
「ボ、ボク…やっちゃった…!せっかく冒険者になれたのに…これじゃクビになっちゃう…!?」
ルフィスは頭を抱え、うろたえた。受付嬢は混乱しながらも、すぐに冷静さを取り戻そうと深呼吸をした。
「と、とにかく…!私じゃ判断ができないから、ギルドマスターに報告しないと…!ルフィス、ごめんね、少しここで待ってて!私がギルドマスターを呼んでくるから…!」
受付嬢は急いで試験場を後にし、ギルドマスターにこの異常事態の判断を仰ぐために走り出した。ルフィスは一人試験場に残され、壊れた水晶の破片を見つめながら、不安そうに呟いた。
「ボク…どうなっちゃうんだ…。せっかく新しい人生を始めたのに…冒険者、続けられるのかな…。」
ルフィスの心は焦りと緊張でいっぱいだったが、同時に、彼の内に眠る聖女としての力がどれほど計り知れないかを、改めて感じ始めていた。
あーあ、やっちまったよ。弁償だよ弁償。




