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秘密基地は大迷宮〈ダンジョン〉に  作者: カイエ
一章「秘密基地をダンジョンに」
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9/64

#8

 洞窟から出てきて、ぼくはようやく、二人のポカンとした顔の理由に思い立った。


 いやいやいやいや。

 何なの、今のは。


 そう思ったのは当然ぼくだけじゃなかった。


「ダイチ、今の……何!?」

「おい、ダイチ! お前、ダイチだよな!?」

「待って待って! 落ち着いて!」


 いや、ぼくも落ち着いてないけど。


「なんでダイチが、あんなこと知ってんだ?!」

「なんか、口調まで変わってた」

「完全に大人みたいだった」

「ダイチはいつも大人ぶってるけど、そういうんじゃなくて……本物の大人みたいだった」

「それに、ダンジョンの歩き方って何?」

「蛍光石?緑光石?なにそれ!」

「それに……」


 二人は、恐る恐る顔を見合わせて


「魔力って、言ってた」


 そう言って、怪訝そうな目でぼくを見た。


 思わず顔を伏せる。

 何だ今のは。

 ぼくにだってわからない。

 幽霊か何かに取り憑かれた?

 ううん、違う。二人を引っ張っている時――あれは間違いなくぼく自身だった。

 二人をなんとか元の場所に連れ帰ってやらないとと思って、手を引っ張ったんだ。

 その時の気持ちも、二人の手の感触も、はっきりと覚えている。

 ()()()()()()


 ……でも。


「ぼくにもわかんないよ!」


 ぼくは叫んだ。


「ただ、あのときは夢中で……三人一緒に戻らないとって思って……そしたら、帰り方がわかったんだ」


 というか。


「わかったというか、知っていたというか……」


 自信が無くなって、声が小さくなる。


 自分でも、なぜあんなことを知っていたのか、なぜ当たり前のように洞窟を「ダンジョン」だと知っていて、そして「ダンジョンの歩き方」ができたのか、さっぱりわからなかった。

 自分が、自分でなくなったようで怖くなる。


 こんなぼくのことを、二人はどう思うだろう?

 気持ち悪いと思うだろうか。

 怖いと思うだろうか。


 ――今まで通り、友達だと思ってもらえるんだろうか。


「ダイチさ、『オレ』って、言ってた」


 コータの呟きに、ぼくはビクリと肩を震わせる。


 怖い。

 何が起きたのか自分でもわからない。

 嫌われたくない。


 色んな気持ちがグチャグチャと頭の中で混じり合って、ぼくは泣きそうになった。


「ダイチ……」


 ケンゴが、ぼくをそう呼んで、俯く。

 見ると、ケンゴの肩は小刻みに震えていた。


 これはもうダメかもしれない。

 そう思った瞬間だった。


「「すっっっっっっっげぇえええええええええ!!!!」」


 ケンゴとコータの声が重なった。


「は?」


 ぼくはキョトンとして顔を上げた。

 二人の目は、好奇心と羨望でキラキラと輝いていた。


「コータ、お前実は凄かったんだな!」

「もうびっくりしたよ! コータにそんな一面があるなんて!」


 二人はきゃあきゃあと叫びながら、跳ねた。


「『次は、こっちだ』(キリッ)」


 ケンゴが何か始めた。


「『何してる?さっさと行くぞ(キリッ)」


 コータまで……!?

 って、それぼくの真似?!

 ていうか、ぼくそんな感じだったの?!


「かっけぇーーーー!!!!」

「すっごい安心したもん!!!」

「ちょ、やめて! やめて!」


 本当にやめて! 恥ずかしい!


「『何だ、蛍光石を見るのははじめてか?』」


 シャキーン、とポーズを取るケンゴ。


「『ダンジョンの道標(みちしるべ)……だ』」


 ビシィ、とポーズを決めるコータ。


 なんでもいいよ! もう!


 * * *


 しばらく盛り上がって(そしてぼくが凹んで)、ふと気づく。


「そろそろ帰らないと門限ヤバイんじゃない?」

「あ!そうか!洞窟の中だと時間感覚わかんないから」

「ていうか、スマホ!圏外じゃなくなったかなー」


 ケンゴがポケットからスマホを取り出す。

 だから、圏外かどうかと、電源が入るかどうかは関係ないってば。


「おっ電源入った!」

「あ、ぼくのゲーム機も!」


 え?


 二人は電源が入ったことを喜んでいるが、ぼくはなんとも言えない違和感を覚えていた。

 そして、足元に転がる、電源の入りっぱなしの懐中電灯が煌々と光っているのを見て、その違和感はますます深くなる。


「あれ?」


 さらに、ケンゴのスマホの電源はまだ5時を指しており――探検を始めたあたりから、ほとんど時間が経っていないのだった。

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