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秘密基地は大迷宮〈ダンジョン〉に  作者: カイエ
四章「帰還」
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49/64

#2

 ケンゴ、アリサ、コータ、カナの順にポータルで外に出る。

 最後に()()だ。

 出てみると、皆の顔が真っ赤で鼻息も荒い。

 どうやら興奮しているらしい――かくいうぼくも、ドキドキしている。

 

 案内されたのは殺風景な石造りの部屋で、木の椅子が用意されているほかはテーブルしかない。

 窓にはガラスがなく、木戸が嵌っていて、つっかえ棒で開かれている。

 外の風景が見える。

 

 ――――ここが異世界!

 

(といっても、今のところ異世界っぽさはほとんどないけどね)


 あえて言えば、石造りの建物なんて日本にはなかなかないので、珍しいと言えば珍しい。

 今の感覚は……ちょうど遊園地でアトラクションに並んでいる感じ。


「なぁ、早く外に出たいな!」

「どんな感じなのかな、危なくないかな」

「……冒険者ギルドとか、本当にあるのかな」

「でも、ぼくたちこの世界のお金とか持ってないよね」

「そういえば、これからどうなるんだろう、住むところとか、食べ物とか……」


 皆、思い思いに語り合っているが、ケンゴが少し声を落として言った。


「あのさ、カインさんが隣の部屋で話ししてるの、聞こえちゃったんだけどさ」

「うん?」

「俺らのことを『どう見ても貴族だから下手に扱うわけにはいかない』って」

「き、貴族?」

「ぼくらが?」


(ああ、なるほどな)

 

 ぼくの中にいる、もう一人のぼく――大人ダイチの部分が理解する。


「あのさ、ぼくらの格好とか、見てみてよ」

「格好?」

「普通じゃね?」

「……バカね、ここは異世界なんだから、服装だってきっと違うわよ」

「うん。アリサの言う通りだよ。この世界じゃ柄の入った服は贅沢品なんだよ」


 ぼくが言うと、皆は顔を見合わせた。

 皆プリント入りの服を着ている。

 そして、ぼくを見る。


「……なんでそんな事がわかるんだよ?」

「ダイチさん、じゃないよね」

「うん……異世界に来たからかな、なんとなくわかるんだよ」


 うまく言葉で説明出来ないけれど、今まで「大人ダイチ」になったときは、完全に『異世界人』になっていた。だから、後から子どもバージョンに戻ったときに、大人ダイチのときの記憶で混乱することが多かった。

 でも今は、子どもバージョンのままうっすらと異世界のことがわかる。

 ちょうど「大人ダイチ」と子どもバージョンのぼくとが少しずつ混じり始めているみたいに。


「そんなことより、ケンゴの言うことのほうが重要だよ」

「そう、そうだよ、ぼくたち貴族だと思われてるの?」

「ああ。あと『魔力は感じられなかったので、危険は無いだろう』って」

「魔力?」

「魔石、いっぱい持ってるけど……?」


 なるほど、そういえばそのあたりのことは説明したことがなかった。


「この世界じゃさ、たまに魔石がなくても魔術が使える人が生まれてくるんだよ」

「え、じゃあ本当の魔法使いじゃん!」

「でも魔石があれば同じことができるんだよね?」

「もちろん。でも魔石は使うと無くなっちゃうでしょ。だから大掛かりな魔法は難しいんだよ。でも、魔石が要らない人なら……」

「そっか! 大掛かりな魔法も可能ってことね!」


 コータの言葉に、アリサがぽんと手を叩いた。


「つまり、魔石が使い放題って感じなのね」

「それがそうでもないんだよ」

「なんで?」

「魔石なら色んな属性のものを集めたらいいけど、生まれつき魔力を持ってる人の場合、魔石なしで使えるのは一属性だけなんだよ。だから自分が持っていない属性の場合、やっぱり魔石が必要になる」

「「「なるほどぉ」」」

「でも、持ってる属性だけなら、使い放題と言えなくもないよね。限度はあるけどさ。だからこの世界ではそういう人は……」

「貴族になる、ってことかぁ」


 理解できたようで、みんな関心している。


「じゃあ、危険がないってのは?」

「あたしたちの格好を見て貴族だと判断したけど、魔力は感じられないから危険はないってことじゃない?」

「でも、ぼくたち貴族じゃないよね」

「言うべきなのかな」

「うーん、黙っておくってのはちょっと……」


 そんなことを話ししていると、カインがやってきた。


「お待たせ。仮入国の許可が降りたよ。ただしぼくがついていることが条件なんだけど」

「カインさんが監視するってことですか?」


 カナが言うと、カインが苦笑した。


「監視だと言葉が悪いな。保護と言ってもらえないかな」

「保護してくれるんですか?」

「ありがとうございます! でも、ぼくたちお金が無くて……」

「それなんだけども」


 カインは片目を閉じて見せる。

 日本人にはウィンクをする習慣がないので、ちょっと照れくさい。


「一旦、ぼくの家で保護することになった」

「えっ」

「カインさんの家?」

「いいんですか?」

「ああ。お行儀よくしてくれるなら歓迎するよ!」


(……相変わらずのお人好しだ)


 どこかいたずらな表情のカインを見て(ぼく)は思う。

 本当に――あの頃から何も変わっていない。


「でも、ずっとお世話になるってわけにも……」

「何か役に立てることがあればいいんだけど」

「それなんだけど」


 カインがニッと笑って、なぜか少し声を潜めた。

 

「キミたちなら、冒険者として独り立ちすることも十分に可能だ。外出許可が降りたら、すぐにでも冒険者ギルドで登録するといい」

「冒険者っ?!」


 真っ先に反応したのがケンゴ。

 戦士に憧れて剣道の腕を磨いてきたケンゴにとって、冒険者は憧れの職業なのだろう。


「ぼ、僕たちでもやっていけるでしょうか」

「ああ、一人ひとりの腕はまぁまぁというところだが、パーティとしては一人前どころか、中堅クラスの実力はあると思う」


 その前にダンジョンについての常識を学ぶ必要があるけどね、とカインはそう言いながら、俺の顔をちらりと見た。


「……なんですか?」

「キミ……ダイチくんだったか。キミはダンジョンに詳しいようだね」

「ええ、まぁそれなりに」

「その歳で大したもんだ。――どこでその知識を?」


 カインの目がキラリと輝く。

 おそらく訝しんでいるというよりは、好奇心が勝っているのだろう。


「それについては、後できちんとお話しますので、少し待ってもらえませんか」

「うん? それは構わないけど……理由は?」

「ぼくもまだ少し混乱しているので……決してカインさんを謀るようなことはしないと誓いますので、お願い致します」


 それに、どうせ時間の問題だ。

 何故なら――

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