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秘密基地は大迷宮〈ダンジョン〉に  作者: カイエ
四章「帰還」
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48/64

#1

「「「「おおおおおおお〜〜〜〜〜」」」」


 ダンジョンの外に出て広がる風景を見て、全員がぽかんと口を開けている。


「すげぇ! なぁ、異世界だぞ、異世界!」

「異世界? 本当にここが異世界なの?」

「間違いないよ! だってどう見たって日本じゃないもん!」

「ヤバいね……!」


 みんな興奮を抑えられないようだ。


「こらこら、走り出さないでくれよ」


 カインが苦笑しながら皆に釘を差している。

 ()()はといえば、


(懐かしい……見覚えはないはずなのに、ぼくはこの町並みを知っている)


 明るく穏やかな風景。

 荷車や馬車が往来していて、活気がある。

 石畳の広い大通りと、両脇に立ち並ぶ木造と石造りが組み合わさったような建物。

 建物と建物のあいだに張られたロープには、風にふかれて揺れる洗濯物。

 建物の前は歩道となっていて、野菜や果物、色とりどりの花なんかが山積みになった露天が並んでいる。 平和そうに笑う人々。


 そんな風景を見て、ぼくは胸が締め付けられる。


 ――――ああ、ぼくは帰ってきたんだ。



 たった一時間前、ダンジョンてみんな震えていた。


「それじゃ、一旦先に行って、キミたちのことを伝えてくる。決してここを動くんじゃないよ?」


 カインの言葉に、皆が動揺した。


「お、置いていかないでください!」

「大丈夫、王国騎士は決して嘘をつかない! ほんの数分で戻ってくる。約束しよう」


 カインがそう言って笑うが、すぐに安心できるものでもない。


「で、でも、もし帰ってこなかったら……」

「ぼくたち死んじゃう……」


ぐす……と泣き声が響く。

カインはわたわたと慌てて、


「うーん、でもポータルは、未登録の人間は同時に二人までしか通れないんだよね……みんなを一度に連れて行くわけにはいかないんだ」

「それじゃ、カインさん」


 ()()は手を上げて提案した。


「誰か一人を連れて行ってもらえませんか?」

「うん? それは別に構わないけれど、そんなことで安心できるのかい?」

「ええ、一人で行ってしまわれるよりは、一人ずつ送り迎えしてもらえるほうが、皆は安心できると思います」


 ぼくが言うと、カインは少し考える素振りを見せて、「じゃあ、誰から行く?」と言った。


「……オレが行く」


 ケンゴが意を決したように言った。


「オレはリーダーだ。お前たちを見捨てたりしない。……オレを信じてくれるか?」

「う、うん」

「まぁ、ケンゴなら大丈夫かな……」

「待ってるね」


 皆、文句はないようだ。


「決まったようだね」


 カインは俺たちを見て、なぜか嬉しそうに笑った。 どうやら子どもたちの信頼関係を見て懐かしくなったらしい。


「じゃあちょっと言ってくるよ。そうだな……ゆっくりと三百数えるくらいの時間で帰ってこれると思う」

「分かりました」

「ケンゴ君と言ったね。じゃあ行こうか」

「は、はいっ!」


 カインがケンゴの肩に手を置くと、二人がパッと光り、あっという間に消えてしまった。


「消えたっ?!」

「ケンゴ!?」

「慌てるなくていい」


 いきなり消えたことでコータとアリサが慌て始めたので、落ち着かせる。


「ポータルとはああいうものだ。数分で帰ってくると言っていたから、お前たちもすぐに体験することになるさ」

「……ダイチ君は体験したことがあるの?」


カナがオレをちらりと見て言った。


「ああ、ダンジョン探索にはなくてはならないものだからな。俺たちのように、歩いてダンジョンに入ることなど、普通はないぞ」

「そうなんだ……」

「うん? どうした、カナ」

「ううん、なんでもない」


 カナがニッコリとオレに笑いかける。

 なにか含むところの有りそうな表情だが、まぁいい。


「それと、ケンゴはわかってない様子だったが、お前たち。今から俺たちが行くのが、俺たちからすれば『異世界』だということは理解してるか?」


 オレがそう言うと、コータとアリサはキョトンとした顔をした。


「異世界?」

「……そう言えば」

「あたしはわかってたけど」


 カナだけはちょっと呆れたように肩をすくめているが、コータとアリサはブルブルと震え始める。


「すげぇ……そうか、ぼくたち、今から異世界に行くんだ……!」

「……異世界……冒険……」


 何やらブツブツ言っているが、大丈夫か?


「……カナ。お前は落ち着いてるんだな」

「うん。だってダイチ君は()()()()()なんでしょ?」

「ん? ああいや、どうなんだろうな……」


 そんなことを言っていると、ケンゴたちが消えたあたりに、人の形の光が現れる。


「おまたせ! 仮入国の許可を取ってきたよ」

「カインさん!」


 カインの顔を見て、コータとアリサがホッとする。 信頼していなかったわけではないが、それでも不安だったのだろう。


「じゃあ、次は誰が行く?」

「あたし! あたしが行く!」


 アリサがバッと手を挙げる。


「わかった、それじゃあ行こうか」


 そう言ってカインがアリサの方に手を置くと、先ほどと同じように二人がぱっと光ってあっけなく消える。


「……アリサさん、ケンゴのことが心配だったんだろうな」


 コータがポツリとつぶやくと、カナが吹き出した。

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