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秘密基地は大迷宮〈ダンジョン〉に  作者: カイエ
三章「遭遇」
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33/64

#6

「Nocturnality(夜目)」という魔術がある。


 ものすごく発音が難しいが、要するに暗いところでも周りが見えるというもので、何故か土魔法だったりする。

 今のところ使えるのは、カナちゃんだけ。

 他のメンバーには使えないので、ダンジョンに潜るときには灯りが必須だ。

 そうなるとカナちゃんにとってはいらない魔術になる。


 と思っていたんだけど……。


「ノクトルナリティ!」

「違う違う、「ヌォクトゥォルナルィティ(夜目)」だよ」

「ノークトールナーリティー!」

「ノクトールナリーティ!」

「ノークトルナリティ」

「うーん、アリサが近いかな。もう一度、「ヌォクトゥォルナルィティ(夜目)」」


 絶賛練習中。


 カナちゃんは魔術を覚えるのに熱心なので、大人ダイチ(皆曰く『ダイチさん』……正直やめてほしい)が現れるたびに、新しい魔術をせがんでいる。

 だから、使える魔術の数も段違い。

 使えないまでも「知っている魔術」だけなら、かなりの数になる。


 これもその中の一つだ。

 カナちゃんもはじめは使えなかったが、一人で練習して、使えるようになってから僕たちに提案してきたのだ。


 全員それなりに位階が上がっているお陰で、ダンジョン内で灯りがなくとも、それなりに周りが見えるようにはなっている。

 が、戦いとなるとさすがに心もとない。

 だから暗いところでも周りが見える「Nocturnality(夜目)」はうってつけなのだ。


 この魔術は効率がよく、土属性の魔石一つでかなりの長時間保つ。

 土属性の魔石が一つあれば、全員が丸一日潜っていても大丈夫なくらいだ。

 だから、ぼくたちはカナちゃんの提案どおり、全員が「Nocturnality(夜目)」を覚えるまで、ダンジョンに潜らないと決めた。


 ちなみに1つの魔石を複数人で使うときは、石を握った上から握ればいい。カナちゃんの手を握ったぜ、ひゃっほー!


 だけど、欠点が三つ。

 一つは、土属性の魔石がレアなこと。使い捨てにするには惜しい。

 が、今のところぼくたちは他の土属性の魔術を使えないので、どのみち宝の持ち腐れだ。


 次に、魔術は発音だけでなく、発動の結果どうなるかが明確にイメージ出来ている必要がある。

 例えば攻撃魔法の「Stiria(氷の槍よ)」なんかは、一度見てしまえばイメージできるけど、「暗い中でもはっきり目が見える」という状態はイメージしづらい。だから発動が難しい。

 でも、これについてはカナちゃんの「映画やホラー番組に出てくる暗視カメラの映像に似ているよ」という発言によりなんとかクリア。


 問題は、最後の一つ。


「カナ、どうしても無理?」

「無理。位階が上がればわかんないけど、自分以外にかけるのはできないみたい」


 使えるのは自分に対してのみ。

 つまり「全員がこの難しい詠唱を習得しなくてはならない」のだ。


「「Nocturnality(夜目)」!」

「あっ、アリサすごい! 完璧だよ!」

「カナの口真似をしたからね……(ボソ)」

「あっ、くっそー! なんで女ばっかすぐ上手くなるんだよ! 「ヌオークトールナーリティ!」」

「ケンゴくん、違うよー。「ヌォクトゥォルナルィティ(夜目)」」

「無理!!!」


 ケンゴがひっくり返る。


「無理! じゃないよケンゴ。前衛のケンゴが使えなかったら、灯り魔法が必要になるじゃん。ダンジョン潜れないじゃん」

「そうだよ、せっかくカナちゃんが教えてくれてるんだから、起き上がってさっさと練習する!」

「はい、起きてケンゴくん。「Nocturnality(夜目)」。さん、はい」

「わーったよ! 「ヌォクトゥォルナリティ」!」

「あっ! 今のは良かったよ!」

「「ヌォクトゥォルナレティ」」

「ダイチくんも上手い!」


 ちょっと巻き舌っぽいというか、やたら難しい……。これと比べたら「Lumen(光あれ)」なんて日本語と大差ないよ。


「「Nocturnality(夜目)」」

「おおー、コータくん完璧! ほら、みんなもうちょっと頑張ろう、ね?」


 はい、頑張ります!

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