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秘密基地は大迷宮〈ダンジョン〉に  作者: カイエ
三章「遭遇」
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32/64

#5

 ぼくたちはその場で引き返すことにした。

 いくら話し合っても意味がないのはわかってるからだ。


「少なくとも、さっきの男が向かったのは逆方向だから、いきなり出くわすことはないだろ」


 とケンゴは言ったけれど、どうしてもおっかなびっくり歩くことになり、出口に戻るのには少し時間がかかってしまった。


 外から入ってくる明るい光を見て、ぼくたちは心底ほっとする。

 途中でツノコウモリが現れたが、ケンゴが上の空のまま片手で叩き落とした。

 考えてみれば、モンスターよりも人間の方を怖がっているなんておかしな話だ。

 思えば、ぼくたちもずいぶんモンスターに慣れたもんだ。


 ようやく基地に戻って、みんな息をつく。


「みんな、聞いてくれ」


 ケンゴの声に、皆が振り返る。


「今日のことについて、話し合っておこうと思う」


 なんかリーダーっぽいことをいい出した。


「賛成」


 アリサが手を挙げて、


「つまり……これからどうするかってことだよね?」

「またばったり会うこともあるかもしれないからね」

「あたしはいつもどおりでいいと思う」


 カナちゃんの言葉に、アリサが顔をしかめる。


「それは……『ダイチさん』が出てこなかったから危険はないって判断?」

「そう」


 頷くカナちゃんに、


「それはまぁ……言いたいことはわかるけれど、実際のところはわからないじゃない?」


 アリサが反対する。


「索敵はコータが担当だ。だから、敵との遭遇についてはコータの意見を聞こう」


 ケンゴの言葉に、


「え、ぼ、ぼく?」


 コータがちょっと狼狽えた。


「そうだ。リーダーとしてコータの意見を聞きたい。索敵が一番上手いのはコータだ。だから、もしこれからもダンジョンに潜るなら、さっきの男に会わないために、コータに頼ることになる」


 ケンゴが真剣な顔でコータを見つめる。


「コータは、どうしたらいいと思う?」


 コータはしばらく考えて、


「わかんないよ」


 と答えた。


「わかんないって、そりゃわかんねぇのはみんな同じだけどさ」


 ケンゴが口を尖らせるが、コータは


「や、そうじゃなくて」


 と、考え考え思ったことを言葉にしていく。


「カナちゃんの言うことも一理あると思うんだ。ぼくは、大人ダイチ……いや」


 ちらっとぼくの顔を見る。


「もう『ダイチさん』でいいかな」

「ちょ、その呼び方やめて」


 しかしぼくの言葉はサラッと無視された。


「ダイチさんのことは、ぼくも信用していいと思ってる」

「その呼び名、定着しちゃうんだね……」

「じゃあ、これからもいつも通りでいいってことか?」

「ううん、アリサの言うことももっともだと思うんだ。多分、危険はないとは思う。とはいえ、本当に遭遇しても大丈夫かどうか、試して見るわけにもいかないよね」

「ま、そうだよな」

「だから、ぼくとしてはこれまで通りダンジョンには潜りながら、できるだけ灯り魔術を使わないで、できるだけ遭遇しないようにした方がいいと思ってる」

「なるほど」

「でも、さ」


 コータは肩をすくめて、


「それが正しいかどうかは、ぼくにはわかんないかな。最終決定は、リーダーのケンゴが決めるべきだと思う」


 まぁ、そうなるよな。


「ケンゴ……」


 アリサが少し不安そうにケンゴを見つめる。

 視線に気づいたケンゴは、アリサの顔を見つめる。


「アリサ、お前さ、もうダンジョンに潜るのやめたいか?」

「う、ううん、あたしは、ケンゴが決めたとおりにする」


 そしてちょっとうつむいて


「やっぱりちょっと怖いけど……」

「じゃ、ダイチは?」


 え、ぼく?


「お前はどうしたい?」

「う、うーん……正直、これでダンジョン探索はやめる!ってのは、無いかなって思ってるけど」

「けど?」

「ほら、ぼくの場合さ、『大人ダイチ』はぼく自身でもあるわけで……ちょっとみんなとは立場が違うというか」

「あぁ……」


 コータが頷く。


「でもまぁ、なんだろ、ぼくもケンゴの決めたようにするのが一番だと思う」


 丸投げした。


「よし」


 ケンゴが腕を組んで、何やら悩んでいるように見せる。

 まぁ、どうせ格好だけで、何も考えてないと思うけど。


「決めた!」


 ケンゴが宣言する。


「索敵担当のコータの意見で行く!できるだけ灯り魔術を使わず、できるだけ鎧の男に遭遇しないようにする。あとはいつもどおりということで」


 とりあえず、そういうことになった。

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