#4
「なんだよ、今の!」
ケンゴが小声で怒鳴る。
さすがのケンゴも、大きな声を出せばさっきの鎧男に気づかれるかもしれないことくらいはわかるらしい。
「知らないよ!」
コータも小声で返事する。
アリサも、そしてカナちゃんも足が震えていた。
「ダイチくん、大人ダイチにならなかったね」
カナちゃんがそう言うと、みんなハッとしたようにぼくを一斉に見た。
「そうだよダイチ! 大人ダイチはどうしたの?」
コータが咎めるような口調でそんなことを言った。
「え、そ、そんなこと言われても」
まさか責められるとは思わなかったので、ショックを受けつつ言い返えそうとしていると、
「いや、コータ、ダイチを責めるのは違うぜ」
と、ケンゴがそれを諌めてくれた。
「というかさ、コータ。大人ダイチに頼りすぎるのはなんか違うだろ」
ダイチの言葉に、コータがハッとして
「あ、だ、ダイチ! ごめん、ぼく……」
「いやいいよ、気にしないで」
ぼくも慌てて手を振る。
「ちょっと気が動転してた。それにほら、危険な時には必ず現れてくれたから……」
気まずそうにするコータに、アリサが肩をすくめる。
「いや、気持ちはわかるわ。あたしもずっとダイチは何してるんだ! って思ってたもの」
「アリサ、正直過ぎだろ」
ケンゴが苦笑する。
「ううん、本当に気にしないで。だって実は……ぼく自身も同じことを考えてたんだ」
ぼくが言うと皆が驚いたようにぼくを見た。
「危険が迫っているのにスイッチが入らないなんてこと、初めてだったから……自分でもびっくりしたんだ」
「そ、そうか」
「ダイチ自身、自分でコントロールできるわけじゃないもんね」
「ますますごめんな、ダイチ……」
「だから、いーって」
苦笑すると、ずっと黙っていたカナちゃんがポツリと言った。
「危険……だったのかな」
「「「「え?」」」」
皆、キョトンとした顔でカナちゃんを見た。
カナちゃんはう~んと考え込んだ様子で言葉を続ける。
「だから、さっきの人……危険だったのかな」
「いや、そんなのわかんねぇだろ」
「剣を持っていたし……。見つかって、もし悪い人だったら、ぼくたちは怪我したり、ひょっとすると殺されてたかもしれない」
コータの言葉に、カナちゃんはうーんと首をひねって、
「でも、もし本当に危険なんだったら、きっとダイチくんがダイチさんになってたんじゃないかな」
「……ダイチさんって何」
「大人ダイチのことじゃね」
「あー」
じゃなくて!
「カナちゃんは、危なくないからスイッチが入らなかったんだと、そう思うの?」
「うん、あたしはそう思うな」
「どうしてそう思うの?」
「アレじゃね? 敵がモンスターじゃないと出てこないとかじゃね?」
ケンゴの言葉に、カナちゃんは首を横に振る。
「ううん、ダイチさんはモンスターかどうか関係なく、あたしたちの安全を気にしてくれてるよ」
「なんで分かるのさ」
「だって、初めて「大人ダイチ」さんが現れたのって、モンスターが近くに居た時?」
「あ」
そう言えば、初めてジャイアントタランチュラと遭遇するまで、大人ダイチが現れるのはモンスターとは関係ない時だった。
「それに、罠がありそうな場所に迷い込んだ時とかにも、ダイチさんはいつも助けてくれた。あたしは」
カナちゃんはきっぱりと言った。
「ダイチさんのことを信用してる。だから、きっとさっきの男の人には『危険がなかった』んだと思う」




