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秘密基地は大迷宮〈ダンジョン〉に  作者: カイエ
一章「秘密基地をダンジョンに」
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13/64

#12

 それからというもの、ぼくたちは毎日のように秘密基地へ向かった。

 ダンジョンへは数日に一回練習しながら潜る程度にして、あとは基地部分をどんどん充実させていくことに夢中になった。


 なにせ、婆ちゃんちの倉庫には、何でもある。

 机と椅子だけでも秘密基地っぽいのに、宝箱(という名前の衣装入れ)や釣り道具、沈めておくだけで魚が取れる瓶まで。

 ラジオや食器も持ち込んだ。

 もうここに住んでも大丈夫な気がする。


 ちなみに今週はカセットコンロと鍋を持ち込んだ。

 ケンゴが家からラーメンを持ってきたので川の水で作って食べた。

 最後に変な虫(カワゲラというらしい。コータ談)が出てきて全員で悲鳴を上げた。


「あー、あとは食いもんだよなー」


 ケンゴがそう言って川に釣り糸を垂らす。

 場所は婆ちゃんちの裏から谷へ降りてすぐの釣りに最適っぽいスポットだ。

 広々としているし、ちょっと川を覗けばけっこうでっかい魚が沢山泳いでいる。

 とはいえ、いまのところ一度も釣れたことはない。ていうか餌がないんだよ……。


「家から持ってくるっていっても限界あるしなー」

「インスタントラーメンはなんかトラウマになった……」

「カワゲラのダシが出ててうまかったよね……」


 コータとふたり顔を見合わせて肩を落とす。


「食い物つったらさ」


 ケンゴが竿を上げて、魚がかかっていないことを確認しながらボソリと言う


「この前のバーベキュー、たまらんかったな」

「あー、タレがやばかったね」

「ぼくあんなに食べたの久しぶりだった」


 先日毎年恒例の学校主催のバーベキュー大会があって、その話題だ。

 今回の調理担当が水無月さんの家が経営してる洋食屋だったせいで、例年とは比べ物にならない旨さだった。


「肉……食いてぇ」

「その前に魚じゃない?」

「釣れねぇよ!! 餌ねぇんだからさぁ!!」


 ケンゴが釣り竿を引き上げて、ひっくり返る。


「今、俺達の秘密基地に足りていないのは……肉だ」

「はぁ」

「そんなこと言われても」


 ぼくとコータが笑う。


「オレさ……お前らに白状しないといけないことがあってさ」


 ケンゴは空を見上げたまま言う。

 なんだか哀愁漂う雰囲気だった。


「実は……この秘密基地のこと、水無月と一倉にバレた」

「「ええっ」」


 ぼくとコータの声がハモった。


「「まだバレてないつもりだったの?!」」

「どういう意味だよ!?」


 コータがガバッと起きて、ぼくらを睨む。


「どうしてバレたのかオレにもさっぱりわかんねぇんだ……お前ら、心当たりあるんじゃね?」

「「どうしてバレてないと思ったのかぼくらにはわからないんだけど、ケンゴは本当に心当たりないの?」」


 うん、息ぴったり。思わずハイタッチ。

 さすが親友だね。


「どういう意味だ?」


 本当にわかってないっぽい。


「ケンゴさ……声でかすぎんだよ」


 ぼくがため息混じりに言うと、ケンゴはガバッと起き上がって


「そんなこたぁねぇよ!」


 と叫んで、


「そんなこと…ねぇよな?」


 と自信なさげに繰り返す。


「いや、ケンゴ常に大声じゃん」

「あれで隠してるつもりだってのが、もうびっくりというか」

「じゃ、じゃあ水無月ら以外の奴らも、もしかして……」


 ケンゴが顔を青くする。


「秘密基地の場所までは知らないはずだけどね」

「ぼくらが秘密基地を作ったことは多分全員知ってる」

「全員……」


 ケンゴはがっくりと肩を落とし、


「すまん……みんな……オレはリーダー失格だ……」


 と頭を下げた。


「いや、ケンゴ……いつものことって言うか……」

「最初っからわかってたことなんで、謝る必要はないかな」


 ぼく達が慰めようとすると、


「そうじゃなくて」


 ケンゴはぐっと拳を握って、


「今日、あいつらに脅された」

「脅された?!」


 なんか物騒な話になってきた。


「ど、どんなふうに?」

「あいつら、秘密基地に招待しないとクラス中に秘密基地のことを言いふらすって言うんだ……」

「はぁ」

「そ、それで……?」

「だから、オレ、少しでも知られないように……」

「「え、もしかして、招待しちゃったとか?!」」


 何してくれてんだ、この馬鹿リーダーは。


「オレは抵抗したんだ!」


 ケンゴはガバッと顔を上げた。


「そんな脅しには屈さないって! 仲間を裏切れないって!」


 ケンゴは悔しそうな顔でその時の状況を説明する。


「あいつら怖いんだよ……アリサは『仲間を裏切らないのは立派だけど、秘密基地が秘密じゃなくなっちゃうね。ただの基地ね』とか言うし」


 ああ、水無月さんは言いそうだよね。カナちゃんは可愛いけど。


「それに一庫なんて『クラスのみんなにバレるのはともかく、大人が黙ってないかもね。基地そのものがなくなっちゃうかも』なんて言うんだ! しかも笑顔で!」

「うわぁ」


 コータがドン引きしたように後ずさる。

 カナちゃんは可愛いから何を言っても許す。


「で、ケンゴはどうしたの? 話しちゃったの?」

「いいや」


 ケンゴはきっぱりと言った。


「それでも仲間を売るようなことはできないと……オレは断った」

「おお」


 男じゃん。


「だから、おれは交換条件として……」


 ん?


「他のやつらに黙っていることだけではなく、定期的に『肉』を提供することで、あいつらを仲間に引き込むことに成功した」


 え?


「あ、いたいた、やほー」


 振り返ると、手を振りながら坂を下ってくる水無月さんと、カナちゃんが見えた。


「ご招待、ありがとうね」


 固まっているぼく達に、カナちゃんが笑顔で頭を下げた。

 ぼくとコータは、無言でケンゴを川に突き落とした。


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