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スケルトンの冒険者 異世界生活記 ~人化の術で冒険者やってます~  作者: 肉巻きおにぎり
3章 スケルトンの冒険者(Dランク)
55/60

53 Cランク昇格試験④

あけましておめでとうございます。(今更)


年末インフルで年始は実家でと色々ありまして大変遅れてしまいました。申し訳ありません。

今年ものんびり続けていきますので、どうかよろしくお願いいたします。

 陽が落ちた頃、俺達は入り口近くの野営地へと無事に帰って来る事が出来た。

 既に多くの冒険者は戻ってきているようで、それぞれの成果を自慢しあったり、武器の手入れや傷の手当てをしている。


「結構な数が戻ってきてるみたいだな」

「そりゃ夜の森は昼間に比べ物にならないくらいに危険だし、森に慣れてない人が夜入るのは正直関心しないかな」

「……エルフが言うと説得力が違うな」

「まぁね。それに多分なんだけどさ、あの森の奥にはかーなーり危険な魔物もいると思うんだよね」


 ほう。鋭いな。


「ちなみに根拠は?」

「これだけの種類の魔物が、森の入口に比較的近い場所で集まってる事。洞窟なんかと違って、森みたいに広い範囲に巣を作るゴブリンやコボルトなんかね、基本的に人間を恐れるものなの。だから一般的には、もう少し奥の方に集まって巣を作るんだよ。まぁ、多少この森の魔物は好戦的すぎるところもあるからこれに当てはまらない可能性もあるんだけどね……。それで、この森では入り口に近い場所にも関わらず、短い間隔で魔物の巣が密集してる感じでしょ? 当然こんな狭い範囲だと縄張り争いも多いみたいだし。実際に今日行ったコボルトの巣。オークを群れで狩ってたじゃない? 普通コボルトは自分達より体格が大きな魔物に立ち向かったりはしないんだよね。これって魔物が狭い範囲に増えすぎちゃってて、食料の取り合いが発生してるからだと思う。そんな状態に陥ってるのに決して活動範囲を森の奥まで広げようとしてる感じが無い。寧ろ放っておくとその内森から出てきて軽い氾濫(スタンピード)スタンピードになりかねないよね。つまり……」

「この入り口付近に固まっている魔物達が、例え群れになっても勝てない存在が奥にはいるって言いたいんでしょ? 私も同意見よ。それと、多分Bランク以上の大型の魔物ね。環境的に考えて一番可能性が高いのは蟲系か植物系の大型種じゃないかしら? 流石に飛龍種は居ないと思いたいけど……」


 アーティアの言葉が合わった後に、シルビアがどう?って感じで微笑む。


「分かり易い説明どーも。納得の理由だ。しっかしよくもまぁ、半日潜っただけでそんな事まで分かるもんだな。やっぱ凄いな2人共」

「ん。まぁ、私はほら? 一応、エ、エルフだからね? 森の中の事なら見ただけで大抵わかるから」

「私も学生の頃に魔物についても色々勉強してたからその成果ね」


 実際2人が今話してくれた内容は正解なんだろう。

 実際奥に進めば、コボルトやゴブリンが束になっても倒せないような化け物がいるからな。

 俺もかつて対面したあの大蟷螂ギガント・キラーマンティスが。

 そして、それと互角に戦える位の魔物も存在しているようだ。


 アレは今まで出会った魔物の中ではぶっちぎりで最強だった。

 だが奴はBランクの最終進化者だ。

 考えたくない事なんだが、AランクやSランクの魔物ってのは、あれよりも強いって事になる。

 しかもだ、この森の奥にはそういったのがまだまだ生息している可能性があるって話だ。

 つくづく恐ろしい場所だなと再認識させられる。

 しかし、俺達も冒険者を続けてると、いつかそんな化け物を相手にするような事が来るのかな? それは出来れば勘弁してほしいなぁ……。



 そんな事を考えている内に、俺達は目的地にたどり着いたようだ。

 目の前には緑の天幕のテント。

 倒した魔物の討伐証明の証を換金してもらう場所だ。

 近付くと僅かにだが話し声が聞こえる。

 どうやら既に先客が居たようで、覗いてみると2人組の冒険者の男が、ギルド職員の男と机を挟んで何やら揉めている最中のようだ。



「おい、流石にその値段じゃ割に合わないぜ? このオーク共を仕留めるのも結構苦労したんだし、もう少し色を付けてくれても……いいだろなぁ?」

「何と言われようとも用意された資金は限られてますので。決められた金額以上に出す事は出来ません。もっと稼ぎたいなのら明日の昼までに更に魔物を討伐して来てください。腕に自信がおありなら夜通し森に潜って頂いても構いませんよ? 夜には危険度が高い夜行性の魔物が多いですが、危険な分単価は高めになってますので」

「ふ、ふざけんな! こんな森の中でそんな事できるわけないだろ!」

「冒険者を続けると、時にそういった理不尽な状況でも戦闘を強いられる可能性も考えられます。無理にとは言いませんし、死なれては私も寝覚めが悪いので強制はしませんが、今後の為にも比較的大人数で動ける今回にそうった経験を積んでおくのもおススメですよ。私からはそれ以上提案できる事はございませんので。それでもこれ以上我儘を言われるのならば、私達ギルドとしても貴方たちの評価を下げる必要が出てきますが……?」

「ちっ! これだからギルドの奴は融通の利かねーんだよ。ああわかったよ。それでいい! ったく……やっぱりアイツの話に乗る方が得かもな。行くぞ!」

「お帰りはあちらです。では次の方、どうぞ」


 男達は引っ手繰るように銀貨を受け取るとぶつぶつと文句を言いながら出て行った。

 ギルドではこういった事は日常茶飯事なのか職員も慣れた物で男達の悪態を聞き流し、俺達の方へ視線を向けている。

 俺達はそのまま促されるままにテントに入り、職員の前の机に支給された袋を置いた。


「証明部位の確認及び換金ですね」


 ギルド職員の男は、置かれた袋を空けると、中に入っている魔物の耳や腕、花弁等、俺達が入れた物を取り出しては、一つ一つを注意深く眺めて机の上に並べていく。

 そして、次に取り出した灰色の犬耳を見て、その動きが止まる。


「おや。この色は……。コボルトナイトですね! それにこっちはハイコボルト。Cランク相当の魔物の部位は今日初ですね。貴方たちはなかなかの大物を探し当てたようですね」

「東の方でコボルト達の巣を見つけまして、そいつは群れの長みたいでしたよ」

「東側にコボルトの巣ですか……。西側を中心に回っている方が多かったので助かります。それにこの数を見るに結構な規模だったんですかね。Cランクに進化した個体までいるとしたら、今回見つからなかったら最悪森の外へと出て来ていた可能性もありますね。大きな成果だと思います。しかし、本来なら数で劣っている上に上位種まで確認したとしたら、よっぽど腕に自信が無ければ逃げる事を推薦します。今回はこうして無事に討伐して帰ってきている事ですし、ギルドとしては素晴らしいとしか言えない成果ですが、今後もし対応できそうにない規模の巣を見つけた場合は無事に帰還して必ず知らせてくださいね?」


俺達が頷くと職員の男は満足そうに笑い、袋の残りを全て机に並べる終える。


「上位種はコボルトナイト、ハイコボルト。残りはコボルト、ゴブリン、オーク、イビルプラント、キラーアントですね。素晴らしい成果です」


 そう言って職員の男は机の上に並べた素材を退けると、足元の皮袋から銀貨と銅貨を取り出し積み上げていく。


「コボルトナイトとハイコボルトがそれぞれ銀貨55と銀貨25。残りは1匹につき銅貨10って所ですね。イビルプラントとキラーアントは銅貨15枚です」


 多少安くなるとは思ってたが、やはりコボルトナイトの金額が思ったよりも低いな。

 他は大方予想通りの金額だな。

 討伐数1匹につきこの金額が付くなら、普通の討伐依頼よりも旨い方かな。

 ただ、倒した魔物から素材を回収してないのを考えると、相対的に考えて微妙な気もするが……。

 討伐系の依頼は、目当ての魔物を倒した後、その素材を回収しギルドに売る事で、更に追加報酬を得るのが基本だ。もしくは、その素材で武器や防具を作るか。

 しかしね今回は、倒したことを証明する一部分だけを持ってくるだけで、素材の買い取り自体はしていない。

 あくまでも試験のついでに小遣いを稼げるだけだ。

 確かに人間としての生活に金は必要不可欠なのだが、今はそこまで必死に稼がなくても1ヶ月位は生活できる位溜まっている。

 なので、ここで不満を言っても仕方ないし、今回俺達の目的は金を稼ぐことじゃなくって昇格試験の合格。

 どうせ金は、ランクが上がった後の依頼の方がより効率よく稼げるしここは、少しでも懐が温かくなった事を素直に喜ぶのが正解だろう。


 そんな俺の考えとは別に、シルビアの方は少し不満そうな顔をしてるが、余計な事を言われても困るので、何も言わせないようにアーティアに合図しておく。


「ええ、それでお願いします」

「ではこちらを。……正直報酬についてはゴネられると思ってたんですが、随分すんなりですね?」

「まぁ、確かにコボルトナイトに関しては少し少ないとは思いますけど、そもそもDランクの冒険者の報酬で考えたら破格ですし、俺達のランクが上がれば、もっと稼げる仕事もありますからね。それこそ紅蜥蜴の迷宮に潜ったほうが効率もいいですし。ここで文句を言ってギルドの印象を悪くする意味も無いと思いますし。それと、このやり取りも多分試験内容に入ってるんじゃないかなって思ってるんですけどね」

「本当にDランクなんですか君……? はぁ、お察しの通り、ここでのやり取りも採点の対象に含まれますよ。たまに、こうした試験の時に、少しでも自らが得をしようと無理な額を要求してくる人もいるんですよ。私達もなるべく希望にそった額を出したいんですけど報酬の資金にも限りがありますからね。まぁ、冒険者とギルドによる報酬のトラブルなんてのは、よくある事ですので、減点されるとしても微々たる差なんです。ただ、あまりにも酷い人ですと、今後色々とトラブルを生む可能性も高いので……。そうした人の合格は厳しい物になりますね」


 まぁ、腕があっても毎回報酬を吊り上げようとしてくる冒険者はギルドとしても扱いにくいだろうしな。

 しかし……。


「それ、試験参加者である俺達に話しても良かったんですか?」

「あー……すいまんせん。つい口が滑りすぎましたね……。今の話はくれぐれも内密にお願いします? もし漏れたら……」

「心配しなくても大丈夫ですよ。俺達に得なんてないですし、下手に漏らしたら俺達が減点対象になるでしょうし」

「はい。よく理解してくれているようで何よりです。もしまた狩りに出られるのでしたら明日の正午まで受付してますのでお願いしますね」



 報酬を受け取った俺達は、ギルドの組み立て式の仮説テントを銀貨1枚で1つ借りると、なるべく他のパーティと離れた場所を選び組み立て中に入る。


「今日は朝からずっと忙しくて落着けなかったから、これでやっと一息つけた気がする」

「正直、私は森での戦いよりも来る途中の竜車が一番辛かったよ……」

「帰りも多分アレに乗る事になるわよ?」

「うぇー……」

「とりあえず飯にしないか? 動きまくって腹減った」


 というより俺がそろそろキツイ。

 何が辛いってずっと半日戦ってたからそろそろ人化に回せる魔力が切れそうなんだ。

 途中時間を見つけて林檎とか齧ってたが、戦闘に魔力探知にと全然回復量が追いついてなく、結構しんどかった。

 多分あと1時間も持ちそうにないし、ここらで早いとこ補給しないとな……。


「あー……そうだね。あ、じゃあ、私が夕飯買って来ようか? さっき歩いてる時に簡単な軽食を売ってる場所見たし」

「待て待てシルビア。何の為にテントを態々借りたと思ってるんだよ」


 出ていこうとするシルビアを引き留め、俺は魔法の袋から既に準備しておいた夕飯を取り出してみせる。


「ああ、お金を払ってまでテントを借りたのはこう言う事?」

「流石に人の目のある場所で湯気の出る程温かい料理なんて出したら不信に思われるだろ? この魔法の袋の存在は、出来るだけ隠した方がいいだろうしな」

「シャシャ!」

「うーん。確かにそれはそうなんだけど、それをジェイドが言うと説得力ないよね……」

「やかましい。そんな事言うと飯抜きにするぞ」

「ちょ! なにそれ横暴ーっ!」

「ちゃんとやるから大人しく待ってろ」


 とりあえず、人数分の皿とスプーンを配り、続けて大皿に盛られた七面鳥に似た鳥の魔物の香草焼き、ワイルドボアの串焼きに、見た目が肉まんみたいな何かの肉の包み焼き等々。

 この料理は前日に俺が屋台通りを巡ってマシロが食べたそうな物を中心に買い込んでおいたのだ。

 どの料理も魔法の袋に入っていたので出来た手の時の様に温かい。

 匂いに釣られて既にマシロが涎を垂らしている。


「んー。いい匂い」

「ほらよ。熱いから気をつけろよ」


 そう言ってシルビアに渡したのは、木の皿に注がれたホワイトシチュー。


「ありがとう。それにしても、なんか外でこうして温かい食事が出来るなんて信じらんないよね……」 

「は? なんでだ? シルビアはともかく、アーティアは魔法が使えるんだし、火を起こすのも楽だろう? 今まで野営で飯作るとかそういう事しなかったのか?」

「確かに可能だけど、考えてみて? 街の外での野営は、いつ魔物に襲われるか分からないのよ? それなのに魔力を無駄に使えると思う?」

「あー。それは確かに」


 俺みたいに近接戦闘タイプの奴ならともかく、魔法を中心に戦う魔術師だと特にそういった事に気をつけないといけないのか。


「だから、大抵は日持ちのする干し肉とか黒パンで済ませたりするのが基本なのよ」

「そそ、固いし塩辛いしでアレが続くと辛いんだよねー。そもそもジェイドは魔法の袋持ってるから考えたことないかもしれないけど、ほら。この卵とかさ。例え買っていざ外で料理に使うとしても、その頃には割れてるだんじゃない? 魔物との戦闘中は常に動き回る事になるんだしさ」

「そう言われたら確かに……」


 そりゃそうか。

 この世界は魔物だらけなんだし、こうして外で調理して飯食うのも一苦労だよな。

 それに食糧を積んだ荷馬車なんかは魔物だけでなく、野盗なんかからも頻繁に狙われるらしいし。

 だから商人の馬車を護衛する依頼も沢山ギルドに張り出されてたしな……。


 つまり、こうしてのんびりと外で食事するのも一苦労って事か。


 あれ。そういえば俺は前にオキシア湿原でマシロと飯作たりしてたんだが、あの時は魔物に襲われたりしなかったな。

 なんか理由でもあったのか? ポイズンクロウラーにビビって他の魔物が逃げてたとかかね。それとも単に運が良かっただけなのか。



「さて、これからどうする?」


 とりあえず、食事がひと段落し、先程受け取った報酬を3人で分け、皆と今後の予定を話し合う事に。

 コボルトナイトとハイコボルトの取り分は俺が丸ごと貰って言いそうだ。

 自分達が倒したわけではないからとの事だが、俺としてはシルビアとアーティアが他のコボルトを大量に狩ってくれたからこそ集中して相手が出来たと思ってるんだがな。ただ、懐が心元無いのも事実で、折角譲ってくれているのだからここで遠慮して今後のお互いの関係がギクシャクするのも嫌だと思い、お礼を言って受け取る事にした。


「さて、これからどうする? 夜も森に入って稼いでみるか?」

「止めた方が良いと思うよ。確かに皆強いけど、夜になると視界も限られるし臭いや音に敏感な魔物の方が有利に立ち回れるだろうし、私達も連携し辛いと思うんだよね」

「そうね。こご無理をして稼ぐよりも、もう少しお互いの事を知ってからでも遅くないと思うわ」

「そうか。うん。俺も同意見だな。正直あんまりメリットが無さそうだし」


 安全第一。

 金は当然欲しいが、無謀を冒してまで挑むつもりは無い。皆引き際を心得ているようで、俺達は今後も上手くやっていけそうだと一安心だ。


 その後は、明日の早朝辺りに余裕があればもう一度森に入り、魔物を狩ろうと決め、少しでも体力を回復させるために、そのまま交代で仮眠をとる事に決まった。

 ただ流石にパーティを組んだとはいえ、男女が同じ場所で寝るのは色々と危険だなと思い(最も俺がそういう事がはたして出来るのか不明なんだが)俺とマシロ、シルビアとアーティアに分かれて仮眠をとる事に。

 最初はシルビアとアーティアだ。


 俺とマシロはテントの入り口近くに腰かけて見張り役。

 いくら魔物が入れなくてもこれだけ人間ががいる場所だしな。

 用心しといて損は無いだろう。特に2人は美人だから余計にな。


「それじゃ、私達は先に寝るけど……夜這いとかしないでよね?」

「するか! 見張りしといてやるからはよ寝ろ」

「もー。冗談に決まってるでしょ。信じてなきゃこうやってフード取る訳ないでしょ?」

「へいへい。ありがとよ」

「ふふ。おやすみジェイド君」

「おう。おやすみアーティア」


 マシロと共に俺は日課の魔力操作をしつつ本を読んで時間を潰す。

 淡いランタンの炎に照らされる中、2人の寝息と俺が本を捲る音だけが時折響く。


 ある程度時間が経ったら起こす約束になっているんだが、俺には体力の問題が無いので、極端な話、例え何日も眠らなくても問題ない。

 そりゃ精神的疲労はアンデッドの身であってもちゃんて感じるので、眠る事にも意味はあるんだろうが、今日は2人を起こさず朝方までこのままでいるつもりだ。

 気付ばマシロも既に眠っていたようで、俺の足元で体を丸めて寝息を立てていた。

 魔法の袋から厚手の布を取り出して毛布代わりに掛けてやり、俺はそのまま読書を続ける。

 そうしてどれ位時間が経った頃だろう。


 ふと、外でなにやら人が集まっているような動きを感じて、意識を読書から現実に切り替える。


 生命探知を使ってみると10人近くの人数が一カ所に集まってるようだな。森の入口近くだ。


「……もしかして、何かあったか?」


 もしや、魔物が群れで攻めてきたのではと不安に思い、更に範囲を拡張してみるが近くに魔物の反応は感じられなかった。

 とすると、この人間達、恐らく冒険者だろうが、一体何をしているのか?

 まさか今から森に入るのか? 単価が高い夜行性の魔物を狙って人数を揃えたって所だろうか。

 まぁ、少人数で行くよりは安全だろうけど、はたして見通しの悪い夜の森の中で魔物と乱戦なんかして大丈夫なのかね。

 別に行きたきゃ行けばいいと思うけど……。


 一度気になりだしたら見に行ってみたくなるのが人間であり、俺は現在暇を持て余している。

 ……ちょっと見に行ってみようかな?

 一応見張りも忘れては不味いので、生命探知は常に発動させてシルビア達が寝てるテントに誰かが近寄らないかのチェックだけは常にしておく。

 これで何者かが近寄ってもすぐに探知できるし。

 といっても、マシロが居るから不用意に入ったらそれこそボコボコにされると思うんだけどな。


 俺は、足元のマシロを起こさないように気を付けつつ、立ち上がり冒険者の集りの様子を見に行ってみる事にした。



 ◆


「これで全員か?」


 そう言って集まった冒険者を見渡しているのは、煌びやかな装飾が施された鎧と剣が特徴的な金髪の男。

 確かウォルターさんにコテンパンにされてた何とか家の二男坊だったな。

 名前は……あ。知らないわ。次男坊君でいいや面倒だし。

 1人先走って出てったので、まだライムダールの中だと思ってたが、ちゃっかり竜車の乗ってたって事かな。


「おい。昼間の話は本当なんだろうな? 俺は命の危険を冒してまでお前の遊びに付き合うつもりはねーぞ?」


 スキンヘッドの片手斧を装備した男が、次男坊君睨みながらそう言うと、次男坊君が一つ懐からガラス製の小瓶を取り出して他の冒険者達に見える様に掲げた。

 ここからだと良く見えないが、どうやら中には何かの薬品が入ってるようだ。


 なんだあれ? ポーションか何かか?


「これが例の物だ。希少種で知られるマナフェザー・ピーコックの雌のフェロモンだ。使えば周囲に繁殖期の雌と同じ臭いを出すらしい。これを使う事により森の奥に隠れている雄をおびき寄せる事が出来るだろう」

「マナフェザー・ピーコック……」

「確かCランクだったよな? 確か魔力を溜め込む性質の尾羽を持つ鳥の魔物だ」

「あ。俺知ってるぞ! 昔親父が話してたんだ。マナが濃い森や山に生息するらしいが、かなり警戒度が高い魔物で人前に姿を現すことが滅多に無いらしい。その輝く尾羽だけで金貨50枚以上するって話だぞ?」

「金貨50だと!?」


 自分たちが狙ってる獲物の価値を知って冒険者達が興奮気味にざわつきはじめる。


「で、でもよぉ。はっきり言って半信半疑なんだが、なんでアンタがそれを持ってる? 昼間俺達に声を掛けた理由も知りたい」

「これは数日前にライムダールの闇市で仕入れた物ではあるが、その商人が扱っていた他の商品はどれも本物だったし、私の感は良く当たるのだ。私が生まれた時に我が家お抱えの魔術師のバーリンが、私には神に愛された幸運が訪れるだろう。と言ってくれたらしいからな。信用しててくれ。」


 いや!? 根拠になってねーよそれ! 絶対ご機嫌伺いの為のお世辞じゃねーか!


「貴様たちに声を掛けた理由は、昼間の戦闘時の動きを見て、少しでも能力が高そうな人間を見繕ったまでだ。流石の私でも1人で森に入って生き残れると思うほど自惚れておらん」

「へ、へへ。成程な。俺の腕が頼りになるって事だな?」


 おいそこ。なんでこんな安っぽいお世辞でいい気になってるんだよ。


「だ、だがよ、いくら俺達が多少他より強いとはいえ、それでもDランクの冒険者の集まりだぞ? この数でもこの時間に森に入るのはやっぱり危険じゃねーか?」

「そ、そうよ。夜行性の魔物だって大量にいるんでしよ……?」

「確かに危険はあるだろう。だが、目的である警戒心が強く普段はめったにその姿を人前にさらすことが無い為に、討伐難度のランクが高いが、危険度自体ははっきり言ってゴブリンやコボルトと対して変わらん。むしろ道中の魔物の方が危険な位だ。しかし、それは私達が力を合わせれば乗り越えられる程度の障害だ。危険を冒す価値は大いにあると私は確信しているぞ? なんとしても森の奥を目指し、このフェロモンを使う。その後におびき出されたマナリアピーコックを私が倒す。それで終了だ。……先に言っておくが来たくなければ来なくてもいい。弱気な者など、足手纏いなだけだからな。私は1人でも行くつもりだぞ?」


 ならもう初めから1人で行けよ……。

 お前絶対自信なかったからこれだけの人数集めたんだろうが……。

 若干足も震えてんじゃねーか。


 その内心を悟られないように、次男坊君が挑発的な笑み強めて集まった冒険者へと向ける。


「おい待てよ。行かないとは言ってないだろ!」

「そ、そうよ! それに途中仕留めた魔物の報酬は、最後に仕留めた人が丸々もらえるって話だよね?」

「無論だ。私が求めるのは父と兄に報告するに値する戦果だけだ。なるべく避けて進むつもりだが、それでも襲ってく魔物はいるはずだがな。その為の貴様たちだ。金など後で好きに分配すればいい」

「へへ! 今の言葉忘れんなよ?」

「面白くなってきたぜ!」

「この人数がいるんだ。どうにかなるさ」

「楽勝だぜ! やっぱついてるなよな俺達!」


 最初の不安はどこにやら、目先の利益がちらついた途端いきり立つ冒険者達。

 やっぱ、あれかな。脳筋が多いのかなこの世界。

 最初に不安がってた奴なんか斧をブンブン振り回しつつ、早く行こうぜ? みたいな表情してるし。

 お前命の危険を冒すつもりないとか言ってただろ。

 今全力で死地に向かって走ってるぞおい。


 と言うか、もう少し疑おうぜ君達?

 どう考えても怪しすぎるだろ。

 そもそもあの小瓶の中身が本物とは限らないわけで……。

 あっ。そうだ。

 こういう時の為に俺には深淵の知恵に含まれる鑑定スキルがあるじゃないか。

 このスキルに魔物以外にも物に対しても効果がある。


 どれどれ。

 まぁどうせ闇市で掴まされたって時点で偽物臭いと思うんだがはたして……。

 どうせ実は安っぽいポーションでしたとかそういうオチだと面白いんだけど。



【ギガント・キラーマンティスのフェロモン】

 産卵期の近い雌からのみ取れる特殊な液体。

 この液体から放たれる独自の臭いは、同種の雄に対して繁殖期を知らせる為の物であり、自身の元に雄をおびき寄せるのに使われる。




 ほーらなやっぱり偽物だったよ。

 はっはっは。




 いやいやいやいや!

 現実逃避してる場合じゃない!

 落着け! オーケー。クールになれ。

 まずは、冷静に今の状況を整理してみよう。

 先ず最悪なタイミングで、最悪な連中が、最悪な物を使って馬鹿をやらかそうとしてやがる。

 どう考えても大参事間違いなしだ。

 これから予想される惨状に俺は頭を1人抱えてしまう。


「さぁ進むぞ! この先にこそ勝利の栄光あり! 私に続けぇぇ!」

「「うぉぉぉぉぉ!」」


 そして、そんな俺の心配を余所に、なんかあっちはあっちで更に盛り上がって森に入って行っちまうし……。

 もうヤダこの人達。このまま見なかったことにして帰りたい……。

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