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スケルトンの冒険者 異世界生活記 ~人化の術で冒険者やってます~  作者: 肉巻きおにぎり
3章 スケルトンの冒険者(Dランク)
49/60

47 爆破短剣

また遅くなって大変申し訳ありません。

なかなか納得できる物が書けなくって……。

 皆でスピアディアを狩りに行った次の日。

 俺達のパーティは、白翼亭の食堂で朝食を取っていた。

 毎度の事ながら、当然のような顔でカリナも一緒だ。

 白翼亭には、今は俺達しか利用客がいない

 なのでシルビアはフードを取って楽な格好で過ごせるし、カリナは暇な時間が多いのとで俺達と、こうして食事をするのも定番になりつつある。

 この宿、こんなんで経営大丈夫なのだろうか……?

 まぁ、カリナの事だから、上手いことやりくりしてそうではあるんだが。


「私達の昇格試験って明日なんだよね?」

「ああ、そういう話になってる。肝心の内容はまだ聞かされてないから、実際にどんな事をさせられるのかは、その時になるまで分からないんだとさ」

「ふーん。何するんだろうね。魔物の討伐とか……もしくは何かの採取とかかな? あっ、ジェイド。そこのジャム取って」

「ほらよ。それで今日の予定だけど、皆それぞれ自由行動って事にしようかなって考えてる」

「自由行動? それって、休日って事でいいの?」

「おう。今日無茶して明日の試験で失敗したら困るだろ?」

「そうねー。現に誰かさんは昨日、怪我しちゃってたしねー?」

「うぐっ……」

「ふふふ。あんまりいじめないのシルビア」

「はーい。あっ、マシロちゃん。これあげる。お肉好きでしょ? はいあーんしてね? あーん」

「シャ~」

「あ、ずるいシルビア! シロシロにご飯あげるの私がやろうとしてたのに!」

「カリナはいつもやってるじゃない!」


 なんで保護者である俺に許可を取らずに、この2人はマシロの食事の事で揉めてんだよ……。

 その話題の中心であるマシロはというと、言い争い自体に興味は無いらしく、無視を決め込んでもくもくと干し肉の塊をぱくついているのだが。


「休日でいいのなら、私は部屋で本でも読んでのんびりしてるわ」

「俺は、ギルドで昨日のグリーンウルフの解体を依頼してくるよ。そのまま帰りに少し街をぶらついてくる」

「……あっ。じゃあ私も今日は少し出かけてこようかな」

「なら一緒に来るか?」

「ごめんジェイド。今日は1人で行きたい所があるんだ」

「あれまー。フラれちゃったねジェイド君? ほーらシロシロお口あーんしなさい。あーんて」

「シャー」


 すっかり餌付けされてるな……。

 いやまぁ、カリナの作る料理は確かに旨いんだけどさ。


「1人で平気なのか?」

「心配しなくても、子供じゃないんだし平気だよ。ちゃんとフードも被ってくし」

「と、本人は言ってるんだが、付き合いの長いアーティアはどう思う?」


 何かの本を読みながら、ゆったりと朝食を楽しんでいたアーティアは、パタンと手にした本を閉じると、暫し思案した後に、


「そうねー……。シルビアが1人で行動してると、多分トラブルに巻き込まれるわね。亜人の独り歩きは危ないわよ?」


 という不安しか感じない答えをくれた。


「だよな。なぁ、やっぱり俺も一緒に行った方がいいんじゃないか? どうせギルドに行った後には暇になるし」

「そ、それでもジェイドとは今日は居たくないの!」


 しかしシルビアから帰って来たのは、予想外の拒絶の言葉。

 アレ? ひょっとして俺シルビアに嫌われた?

 心当たりが無いよ?

 急にこんな事言われて内心泣きそうなんだけど。


「……俺、何かしたか?」

「ジェイド君。謝るならさっさとした方がいいんじゃない? 一体何やらかしたの? 夜這いでもした? おねーさんに言ってみな? ね?」

「そんな事してねーよ! ああ、でも何か気に障る事をしたのなら謝るよシルビア」

「あ、ちが、別にジェイドが何かしたからとかじゃなくってね? 私が言いたいのは、その……今日は出来れば私1人が都合がいいかなって事で……」


 どうやら、このシルビアの様子からして、単に俺が嫌われてしまったという訳ではないようだ。

 それに関しては一安心か。

 だが、そうだとすると、1人で行動する事に拘ってるのは、何か事情があるんだろうか?

 出会って日が浅い俺が、それを根掘り葉掘り聞くのは失礼だよな……。


「はぁ……。ねぇ2人共? 私から提案があるんだけど?」

「……提案?」

「あっ。アーティアが一緒に行くって事?」

「いいえ。私じゃないわよ。その前に確認なんだけど、ジェイド君。マシロちゃんは、人間の言葉を理解できる程の知性ある魔物なのよね?」

「ん? ああ。かなり賢い子だから、意思の疎通は十分可能だ。当然、悪意をもって接したりしなければ、人間を無暗に襲ったりもしない」

「ありがとう。そこまで断言できるなら私も信じるわ。それじゃあ、改めて、マシロちゃん。少しお願いがあるんだけど」

「……シャ?」

「私の余りで悪いのだけど、残りの朝食は全部あげるわ。だから今日はシルビアに、付いて行ってあげないかしら?」


『んと……とーさま? 私、どうしたらいい?』


 じぃーと差し出された更に乗ってる料理を凝視し、涎を垂らしつつも、一応念話で俺の意見を聞きたいらしい。


『そうだな……シルビアが1人で行動するよりは、マシロが一緒の方がずっと安全だろう。それにマシロも偶には俺意外と行動するのも良い気晴らしになるだろうし。行ってくれるか?』

『私は別にとーさまと一緒ならそれだけでいいんだけど……。でもとーさまがそう言うなら……行ってもいいよ』

『じゃあ、悪いがシルビアの事、頼んだぞ? それと、食べてよし』

『うん。任せて! いただきます』


 返事と同時にアーティアが差し出した皿の料理に頭から突っ込んで、料理との戦いを再開しだす。

 しかし、朝からよく食べるねマシロは……。


「……フシャ! シャ!」

「うん。良いってさ」

「マシロちゃんが付いてくるの? んー……でもまぁ、マシロちゃんならいいか……」

「シロシロが行くなら私も!」

「店ほっといて、どこに行く気なのよあんたは!」

「……あの2人は朝から元気だよな」

「本当にね。それと、ごめんなさいねジェイド君。勝手にマシロちゃんを借りるような事をしてしまって」

「いや。多分これが無難な選択だったと思うよ。街中でシルビアが1人で行動していたら、誰かに狙われる可能性がある。そういう事だろ?」

「ええ。ライムダールでは、そういった事件は比較的少ないとは言っても、やっぱり亜人に対して良くない感情をもってる人間は、どこの国でも一定数存在してる物なのよね。亜人の冒険者達が、1人で行動してる所ってあんまり見ないでしょ? いつも仲間内で固まって行動してるのには、それ相応の理由があるものよ。こういう面倒も、明日の昇格試験を突破したら、多少は解決出来ると良いんだけどね」

「身分保証制度の事だな?」

「ええ。通るといいんだけど……。ああ、それと。この前はジェイド君がシルビアと一緒に行ってくれて助かったわ」

「ん? ああ、あのお使いの時だな? となると、シルビアに俺に声をかけるように言ったのは、やっぱりアーティアか」

「お互いに前の日の事を気にしすぎてたみたいだったからね。余計なお世話だったかしら?」

「いや。むしろ溝が出来る前に対処してくれて助かったよ」

「それなら、よかったわ。でも、お詫びとして今度錬金術を軽く教えてあげるわ。シルビアが話してくれたけど、興味があるんでしょ?」

「ああ、それは助かるな。是非頼むよ。それとついでに、魔法についても少しご教授願いたいね」

「魔法……? 貴方、魔法も使えたの?」

「いや、残念ながらまだ真面に使う事は出来ないよ。どうも素質自体はあるらしいんだが、生憎どうしたらいいのかさっぱりなんだ。前から専門の人に聞きたいと思っててさ。アーティアが良ければ、是非教わりたいんだが、どうかな?」

「ええ。いいわ。そういう事なら昇格試験が終わった時にでも、本格的に見てみましょうか。私もジェイド君の魔法の素質がどんな物か興味があるし」

「じゃあ、その時はよろしく。楽しみにしてるよ」 

「ええ。こちらこそ」


 そんん感じのやり取りをしつつ、俺は朝食を終えると予定通りにギルドへと向かった。

 ギルドの2階へ上り、そのまま買い取りカウンターの方へと進むと、いつもの受付のおっさんが俺に気付いたのか手招きしている。


「おう、ジェイドか。今回は何を持ってきた?」

「少し多めのグリーンウルフ。それとスピアディアを1頭ですね」

「ガロンの旦那は裏に居る。解体を頼むなら先に行って来い。もし買い取ってほしい物があるなら、帰りにでも見せてくれればいい」

「わかりました。じゃあ、失礼しますね」


 俺達はそのまま買い取りカウンター横の扉を抜けて、更に奥へ。

 扉を開くと、濃厚な血の臭いと錆びた鉄の臭いが鼻に突く。

 相変わらずこの場所は忙しいようで、今も数台の解体台の上で様々な魔物が、解体されている真っ最中の様だ。


「しかし相変わらず血の臭いが凄いなここは……」

「まぁ、お前たちとは違う意味で、血生臭い仕事場だからな」


 何気なく漏らした俺の独り言にそう返事返してきたのは、肩に馬鹿でかい鋸を担いで、全身返り血塗れの熊耳大男。

 このギルドで解体工房の長をやってるガロンさんだ。


「どうもガロンさん。仕事はいいんですか?」

「優先的に終わらせる奴は終わった所だ。残りは俺がやるより、他の弟子達にやらせて、少しでも経験の足しにしちまった方がいいさ。それより、ここに来たって事は何か解体を依頼したい物があるんだろ? 見てやる」

「助かります。今回はグリーンウルフの解体を頼みたいんですが。それとスピアディアですね」

「なんだ、緑魔狼か。それに槍鹿。ふむ。ポイズンクロウラーみたいなのを期待したんだがな」

「あんな大物早々相手にはしませんよ……」

「はっ。どうだかな? ポイズンクロウラーやリザードマンの傷を見た限りじゃ、まだまだ余力がありそうだったじゃねーか。まぁ、無い物は仕方ねぇな。先ずは実物を物全見てからだ。行くぞ」


 そのままガロンさんと並んでやって来たのは、以前俺がポイズンクロウラーの解体を依頼した場所だ。

 ガロンさんが顎でさっさと魔物を出せと訴えてくるので、俺は魔法の袋の中からグリーンウルフを取り出しては積み上げていく。


「おお。なかなかの数だな」

「グリーンウルフが全部で22匹。それと、最後にこのスピアディアが1頭。依頼したいのは、これで全部です」

「緑魔狼の数が多いな。大方槍鹿を狩りに行った時に群れに襲われたな?」

「その通りですね。運悪く森の中で囲まれてしまいまして……。今回は仲間がいてくれて助かりましたよ」

「ふむ。傷からして魔法と矢だな。それに切り傷。これはお前だな? どれも悪くない腕だな。……いい仲間を見つけたようだな?」

「ええ。頼りになります」

「大事にしろよ? いい仲間ってのは、見つけようとしてもなかなか見つからないもんだからな。それはそうと、そろそろ寒くなってくる時期だ。こいつらの毛皮も肉もいくらあっても困らねぇ。ギルドとしても買い手はすぐに見つかるだろう」

「解体には時間が掛かりそうですか?」

「この量だし、少しくれ。それでも終了まで2日って所だな。それ位経ったらまた訪ねて来るといい。素材はすべて売却でいいのか?」

「スピアディアの角だけは魔法薬の触媒に使うらしいので、それ以外を全て売却でお願いします。それと解体代金を」

「了解だ。代金は……そうだな……。緑魔狼は定期的に他の冒険者も狩ってくる物だし、新人に経験を積ませるいい機会だな……。それに全体的に傷が少ない物が多い。よし。銀貨2枚と銅貨50でどうだ?」


 正直解体の相場がよく分からないが、思ってたよりかなり安い。

 この数の魔物を解体してその素材が売れるとしたら、3分割してもお釣りが来そうだしそれでいいか。


「では、それで」

「おう確かに。任せとけ。それじゃあな」


 代金を確認したガロンさんは手を軽く振ると、グリーンウルフの解体作業へ入った。

 邪魔したら悪いし、俺も頭を軽く下げて工房を出る。

 とりあえず、これでギルドでの用事は終わりだ。

 残りは明日まで自由時間か。

 ……さて、何をしようか。


 暇つぶしに雑貨屋にでも行こうかな……。

 調理器具とかまだまだ欲しいものあるし。


 ……いや、待てよ。

 そう言えば、前にシルビアと買い物に行った時、マックロウさんの武器屋で武器の製作を依頼したな……。

 その時に3日後位にまた来るように言われてたが、今日がその3日目じゃなかったか?

 我ながら結構面倒な注文をした自覚があるので、本当に完成してるかは分からないが……。

 どうせ大した予定もないんだ。

 折角思い出したんだし、今から様子を見に行ってみるとしよう。



「こんにちわー。マックロウさん、いますか?」

「おう、来たな小僧。待ってたぞ」

「頼んでた物は出来上がりましたか?」

「大方はな。後は、少し調整が残ってる位だ。しかし、それはお前さんが居ないと出来ないんだ。というわけで今から作業に移るぞ。さっさと裏に来い」

「え? あ、ちょっと!?」


 言うや否や、マックロウさんは俺の手を掴むと、引きずる様に引っ張ってそのまま作業場へと連れて行く。

 流石ドワーフ。この体格差なのに掴まれてる腕がびくともしない。

 逆らうだけ時間と体力の無駄だと諦め俺は、なすがまま作業場へと連行されていった。 


 裏の作業場にやって来た途端、マックロウさんは早速とばかりに、壁に立掛けてあった短剣を数本取ると、そのうちの1つを俺へと手渡す。 

 受け取った短剣を軽く見てみるが、やや軽めではあるが、なんの変哲もない普通の短剣のように思える。

 特徴としては柄の部分に丸い窪みが空いている事位か。


「何ボケっとしてる? 先ずは魔力の通りを確認するぞ? さっさと魔力を込めろ」


 そう言われて、慌てて魔力を短剣へと注ぐ。

 込められた魔力によって、短剣の刃が淡い緑の光で輝く。

 おや? 魔造剣とは違う輝きだな。素材の関係だろうか?

 それを見てマックロウさんが一つ頷くと、短剣の柄の部分を指差して、


「問題ないみたいだな。それとお前さんが頼んだ魔石を嵌め込む部分はここだ。留め具の調整が残ってるんだが、魔石を実際に見ないと合わせられないからな。お前が来るのを待ってたんだよ」


 指差した柄の一部には、丸い窪みと留め具があり、そこに魔石を嵌め込む事が出来るようだ。

 そういう事ならと俺は、魔法の袋から魔石をいくつか取りだしマックロウさんへと手渡す。


「すいません。注文の時に魔石を渡しておくべきでしたね。うっかりしてました。これです」

「ふむ。……これくらいの大きさなら問題なさそうだな。それと言っておくが、魔石を込めただけじゃ、魔法剣にはならないからな? それは理解してるんだよな?」

「わかってますよ。魔法剣を作るとなると、武器の素材もそれに合わせないとだし、なにより、魔石を壊さないように術式を刻む事が不可能に近いんでしたよね? 確か。だから、例えダンジョンで術式が刻まれた魔石を運よく見つけられても、それに合わせた魔法武器を作るのは、かなりの手間とお金がかかり、現実的ではない。それに、何の術式が込められてるのかも分からない物を使ったりしたら、どんな事故が起こるか分からませんしね」

「そこまで分かってるのに、あえて俺にこんな依頼をしたって事は。当然この魔石に刻まれた術式が何か、それにどんな特徴があるのかを知ってるって事だな? 一体どんな魔法が刻まれてるんだ? このちっこいのには?」

「第5階級炎魔法の獄爆炎撃ヘル・バーストです」

「お前は、とんでもない物をそんな涼しい顔をして取り出すんじゃない! 暴発でもしたら儂の店が吹っ飛ぶどころの騒ぎじゃないんだぞ!」

「心配しなくても大丈夫ですよ。こいつは、発動するのにかなりの魔力を食いますし、ちょっとやそっとの魔力を流した所で誤爆の心配はありません。それに即時爆発ではなく、発動するまで約1分間かかりますし」

「随分扱いの難しい術式だな。こんな妙な魔石一体どこのダンジョンで見つけたんだ?」

「申し訳ありませんがそれは秘密です。この魔石は大量に魔力を食うのと、その発動時間の遅さによって取り回しが効きにくいので、このままでは死蔵してしまいそうな物でしたからね。それをどうにか有効利用出来ないかと考えてたんですよ」

「だからこんな妙な注文をしたんだな? 投擲武器というよりも、魔石の術式が発動するまでの間固定する為の物か……。成程。まぁ、俺も作った品が無駄にならないと分かって安心しだ。さて……じゃあさっさと仕上げちまうか。先ずは魔石が簡単に外れないように、留め金を調整してっと……」


 カチャカチャと留め金の部分をいじりつつ、短剣の留め具を細かく調整するマックロウさん。

 その作業が終わるのをしばし待っていると、不意に俺に手直しした短剣を渡してきた。

 どうやら調整とやらは済んだようだ。

 受け取った短剣を改めて見てみると、柄にはしっかりと固定された赤の魔石。

 試に軽く魔力を流して淡く輝くのを確認してから、マックロウさんに向き直る。


「いい感じです。軽いですし、魔力の通りも凄く良い」

「おう。後は、刃の仕掛けについて説明するぞ。使い捨て前提でもいいので、一度刺さったら簡単には抜けない物を……。だったよな? その注文通りにするために、俺はこの短剣にある細工をしててな。これは実際に見せたほうが早い。そら。こいつを使え。この的に向かって投げてみろ。魔力は通さなくていい」


 そう言って、もう一本同じようなデザインの短剣を寄越して、工房の奥に設置されている木で作られた1体の人形を指差す。おそらくアレは試し切り用の物なのだろう。

 俺は言われるがまま、受け取った短剣を、その人形へ投擲。


 ひゅっと小さな音を立て、真っ直ぐに飛んだ短剣が人形の頭部へと突き刺さる。


「ほぉ。なかなか見事なもんだな」

「ありがとうございます。それで、仕掛けっていうのは? 投げた限り普通の短剣と変わらないように感じたんですけど」

「それを今から説明するんだよ。いいから、試に今刺さった短剣を抜いてみろ?」

「はぁ……?」


 今度は抜くのか、何なんだ一体?

 そう疑問に思いつつ、人形に突き刺さった短剣を掴んで引き抜こうとすると……。


「おれ……抜けない……?」


 その短剣がまったく抜ける気配が無い事に驚いた。

 そんなに力を入れて投げたつもりは無かったのだが?

 疑問に思いつつも、更に力を入れて引き抜こうとすると、人形からミシミシと嫌な音をが聞こえてきたので、一旦止める。

 これはがマックロウさんが言ってた仕掛けって奴の成果だろうか?


「驚きました。本当に引き抜けないですね……。何故こんな事になってるんですか?」

「この刃の仕掛けを作るのに、試作品を数本作ったからそれで説明するぞ。まぁ、先ずは手にとってよく見てみろ。刃のこの部分だ」


 そう言われ、受け取った短剣の刀身をよく見ると、小さな穴がいくつか空いている事に気が付いた。

 一瞬不良品かなと思ったが、ドワーフの職人であるマックロウさんがそんな物を俺に渡すわけがない。

 ならば、この小さな穴は、意図的に空けたって事か? しかし、これが一体どうやったらあんな現象を引き起こすんだ?


「秘密はこの小さな穴……って事ですか?」

「正確には、この穴の中に仕込んである物だな。この短剣は突き刺さった時に、中に仕込んである鉤爪のように歪曲した針が勢い良く飛び出すようになっててな。その針が内側から突き刺さる事でかえしの役割を果たすんだ。なので、一度刺さるとこの短剣は簡単に抜けねぇ。拷問器具やダンジョンの罠なんかに、よく使われる細工だ。昔、俺が冒険者だった時代に潜ったダンジョンの罠を参考に作ってみた。まぁ、正直、こんな仕掛けを投擲用の物に使うと、再利用が出来なくなるので勿体ないんだがな……。それでもお前さんの要望通りの物を作るとしたらこの仕掛けが一番だと思った。不満はあるか?」

「いえ。注文通りに作ってもらって感謝してます」

「そうか。俺はこういった仕掛け武器はあまり得意じゃないからよ……。もしも、これ以上の物を希望されたら正直お手上げだった。手間と素材の問題で、費用は通常の短剣よりかなり高くなるが……大丈夫か?」

「想像通りの物に仕上がってますし問題ないですよ。残りは何本あります?」

「そうだな。とりあえず今渡せるとしたら、5本って所だな。値段は1本銀貨20枚だ。まぁ、正直投擲武器の値段としてはかなり高いと思うが……。しかし、材料的にこれ位の値段は仕方ないんだ」

「確かに、思ったよりもかなり高いですね」

「ああ。俺も作ってるうちに熱が入りすぎちっまた。もう少し素材を削っても良かったんだが、どうも凝り性が出ていけねえ。この値段だとDランクのお前さんには、ちと厳しいだろう? だから今日無理に全部持って帰らなくてもいいぞ。買える分だけ買ってくれたら、次に家に来た時に足りない分を払ってくれ。そしたら残りをまた渡す事にしようと思ってる。どうだ?」

「いえ。お気持ちは嬉しいんですが、持ち合わせで足りますので。5本全部引き取りますよ。ほら。この通り。金貨1枚です」

「……まさか本当に全部買い取っちまうとはな……。俺としては嬉しいんだが」

「正直予算ギリギリでしたけどね。それでも要望通りの物が手に入ったんですし、俺としては満足してますよ」


 金貨1枚と爆破の魔石を4つ取り出し、マックロウさんに手渡すと、残り4本の短剣にも魔石を装着してもらう。

 とりあえずこの短剣は、分かり易く爆破短剣とでも呼ぼう。

 立川曰く失敗作らしい爆破の魔石をどうにか再利用できないかと俺なりに考えた結果生まれた武器だ。

 威力はスカルウォーリアーにて実証済み。

 それを、この仕掛けが施された刃を投擲で使う事で、強力な魔物に対して切り札になりえるかもしれない。

 問題は数をそろえるのが難しい事だがな。

 値段もどうしても高くなってしまうのも仕方ないとはいえ、厳しい。

 なので、爆破短剣は本当に強敵と戦う時のみ使用するとするか。

 それに、これを使わざるを得ないような相手が、Cランクの昇格試験で出るなんて事は無いだろうからな。

 精々、この先まだ見ぬ強敵に備えての保険として大事に魔法の袋の中で眠らせておくとしよう。

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