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スケルトンの冒険者 異世界生活記 ~人化の術で冒険者やってます~  作者: 肉巻きおにぎり
3章 スケルトンの冒険者(Dランク)
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42 未知の魔物

 進化時に予想外の自体が起こった事によって、死霊迷宮で一晩明かす事になってしまった俺達だったが、なんとかこうして無事にライムダールへと戻ってこられた。

 とりあえず、俺が動けない間飲まず食わずで頑張って護衛をしてくれていたマシロへ、彼女のリクエストであった屋台の串焼きを腹一杯になるまで食べさせてから、その足でギルドへとやって来た。

 帰りに出会った冒険者達の様子からしても、暗魔の森方面にて、何かがあったのは間違いない。

 恐らくギルドに行けば、そういった話も聞けるだろうと考えたからだ。

 ついでに、スカルウォーリアーから剥ぎ取った魔石なんかの買い取りもお願いしたいし丁度良い。


 古びた木の扉を開き、中へ入ると、1階の酒場はいつも通りの喝采である。

 たが、この日は珍しい事に、2階にも何組も冒険者と思われるグループが集まっていた。


 時刻は夕方を過ぎたあたり。

 普段のこの時間は、報告を終えた冒険者が下の酒場や色町方面へと繰り出しているので、ギルドの2階に人がこうして集まってるのはかなり珍しい事だ。

 やはり、これは何かあったと見るべきだろうな……。


 早速ルミナに何があったのかを聞きたいのだが、その彼女は現在受付嬢としての仕事で、別の冒険者達との会話中のようだ。

 ルミナ以外の受付嬢の所にも、何人かの人間が話し合ってる姿を見るに、皆依頼を受けてるんだろうか?

 

 別に急いでいる訳ではないし、彼女の仕事の邪魔をするのも悪い。

 なら今話している内容が終わるまで暇なので、先に魔石の買い取りをお願いするとするか。

 買い取りのカウンターは、もう既に清算を済ませた冒険者ばかりのようで、かなりがらんとした感じだ。

 依頼受注のカウンターに比べて人が少ないため、少し暇そうな雰囲気の強面のおっさん。

 こっちのカウンターにも美人の受付嬢さんをいれてやれよと思うんだが、魔物の素材を扱う関係上、素材に着いた血や臓物に触る事も多く、制服も汚れやすいために、女性はやりたがらないらしい。

 給金は良いって話なんだが、なかなか応募してくれる人もいないとの事だ。

 


「おう。坊主か。どうした? また大毒蜘蛛でも仕留めてきたのか?」

「いやいや。昨日の今日じゃないですか。あんなのそんな頻繁に狩っては来れませんって……。今日はこれの買い取りをお願いしたいんです」


 そう言い、魔法の袋から取り出した魔石を全ておっさんに渡す。


「おう、今回は魔石か。どれどれ……む? このデカいのは闇魔石か……。純度もなかなか高いな……。どこで手に入れたんだこれは?」

「昨日死霊迷宮で。ルームガーダーと遭遇して、そいつからの戦利品ですよ」

「ルームガーダーだと? ……よく出会えたな。いやそれ以前に、よく生き残ったと言うべきか……」


 おっさんは驚きつつも、渡された魔石を鑑定し、価格の審査をしてくれる。


「やはり、いい魔石だ。よくもまぁ、こんな綺麗な状態で取り出せたもんだな。少しヒビが入ってはいるが、これなら全部まとめて、金貨5枚って所だな」

「そんなに?」

「ああ。なにせ属性付きでこの大きさだからな。色々買い手もあだろうし、傷も少ないし、こっちとしても文句はない。惜しいのは、闇属性って事だけだ。これが火や水、雷とかだったら10倍はするかもしれないぞ? なにせ、その3属性で作った武器は見た目的にも派手だからな。見栄を張りたい貴族連中が、こぞって買ってくれるんだよ」


 魔石は、魔法や錬金術の触媒に使ったり、武器防具の精製素材に使う等と様々な使い方が可能な素材だ。

 特に武器に使った場合、その作られた武器は、魔法の力が込められた物になり、冒険者をはじめ、貴族等からも需要が高い。

 魔法の力が宿ると言っても、エンチャントみたいな強力な代物ではないがな。

 ただ、それでも通常の武器よりは切れ味もよく丈夫で、その属性が苦手な魔物に有効な事には変わらないので、馬鹿には出来ない。


 当然、魔石の大きさや純度によって作られた物の品質も左右される為、純度が高く傷が少ない物は、特に高値で買い取ってもらえる。

 クズ同然の魔石も、砕いて粉末にすることによって、ポーション等の材料や、魔力の少ない物でも魔道具を動かす為の燃料にする事だって出来る。

 ギルドとしても優先的に仕入れたい素材だろう。


 当然俺は、そのまま魔石の買い取りをお願いし、金貨を受け取る。

 

 しかし、予想よりも高く売れたな。

 やっぱり強力な魔物の魔石や素材程、良い値段で売れるようだな。

 今後も強敵と戦った後は、可能な限り素材と魔石の回収をしないとな。


 魔石の買い取りも無事に終わったところで、視線をルミナの方へ向けると、どうやら向こうも会話が終わったようだ。

 俺はおっさんに礼を言うと、ルミナの方へと向かう。



「こんにちわ。ルミナさん」

「ジェイド君!? 無事だったのね」

「……なんかありました? ギルドもこの時間にしては随分人が多いみたいですけど……」

「ええ、ちょっと……。どうやら死霊迷宮で少し厄介な魔物が出た可能性があるとの知らせが、今朝暗魔の森の主張所から連絡が来まして……。昼頃からはギルドも正式に調査依頼を発行し、今も調査依頼をお願いしたい冒険者に職員が連絡をしては逐一説明をしている段階ですね」


 この時間にこんなに冒険者が居るのは、ギルドからの呼び出しを食らったからなのか。

 なら帰りに遭遇した冒険者たちは、既に早い時間に、この調査依頼とやらを受けていた人達だったのかな……。


「ちょうどジェイド君と昨日死霊迷宮に行くって話をしていたから、私心配してたんですよ? でも、こうして無事に帰ってきてくれてよかったですけど」

「心配してくれてありがとうございます。 それで、その現れた魔物ってどんな奴なんです? 特徴とかわかります?」


 死霊迷宮にそんな厄介な魔物が出てたとはな。

 俺の生命探知に引っかかってないのを考えると、もっと下の階層にいたか、それとも入れ違いになったか……。

 戦った中で厄介な魔物ってのも、しいて言うならば、あのスカルウォーリアー位だが……。

 あいつはルームガーダーではあるが、調査依頼が出る程の魔物ではないよな。


「特徴としてはスケルトン系の魔物で、短剣を使うらしいです。それと下級アンデッドとは思えない位に機敏で動くとも。外見は黒いスケルトンという話ですね」


 素早く動き、短剣を使って戦う黒いスケルトンか……。

 ……どっかで聞いたような特徴だな。

 いやいや。まだ断定は出来ないよな。


「確かに危険な存在みたいですけど、ダンジョン産の魔物なら外に出て来ないんだし、そこまで危険視しなくてもいいのでは?」

「今回その魔物が目撃された場所は、比較的浅い階層である5階層です。こんな浅い場所にそんな強力なアンデッドが発生したケースは今まで確認されてません。そして、一番重要な事は、本来は味方であるはずの他のアンデッドと、争った形跡が確認されている事です」

「……つまり?」

「ダンジョン内の魔物は、同士討ちをしません。ダンジョンマスターに生み出され管理されている、侵入者を排除するための防衛装置のようなものですから。つまり、他のアンデッドと戦ったその魔物は、ダンジョン産では無いく外からやってきたという事になります。ギルドとしては、それが何処から侵入してきたのか、また目的は何だったのかを現在調査すると共に、その魔物の行方を探している段階です」

「……大変ですね」

「ええ……。こういう突発的な事件は本当に困ります。お蔭で今日は帰れそうにありませんし。まだまだ手続きとか今回の事での報告書等も、山と残ってますし……頭が痛いですよ」


 5階層に突如出現した、素早く動き回り、短剣で戦う黒いスケルトンの魔物。

 そう言えば俺、確か5階層のモンスターハウスで、新人2人組を助けるために、結構暴れ回ったような……。

 

 いや、きっとこれは俺の事じゃなくって、こう、リッチみたいな上位種がね。偶然上の階層に上がってきたとかで……。

 ってそうだ迷宮産の魔物じゃないって言われてたんだわ。

 いやでも、ほら。まだ俺の事だと決まったわけでは……。


「この話を最初に持ってきたのが、新人冒険者の2人組みらしいんですけど……。なんでも5階層でモンスターハウスに遭遇しちゃったらしくって……。それで大量のアンデッドに囲まれて絶体絶命かと諦めた時に、その問題のアンデッドがその現場に乱入してきたらしく、かなり派手に暴れたそうです。その報告を聞いて、主張所の職員が何名かと比較的新人でも戦闘力が高い方達が一緒になって死霊迷宮へと入り、真偽の程を確かめたそうなんですよ。そしたら、夥しい程のアンデッド達が、モンスターハウスと思われる大部屋に散乱している現場を目撃したらしく……。こうしてライムダールのギルドに、伝書鳩が飛んできたんです」

『…………』


 確定。

 その話題になってる魔物って完全に俺だわ。

 

 うん。もう諦めて受け入れるから、マシロ。そんな目で見ないでくれ。


 分かってたよ! タイミング的に嫌な予感してたんだよ!


 とりあえず、今聞いた話を元に、この騒動の流れを整理しよてみよう。

 

 まずスカルウォーカーとしか思えないこの魔物の特徴を報告したのは、俺が助けた2人組だ。

 あの時は他に目撃者なんかいなかったはずだし、ルミナの話を聞く限り間違いないだろう……。

 門番辺りに話して、出張所の職員達と共に死霊迷宮の内部を確認したんだろう。

 5階層までの道中は敵をほぼ倒してたし、モンスターハウスの内部も倒したアンデッドが山と散らばってただろうからな……。


 しかし、ある程度の騒ぎは覚悟してたけど、ここまで過剰な反応になるとは思ってもみなかったな……。

 まぁ、死霊迷宮で戦ったアンデッドはそこまで素早くなかったし、一番素早いリビングデッドも動き自他は単調だ。

 しっかり意識して戦えば、冒険者なら十分対応は可能な範囲だろう。


 だが、俺の場合は、スキルもステータスも普通のアンデッドとは大違いだ。

 しかも体はアンデッドでも、その精神は生前の人間のまま。

 当然その戦闘はただ突っ込むだけの下級アンデッドとは常軌を逸する。

 人間と同じように思考し、相手に合わせて戦い方を変えるんだから、差が出るのも当たり前だ。

 モンスターハウスでの戦闘では、特にその差がはっきりと出ていたと思うし、俺の姿はかなり目立ったことだろう。


 そんな様子を、あの2人が説明したらどう思われるか。

 最初は、何を馬鹿な事をと信じられないだろう。

 でも、実際にその場所に行ってみると、そこには大量のアンデッド達が転がっている。

 当然、この現実をみた職員は、2人の話が事実だったと思うだろう。

 そして出張所の職員は、こんな時の為の出張所に用意されている伝書鳩で、ライムダールのギルドへと報告した。 

 報告を受けたギルドもそんな明らかに普通ではないとアンデッドが出現したとなると、当然その目的や侵入ルートを探す必要が出る。

 それが今のこの騒ぎに発展してしまったと。


 うん。完全に俺の配慮が足りなかった。

 せめてあの2人組が逃げ切るまでは、演技でも苦戦してる風を装った方が良かったかもしれないな……。

 まぁ、もう終わってしまった事をどうこう言っても仕方ないんだけどさ……。


「そういった理由もあって、現在一部の冒険者の方達に、ギルドから緊急依頼として、死霊迷宮内部の調査をお願いしているんです。申し訳ありませんが、調査が終わるまでの間はCランク以下の方には、死霊迷宮への出入り禁止とさせていただいており、その間は通常の依頼をこなしていただくようお願いしております。まぁ、Cランクの方はそもそも死霊迷宮に挑まないですし、紅蜥蜴の迷宮がありますから反対意見もなかったんですけどね。Dランク以下の方達は、少なくない人数が死霊迷宮で腕を磨きつつ、魔物から魔石を集めて生計を立ててましたから……少ししぶられました。ジェイド君も折角ダンジョンに潜り始めたばかりで申し訳ないんですけど、事情が事情ですので……ご理解していただけましたか?」


「ええ。わかりました」


 これについては、原因を作ったのがそもそも俺なんだし、何も言えないな……。

 むしろ、今まで細々と死霊迷宮の魔石稼ぎで頑張って人達には、なんかもう本当に申し訳ありませんって気分だ。

 まぁ、それでも、俺はあそこであの2人組を助ける選択肢を選んだことに、後悔はしてないけどな。

 多少ごたついたとしても、問題になってる魔物は、今ここにいるのだ。


 調査依頼を受けた冒険者が、いくら死霊迷宮を調べた所で騒動の魔物が見つかる訳もない。

 時間が経てば、もう死霊迷宮には居ないだろうという結論になり、閉鎖も解かれるだろう。

 しばしの時間だが、その間はせいぜい薬草取りでもして生活費を稼いでくれ。


「じゃあ俺はこれで。色々ありがとうございました」

「あっ、待って待ってジェイド君」

「はい?」

「ジェイド君にはもう一つ。伝えなければならない事があります」


 そう言ったルミナが真剣な表情をしている。


 俺に伝えなければならない事?

 なんだろうか。

 他に何かやらかしたか俺……?


「実はジェイド君への昇格試験許可が降りました。それについて、ギルドマスターからお話があるとの事です」


 昇格試験か……。

 かなり早くないか?

 それにギルドマスターからわざわざ話ってのも気になるな。

 なんか、面倒事の気配がするんだが。

 これ、断っちゃダメなんだろうな……。

 とりあえず話だけでも聞いてみるか。

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