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スケルトンの冒険者 異世界生活記 ~人化の術で冒険者やってます~  作者: 肉巻きおにぎり
3章 スケルトンの冒険者(Dランク)
33/60

31 ライムダールへの帰還

お待たせしました……。

7/7 マシロとの念話の()を『』に変更。

7/8 誤字修正及び加執修正。

「アーティア。前方にゴブリン6匹。

 正面に4匹で左右の草叢の中に伏兵が1匹づつ。

 正面の4匹は俺とマシロがやるからアーティアは左右の2匹を頼む。

 シルビアは待機」


『ん。わかったとーさま』


「任せて。この草原で炎は拙そうだから、ここは土かしらね……」


「うー……私も戦いたいっ!」


「代わりの弓も無いんだから大人しくしててくれよ」


 シルビア達とライムダールへ歩く事2時間。

 もう何度目かの会敵か忘れたが、再びゴブリンが襲ってきた。 

 ライムダールまでもう少しのところまで来たのだが、ゴブリンやコボルトは繁殖力が高い魔物のせいか、こうした街の近くでも普通に現れるようだ。

 こいつらの素材は、数が多い魔物の為に魔石だけが買い取り対象で価格も安い。

 その魔石も砕いて安いポーション等に使う位だからわざわざ剥ぎ取る理由が無い。

 一応討伐依頼があったから耳を剥ぎ取ってギルドに提出すれば多少の銅貨を貰えたはずだが、今は依頼の報告期限も迫ってるのでやはり倒しても剥ぎ取りは無しだ。 

 


 既に生命探知とマシロの索敵により、前方にいるのが分かっていたので、アーティアにゴブリン達の位置を伝えて俺は魔闘法を軽めに発動すると、魔法剣ではなく敢えて普通の鉄の剣を装備して突撃する。

 アーティアが呪文を唱え始め、マシロは俺の後を追うように空中を駆ける。

 待機を命じられたシルビアは不満そうに頬を膨らませて抗議してくるが、弓を失っている今のシルビアでは仕方ない事だ。


 弓と言えば、俺には立川がくれた魔法弓が一応有るのだが、流石にさっき出会ったばかりの相手に渡すわけにはいかないだろう。

 シルビア達とはライムダールの街までという短い間の付き合いだ。

 俺が魔法の品を複数所持しているのがバレると面倒な輩に目を付けられると思い、シルビア達には俺が普段は剣とマシロとの連携で戦っていると伝えている。

 別にシルビア達を信用してないわけではないが、何処から俺の情報が漏れるか分からないので極力手札を隠したい。

 今は人化を維持しないといけないから、魔力も無駄に使えないしな。

 実際今も魔力が尽きないように、定期的に魔法の袋から干し肉や林檎を取り出して摘んでいるのだ。

 行きと違い歩きで帰る為、時間がかかるから仕方ない。

 途中で人化の術が切れてしまっては困るしな。

 

 尚シルビアには、「ジェイドって痩せてる割に食いしん坊なんだね」 とか言われて笑われたが、他に言い訳もなさそうだったのでそう言う事にしておいた。

 

 両足に魔闘法を使って魔力を集め、地を蹴るごとに速度を上げていく。

 だがオーラを発現はさせない。

 今は魔力の節約と俺の所持スキルを隠す為に、魔闘法も一定以上魔力を込めないようにしている。

 ゴブリンやコボルト程度の相手ならこれで十分すぎる。 

 右手に構えた剣をそのまま正面から迫ってくるゴブリン達の首を狙い一刀の元に切り捨てた。

 2匹のゴブリンは首を撥ねられどさりと倒れる。

 剣術の補正が乗ってるとはいえ最早戦闘とは呼べないな。

 流石にLv差があり過ぎるようだ。


 残りの2匹が俺目掛けて即座に突っ込んでくるが、マシロが素早く火球のブレスを吐きだし、1匹の顔面に着弾すると爆発して顔の半分を吹き飛ばす。

 奇声を上げて突撃してきた最後の1匹も、素早く迎撃に繰り出したマシロの尻尾に首を撥ねられて静かになった。

 刃鱗強化のスキルだな。

 噛みつき主体だったマシロもウィング・ドラペントへと進化した今では尻尾とブレスがメイン攻撃になった事で対処できる敵もかなり増えたようだな。

 今後も頼りにさせてもらおう。


土槍アース・ランス


 一方アーティアの方も、左右から飛び出してきたゴブリンへ魔法を使い難なく屠っている。

 ゴブリンの足元の地面から土で出来た槍が突出し、ゴブリンを串刺しにする。

 使ってる魔法は第2階級土魔法の土槍アース・ランスか。

 アーティアは魔力をそこそこ消耗してるって話だったが、ゴブリン程度ならまだまだ余裕がありそうに見える。

 案外俺が居なくてもアーティアだけで平気だったかもしれないな。

 まぁここまで来たら今更か。


「二人ともお疲れ様。

 しかしジェイドとマシロちゃん速いねー。

 やっぱり今のもスキルなの?」


「ああ。身体能力強化系だな。

 それ以外の情報は悪いけど秘密だ」


「そうね。スキルは冒険者にとっては生命線だもの。それを他人に隠すのは冒険者としたら基本の事よね。

 シルビアもあんまりそういう事聞いちゃだめよ?」


「ちぇっ。二人とも固いんだからもー……」



 その後もシルビアを庇いながら、俺達は襲い来るゴブリンやコボルト達を蹴散らしつつ、無事にライムダールへとたどり着いた。

 予定だと夕方位には到着だと思ったが、思ったよりも時間を使ってしまったようで、ライムダールへ入った時はすっかり暗くなってしまっていた。


「はぁー。やっと着いたー」


 歩き疲れたのかシルビアがそんな声を上げて喜びを表現しているのが目に入る。

 ちなみに彼女は現在すっぽりとフードを頭から被ってその耳を隠している。

 シルビアは街に滞在する時は常にこの姿らしい。

 やっぱ人種差別がある世界でのエルフって色々大変なんだな。


「思ったより時間がかかったが、ギルドって夜でも空いてるかな……。俺の依頼って今日までなんだけど」


「それなら大丈夫よ。ギルドが閉まるのはもっと遅い時間だから。

 今なら報告もまだ間に合うと思うわ。

 でもあんまり遅くなっちゃうと、夕飯を食べ損ねたシルビアが拗ねちゃうから少し急ぎましょうか」


「私は子供か! ってまってまってー!」


 騒がしいシルビアを連れて俺達は冒険者ギルドへ戻る。

 1階の酒場はかなりの賑わいを見せていたが、2階には冒険者が1人もいない。

 皆仕事を報告し1階で飲んでいるのだろう。

 だが人が少ないほうが色々都合がいいな。

 今後は報告する時はなるべく夜を選ぼうと決めた。


 受付のカウンターで書類整理をしているルミナを見つけたので、先ずは無事に帰って来たと伝えるか。

 依頼を受ける時もかなり心配させてしまったからな。

 彼女も俺が近寄ってきたのに気付いたようで、書類を端にどかして営業スマイルと共に迎えてくれた。


「あら。ジェイド君。

 お早いお帰りね?」


 だが、どことなくその笑顔が少し意地悪っぽく感じるのは気のせいだろうか?


「ええ。今戻りましたルミナさん」


「とりあえず無事に帰ってきてくれてよかったわ。

 でも、もうあんまり無謀な依頼は止めてほしいかな?

 冒険者は自分に合った仕事をやるのが、稼ぐ一番の近道なんですから。

 ジェイド君も今回ので少しは懲りたんじゃない? 依頼キャンセルの料金は今回に限っては半額でいいから日付が変わる前に手続きをやっちゃいましょうか」


 ……ん? キャンセル?

 これって俺が依頼を達成出来ずにそのまま帰ってきたとか思われてるんじゃ……。


「えっと。一応依頼のポイズンクロウラーは無事に仕留めてきました。

 他にも道中で仕留めた魔物も入ってるので、一度解体担当の方に確認してもらってもいいですか?」


「……え? う、嘘? まさか本当に一人で終わらせて来たの!?

 しかもこんな短時間で!?」

 

 俺の答えを聞いたルミナが一変して慌てるから後ろの他のギルド員たちが何事かと見てくる。

 ルミナに注意をしたら、彼女は慌てて咳払いを一つして詳細を聞いてくる。


「あ、えっと、ごめんなさい。

 で、でも本当に?

 熟練の冒険者でも手を焼きそうな依頼だったのよこれ?」


「疑う気持ちもわかりますが、中身を確認してもらえばわかりますから」


「そ、そうよね。ジェイド君の眼嘘をついてるようにも見えないし……。

 とりあえず私も確認したいから一緒に奥の工房に行きましょう」


「ねぇ? 私達も行ってもいいかしら?」


「うん。ジェイドがどんな魔物狩ってるのか興味あるもんね」


「俺は構わないけど……。ルミナさんいいですか?」


「ええ。ジェイド君が良ければ私も大丈夫よ。

 じゃあ着いて来て? 工房はあっちの扉の先だから」


 魔物の解体はてっきり外にある倉庫等でやると思っていたのだが、どうやらこのギルドは2階の奥に解体の為の部屋を用意しているらしい。

 ルミナに案内されたのは、前に見たあの強面のおっさんの居たカウンターの隣だった。

 カウンター横の扉を開けて入ると、そこはかなり広めの部屋だ。

 解体部屋だから当然、辺りには濃厚な血の臭いが漂っており、あんまり長居したい場合とは呼べないな。

 部屋の内部では、数人の厳つい男達が各々、解体台に乗せられた魔物の死骸を解体して素材や魔石を取り出してるのが見える。


「今担当の人を呼びますから待っててください。

 ガロンさーん!」


「なんだルミナ……。

 俺達はそろそろ上がりだぞ? 新しい解体の依頼なら明日にしてくれないか?」


 ルミナの声に応えて、こちらに進み出てくる男はなんとライムダール初日に、屋台通り前で見たあの熊耳を生やしたおっさんだった。

 見た目からてっきり冒険者だと思ってたが解体職人だったようだ。


「申し訳ないんですが、この子が例の依頼を達成したらしいので確認をしてほしくて……」


「なに……?

 ていうとあの依頼か? こんな小僧がやったってのか?」


 ルミナに事情を聴いた熊耳のおっさん改めガロンさんはじろっとした感じで俺を見てくる。

 半信半疑って感じだな。

 あの蜘蛛を仕留めたのは事実なんだし、魔法の袋の中を見せたら納得してくれるだろう。


「この中を見て貰えればわかります」


「……いいだろう。

 こっちに来い。奥の解体台が空いているからそっちでやる。

 もし本当にポイズンクロウラーを仕留めたなら魔石や糸線が無事か確認したいからな」


 ガロンさんに連れられて奥の大き目の解体台に案内され、言われるままに俺はオキシア湿原で仕留めた魔物達を魔法の袋から取り出して順番に並べていく。



「すげーな……この数を1人でか……」


「あれってリザードマンだろ? 魔法も使わずどうやって仕留めたんだ?」


「オキシア湿原の魔物なんて取りに行く奴いたんだな……」


 何故か途中から他の作業員達も俺が出した魔物に視線が釘付けで作業が止まってるが、定時が近いような事を言っていたが大丈夫なのだろうか?

 

「うわっ……。

 本当にポイズンクロウラーを1人で討伐しちゃったんですか。

 あーこれなんて報告しよ……絶対ギルマスに色々追及される……」


「ジェイドって本当に私達と同じDランクなの……?」


「驚いたわね……傷を見たところ魔法を使った形跡がない……

 この蜘蛛を接近戦で仕留めるなんて……」


最後に問題のポイズンクロウラーを取り出して見せたら皆こんな反応だ。


「こいつは驚いた……まさか本当だったとはな……。

 しかも腹に損傷もなく最低限の傷のみか。

 効率的ではあるが、よく毒牙のある頭部を狙う気になったな……。

 普通は安全を考えて腹を狙うぞ?」


「まぁ、ちょっと特殊な方法を使いましたから。

 それで問題はありませんか?」


 正直に毒牙ごと殴りましたなんて言えないしな……。


「ああ。これなら魔石や糸線も無事だろう。毒線だって使えそうだが、惜しいのは牙が一本欠けてる位だな。

 だが、これだけ綺麗な状態なら些細な問題だ。

 コイツからの素材なら良い値段で売れるだろう。ギルドマスターの奴が喜びそうだ」


「この魔物は解体後に素材をまとめて買い取ってもらえるって話でしたが、大丈夫ですか?」


「ああ、問題ない。どれも今ギルドで不足している素材ばかりだからな。だが悪いが今日は流石に無理だ。

 今から作業を始めるから明日には終わると思うぞ。

 しかし……これは今日は帰れねーな。

 明日の夜にでもまた来い。全部バラして素材の状態を確認し終えたら代金を渡すからよ。

 おうお前ら! 今日は徹夜だ! こんな珍しい魔物の解体が出来るんだからまさか定時で帰ろうなんて馬鹿はいねーよな?」


「「「も、もちろんです親方っ!!」」」


 ガロンさんが他の職員にそう告げると反射的に全員がびしっと敬礼して泣きながら答えていた。

 ブラック企業だ……。


「なんか、すいません」


「なーに気にすんな。

 坊主のお蔭で久しぶりに遣り甲斐がある仕事が出来そうだ。

 こいつらにとってもいい修行になる。むしろこっちが感謝したいくらいだぜ」


「では解体の方をお願いします。

 あ。あとこのホーングリズリーは俺じゃなくってシルビア達の依頼の奴です」


「ああわかった。この角熊は別にしとけばいいんだな?

 ちと傷は多いが、こいつの肉や毛皮は需要が高いしすぐ買い手も見つかるだろう。任せな」


 最後にガロンさんは俺の肩を叩いて厳つい笑顔を浮かべながら、また珍しい魔物を狩って来たら優先的に受けてやる。と言って解体道具を取りに行った。

 今後も冒険者として活動するならお世話になるだろうし、気に入って貰えたようで良かったと思おう。


「とりあえず確認も終わりましたし、ジェイド君の依頼達成の手続きをしましょうか。

 シルビア達も一緒に済ませるから着いて来て?」




 その後は無事に依頼達成の報酬をギルドから受け取り其々の宿へ帰ることになった。

 シルビア達とギルド前で別れた俺も現在屋台通りを歩きながら串焼きを購入してマシロと共に齧り白翼亭に向かっている。

 マシロは俺達がギルドに報告する間は退屈で首に巻き付いたまま眠っていたのだが、シルビア達と別れて屋台通りに入った途端に目覚めていた。

 どうやら屋台から漂う肉や魚の焼ける匂いに釣られたようだ。

 宿に帰ったら夕飯だと言ったが我慢できないみたいだったので、しょうがなく数本だけという条件で買ってあげた。

 今回の依頼が成功したのもマシロが居たからだしな。

 それでもあまり甘やかすのも良くないので2本だけにとどめているが。


『とーさま……。お肉がもっと食べたい……』


『帰ったらカリナに頼んで夕飯作ってもらうからそれまで我慢しろ』


『はーい……』


 前世で祭りの時に親戚の子供を遊びに連れて行った時を思い出すな。

 あの時もこんな感じでぐぜる子供をあやしながら帰ったっけ。

 まさか異世界に来てまで同じ事をするとは思わなかったわ。



「ただいまカリナ」


「あ。ジェイド君おかえりー。シロシロもお帰り。

 あれ? なんかシロシロの姿がちょっと変わってない?」


 白翼亭に帰った俺を女将のカリナが出迎えてくれたが、どうやらマシロの姿の変化に気づいたようだ。


「ああ。今回の依頼中に進化したんだよ。

 そのまま急いでライムダールまで帰ってきたから腹減ってるみたいなんだ。悪いけどこのまま夕飯頼んでいい?」


「おお! おめでとシロシロ。

 それと夕飯ねー。実はさっき君以外のお客さんの2人も帰って来たから今から作るところなんだよ。

 ちょうどいいタイミングだったね。場所は食堂でいい? 多分そこまで待たせないから」


「いいよ。あとマシロの方は少し肉多めにしてやってくれ」


「はいはい任せてー」


『肉っ! ご飯ーご飯ー♪』


 肉増しと聞いたマシロはかなりご機嫌の様だ。

 そんなマシロを軽く撫でてやりながら食堂に入ると意外な人物たちが居た。 


「あれ? ジェイド何してるのこんな所で?」


「え? シルビア? アーティアも?」


「あら。また会ったわねジェイド君。

 私達が依頼を受けてる間に新しく入ったお客ってあなたの事だったのね」


 そこにはテーブルに座る先ほど別れた2人の冒険者。

 どうやらカリナが言ってた他の先客2人というのはシルビアとアーティアの事だったようだ。

 いやはや。前世でも言われてたが世間は狭いね……。

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