29 ウィング・ドラペント
8/5 ホーングリズリー出現の部分を少し変更。一部加筆修正。
マシロが新たにウィング・ドラペントへの進化を果たした時、俺の脳内に呼びかける不思議な声が聞こえた。
小さな女の子の声だ。
考えられるのはマシロの習得した新たなスキル『念話』の力だろう。
この能力によって、マシロが俺に話しかけているのだと理解し、無意識にマシロに呼びかけていた。
『マシロ……。この声はお前なのか? そもそも聞こえてるのか?』
今の俺は、人化の術を使って無いので言葉は話せないはず。
ただ念じただけで果たしてマシロに伝わるのか?
そんな疑問を感じていたが、マシロにはちゃんと伝わったようで、更に返事が返ってきた。
『とーさま! 聞こえる! 聞こえるよ!』
どうもこの念話というスキルは、対象とのテレパシーを可能にしているようだ。
つまり心で思った事を相手に伝える能力か。
範囲や対象人数とかが気になるのだが、それよりも気になるのはさっきからマシロが俺をとーさまと呼ぶことだ。
『とーさま……? それは俺の事かマシロ?』
俺は何時の間に、この子の父親になったのだろうか?
『とーさまは、私に名前をくれた。
育ててくれた。だからとーさま』
マシロはそんな俺の質問に、嬉しそうに答えてくれた。
マシロは、俺の事をそこまで慕ってくれてたというのか……。
なんだか嬉しいものだが、ややこそばゆいな。
前世から今まで、結婚すらした事がなかったのだが、いきなり娘が出来てしまった。
しかし父親ねぇ……。
そう思ってくれるのは嬉しいんだが、俺にその資格があるとは思えないのだが……。
『俺なんかが父親でいいのか?
俺は別に父親らしいことなんかしてあげたつもりは無いぞ?』
『いいの。
とーさまはマシロにとって、とーさまなのっ!』
『そうですか……』
なぜか怒られてしまった。
しかも理由になってない……。
子供みたいだな。
いや。実際この子は子供か。
元々であった時はベビー・ホーンスネークだった。
恐らくマシロはこの世界で産まれて、まだそう時間が経っていないのだろう。
マシロは魔物としては、かなり賢いほうだと思うが、その精神はまだまだ成長中で人間の子供と変わらない印象を受ける。
俺の呼び方に関しては、マシロ本人も譲れないようだし好きに呼ばせてあげるか。
『わかった。なら俺の事はお前の好きに呼んでいい』
『うん。とーさま。
それとね? あの日私を助けてくれてありがとう。ずっと直接お礼が言いたかった』
そう俺に言って、マシロは俺の元にすり寄ってきたので、その頭を優しく撫でてやる。
『俺だってお前にはずっと助けて貰ってたんだ。お互い様だよ』
『とーさま……』
『さて。そろそろ進もうか。
今日は陽が暮れる前には街に帰りたい。
お前のスキルがあれば、これからはいつでも話せるしな』
『うん。わかった』
マシロは返事をすると、その背に生えた小さな翼をパタパタと動かす。
すると、その体がふわり宙に浮いた。
おお。やっぱり空飛べたのか……。
余り高く飛ぶ事は出来ないようだが、恐らく飛行スキルがLv1だからだろう。
Lvが上がればより自由な飛行が出来るはずだ。
そのまま俺の胸位の高さまで上昇すると、いつもの場所である肋骨に潜り込んできた。
『お前は本当にここ好きだな……』
『うん。ここ落ち着く』
そんな念話での会話をしながら、俺達は再びライムダールへの帰路へと戻る。
それから約1時間。
道中魔物の少ない場所をほぼ全速力で駆け抜けたことにより、俺達はオキシア湿原を無事に抜け、今はライムダールへと向かって草原地帯を歩いている。
魔力をフルに使って全力疾走してもいいのだが、途中で魔力が切れそうなので止めた。
マナポーションも節約したかったし、ここまで来れば今日中にはライムダールにたどり着けるからな。
オキシア湿原からライムダールまでの道は、広い平原が広がってこそいるが、危険な魔物の存在等は確認されていない。
そんな平和な道でも、その先にあるオキシア湿原の毒魔物のせいで、わざわざこっちに来るような人間は稀だ。
オキシア湿原に好き好んで来るような奴なんて俺くらいだろう。
おかげて、経験値も素材も稼がさせ貰えたがな。
ちなみに、今進んでいる場所はライムダールとオキシア湿原のちょうど中間地帯。
少し北に行けば、マルサム山脈と呼ばれる山々がある場所だ。
そのマルサム山脈では貴重な鉱石類や飛龍等の魔物が存在しているので、一攫千金を狙う冒険者が依頼を受けて偶に挑む場合があるらしい。
確か立川がナーシャさんから受けた飛竜退治の依頼もこの場所だったはずだ。
飛竜以外も凶暴な魔物が数多く生息していて、当然かなりの危険地帯。
当然人の出入り自体は少ない場所だ。
俺ももっと稼ぎたいなら、いずれは挑んでもいいかもしれないが、正直飛竜なんて勝てる気がしない……。
当分はオキシア湿原の魔物狩りの方が安定しそうなので必要ないだろう。
実際、帰りにも出現した魔物を倒しているので、ギルドから預かったこの魔法の袋には沢山の魔物の死体が詰まってる状態だ。
ポイズンクロウラー以外の魔物は、ギルドへ提出すると解体後にまとめて代金を受け取れるという話になっているので、一体いくらになるか楽しみだな。
――ぴくっ。
突然マシロが、何かを感じたように反応し、きょろきょろと周囲を見回す。
なんだ?
何かを見つけたのか?
マシロは北の方角へ視線を向けると、じっと何かの気配を探ってるようだが……。
俺もつられてそちらに視線を向ける。
この先にはマルサム山脈があるだけだが、何か気になる物でもあったのか?
『どうしたマシロ?』
『とーさま。あっちから何か来るよ。それと血の臭いもする。気をつけた方がいいかも』
なに……?
マシロの警告に従い、直ぐに生命探知を発動。
すると、やや離れた場所だが、一つの反応がこちらに向かってまっすぐ接近してきているのが確認できた。
凄いなマシロ。
よくこの距離の相手に気付いたな。
進化して索敵能力も上がっているのかもしれない。
しかしこの接近してくる反応の正体はなんだ?
マルサム山脈から、わざわざこんな平原近くまで魔物が降りてきたのだろうか?
無視して進んでもいいんだが、マシロが言っていた血の臭いってのが少し気になるな。
もしかしたら魔物から逃げてきた人間の可能性もあるかな?
よし。ちょっと確認してみるか。
少し魔力は余分に使う事になるが、俺は生命探知の機能を切り替える。
実は魔力操作のスキルを使えるようになって、俺の生命探知も少し強化された事がある。
今までの生命探知では、自分以外の生物がそこに存在するという事しか分からなかったのだが、今はそれとは別にもう少し細かく詳細を知る事が出来るようになった。
具体的に言えば、そもそもこの生命探知というスキルは、相手の生命力を探るアンデット特有のスキルのようで生き物全てに反応する物だ。
だが、ここに魔力操作と魔力探知を使って調整を加えてやると、生き物と言う条件に、体内に魔力の塊。要するに魔石を持つ存在か否かを判断できるようになったのだ。
魔石を持つ物とは、当然魔物の事だ。
こちらは今まで通り赤い丸で表示される。
それ以外は、魔物ですらない動物や人間等になる。
こっちの方は青い丸だな。
ちなみに魔道具に使われている魔石には反応しない。
あくまでも反応するのは常に活性化している物だけのようだ。
便利だな。
オキシア湿原は人がほぼ来ない場所だったので、この選別方法を使ってなかったが、こういう時は便利な機能だ。
そして改めて確認してみても、前方から俺達に迫ってくるのは紛れもなく赤い丸。
つまりは魔物で、この場合は敵と見ていいだろう。
だが反応はそれだけではない。
どうやらさらに離れた場所だが、魔物を追いかけているような2つの青い丸も同時に探知した。
青か。
この反応は人間か亜人だよな。
なら、状況から考えて、多分この魔物を追ってる冒険者だろうか。
距離はまだけっこう離れているし、追いつくとしたらもう少しかかるか。
まぁ何にしても、この魔物は真っ直ぐに俺達に向かって来ている。
相手は単体。
反応から見て中型の魔物だな。飛竜クラスではないと思う。
これなら多少強くても、今の俺達2人なら行けるだろう。
最悪無理そうなら全速力で離脱すればいいか。
それにマシロも進化したばかりで経験値を稼がせてやりたいし、俺だって経験値がまだまだ必要だ。
『マシロ。戦闘準備だ。進化したからって油断するんじゃないぞ?』
『はい、とーさま!』
マシロが俺の体から飛び出すと、その翼を使い浮き上がる。
そのまま滞空し、接近してくる相手を警戒している。
俺もダガーとククリを両手で構え、腰を落としていつでも飛び出せるように準備。
やがて魔物の反応が、いよいよ目視可能な距離まで迫ってきた。
それは一匹の獣型の魔物。
その魔物の事を、分かりやすく言うと額に角の生えた熊だろうか。
ただし体長は3メールを超える程だ。
当然野生の熊ではないく魔物だ。
こいつの名前は、ホーングリズリー……だったかな。
前に魔物図鑑で見た気がする。
確か、それによると普段はもっと山奥に生息してる魔物だったはずだ。
よく見ると、その体に矢が複数本突き刺さってるのが窺える。
コイツを追っている者達から逃走して、ここまで来たのだろうか?
ホーングリズリーは俺達の存在に気付いたのか、一度血走った眼を向けると、大きく咆哮を上げ、更に速度を増して接近してくる。
どうやら俺達を敵と認識したようだな。
急ぎホーングリズリーのステータスを確認。
極端にLvが高い相手なら時間だけ稼がせてもらって、後ろの冒険者に任せるつもりだがどうだ。
[種族] ホーングリズリー
[状態] 通常
[ランク] D
[Lv] 20/25
[HP] 103/168
[MP] 26/26
[攻撃] 114
[防御] 74
[魔法攻撃] 24
[魔法防御] 20
[素早さ] 65
[所持スキル]
剛力Lv2 身体能力強化 食い千切りLv2
剛爪Lv3 凶暴化Lv1
スタータスとスキルを見た感じ、思いっ切り近接特化タイプだ。
Lvは20だが、俺とマシロの2人掛かりでなら、問題なく倒せるだろう。
マシロのLvは進化して1に戻ってはいるが、能力も上がってスキルだって増えている。
俺と戦う分には特に問題ない。
それよりも厄介なのは、後ろから追っている青の反応の方だ。
距離はまだ離れているが、このままホーングリズリーとの戦闘になると、追いついて来た時に俺の姿を目撃される可能性がある。
可能ならばスカルウォーカーの姿を見られるのは避けたい。
……仕方ない。
今回俺は人化状態でマシロのサポートをしながら戦うしかないな。
俺は変幻の指輪へ魔力を通し、人化の術を発動させるとマシロに呼びかける。
「マシロ! 今回俺は人化状態で戦うから戦闘力が低い。
悪いがお前を頼りにさせてもらうからな?」
『任せてとーさま! マシロ頑張る!』
そう答えた後、マシロも戦闘態勢に移行してその翼を力強く羽ばたかせる。
俺もダガーとククリを両手に構えたまま、魔闘法を使い四肢に蒼のオーラを発現させる。
人化に回す魔力を減らし過ぎてはまずいので、今回の戦闘ではエンチャントを使わない。
こいつを倒せるかは、マシロとの連結にかかってるな。
だが、それについては心配要らないだろう。
「グルァアァァァァ!!」
ホーングリズリーはじっと待ち構えている俺達へ、大きく雄叫びをあげながら、更なる速度で突撃を仕掛けてきた。
その丸太の様な前足を振り上げて、叩き潰さんと振り下ろす。
その豪腕を素早く左右に散り、俺とマシロが回避する。
俺は両手に構えた刃をマシロはそのしなる尻尾をまるで鞭のように扱い、それぞれホーングリズリーにカウンターを叩きつける。
ダガーとククリの刃がホーングリズリーの脇腹を浅く切り裂き、マシロの尾による一撃は、削るような音をたてて、ホーングリズリーの腕の毛皮と肉を削り取る。
こいつ……思ったより毛皮が硬いな。
しかし俺の一撃はいまいちだったのに対して、マシロの攻撃は予想外の威力だ。
やはり進化して強くなってるのか。
しかしマシロが付けたあの傷……。
ただ尾を叩きつけただけにしては、何処かおかしいような?
少し気になって、攻撃に使われた尻尾を観察してみると、マシロの鱗がまるで刃の様に変質し、それが無数に逆立っているのに気付いた。
どうやらあの鱗はかなりの強度を誇るようで、さながら1枚1枚が剣の様な鋭さを醸し出している。
俺に巻きついてた時は、いつものすべすべした鱗だったはずだが……。
恐らくこの変化こそが、今回マシロが獲得した新しいスキル。刃鱗強化の力だろう。
このスキルで強化した尻尾を高速で叩きつける事によって、その鱗により肉を削り落としているのか……。
「シァァァ!」
マシロは更に速度を上げて飛び、怯んだホーングリズリーへと追撃でその尻尾を連続で叩きつける。
まるで鑢のその尻尾は、ぶつかる度にに削るようにホーングリズリーの肉をこそぎ落とす。
「ガァァァッ!!」
文字通り身を削られる痛みに怒り、ホーングリズリーはマシロに強靭な爪を突き立てようとその前足を叩きつける。
しかしマシロは飛行をうまく使い、まるで踊るように、その一撃を回避する。
躱したホーングリズリーの前足は、地面に叩きつけられると土煙を上げ凄まじい轟音を響かせる。
当たったら、ひとたまりもなさそうなその一撃を、しかしマシロは恐れずに躱して時折尻尾を叩きつけ更にダメージを蓄積させる。
『この熊。攻撃の威力は凄いけど、とーさまに比べたら全然遅い』
マシロに攻撃を当てる事が出来ず、自身の傷は増えるばかり。
そんな状況にホーングリズリーは、怒りの咆哮を上げ更に激しく暴れはじめる。
その血走った眼には、最早空中を舞うマシロしか映っていないようだ。
だが、ホーングリズリーの相手はマシロだけじゃない。
「俺も忘れるなよ熊公っ!」
ガラ空きになっているその背中へ、2つの刃を突き立て切り裂く。
先ほどの攻撃が浅かったのを考慮して、今度は魔力を両腕にしっかりと回して一撃の威力を底上げている。
オーラを纏った両手は、2つの刃をホーングリズリーの背中に突き立てそのまま二筋の線を刻みこむ。
切られたホーングリズリーの背から鮮血が噴き出した。
「グルァァアァァ!!!」
痛みに反応し、振り向きざまに一撃を加えようとするも既に俺は地を蹴って離脱している。
ホーングリズリーの振り向きざまの一撃が外れたところを、すかさずマシロが追撃。
小さな翼を懸命にはばたかせると、風の刃のようなもの前方に展開し、それを放つ。
あれは恐らく、鎌鼬のスキルたな。
ヒュンと矢が飛ぶような小さな音をたてると、真空で作られた刃がホーングリズリーの背に更に無数の切り傷を残して通り過ぎる。
ズタズタに切り裂かれた背中から、更なる血を流しホーングリズリーは苦痛の声を上げる。
「グルガ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ!!」
俺とマシロの攻撃によってこいつはかなりの量の血を流してる。
それに、元々別の人間達とも戦闘しているはずだ。
ならばそろそろ体力の限界だと思うのだが、どうだ?
しかし、ホーングリズリーは傷だらけの体にも関わらず、尚も血走った目で俺達を睨みつけてくる。
時折口からは血の泡を零しながらも、その眼には逃走する意思は感じられない。
流石にタフすぎるな。
そろそろ限界だと思ったが、一応、ステータスを見ておくか……。
[種族] ホーングリズリー
[状態] 出血
[ランク] D
[Lv] 20/25
[HP] 41/168
[MP] 26/26
[攻撃] 114
[防御] 74
[魔法攻撃] 24
[魔法防御] 20
[素早さ] 65
[所持スキル]
剛力Lv2 身体能力強化 食い千切りLv2
剛爪Lv3 凶暴化Lv1
もうひと押しって感じだな。
それに状態異常で出血を引き起こしてるのも効いてるようだ。
「しかし、随分しぶとい熊だな」
『でもそろそろ、倒せそうだよ』
「油断はするなよ?」
『はーい』
マシロと俺はホーングリズリーを挟み込むように前後に分かれて隙を伺う。
実際ここで逃げられると面倒だ。
確実に仕留めさせてもらおう。
ホーングリズリーの方も俺とマシロを交互に睨むように警戒し、狙う相手を定めているようだ。
暫し睨み合っていたが、やがて大きく咆哮して俺の方に頭を向ける。
どうやらホーングリズリーは、体の小さなマシロよりも俺の方が攻撃を当てられると思ったようだ。
そのまま真っ直ぐ俺に向かって突進してきた。
相変わらず巨体に似合わぬ加速だ。
瞬時に俺の目の前まで迫ると、そのまま俺へと飛びかかりまるで抱きかかえるように両腕で挟み込んでくる。
ベアハッグって奴か。
あんな奴に抱きしめられたら引き千切られるだろうな。
まぁ当然食らってやるつもりはないが。
俺も、こちらに向かってきた時に、既に準備を終えている。
魔力を込めた右足で、地面を思いっ切り蹴って垂直に飛び上がる事によってホーングリズリーの攻撃を回避する。
足には魔力をしっかり込めたので、4メートル位まで一気に飛び上がれた。
たとえ人化状態であっても、魔闘法を使えば俺もこれ位の動きは出来る。
そのまま頭上へ飛び上がった俺は、攻撃を空振りをしたホーングリズリーの目掛けてオーラを纏った踵を勢いよく叩きつける。
骨を砕くような鈍い感触を感じ、ホーングリズリーの上半身が地面へ倒れ込む。
「ガアァァッ!?」
ホーングリズリーの方は、何が起こったのか理解できてないのだろう。
突然俺が目の前から消えたと思ったら頭上から攻撃をしかけてきたのだから。
魔闘法で威力の強化された踵落としを真面に食らい、脳が揺れたのかホーングリズリーの焦点は定まっていない。
「今だマシロ! 首を狙え!」
「シャアァァッ!」
俺の合図に、空中を最大速度で加速したマシロが、地面へ倒れているホーングリズリーへ一気に接近。
そのまま加速して速度が乗った尻尾の一撃を、その首へと叩き込んだ。
刃鱗強化によって鋭さを増したその一撃は、ホーングリズリーの首を深々と切り裂き、その傷口からは鮮血が噴水の様に吹き出した。
その攻撃が致命傷になったのか、ホーングリズリーは地面に血の池を作り出して動かなくなった。
【経験値を135獲得しました】
倒して得た経験値の中では、今まで一番多いな。
『とーさま。無事?』
「ああ。俺は平気だ。マシロも無事で何より。強くなったな」
『ふふ。これもとーさまのおかげ』
俺の元まで飛んできたマシロを受け止めて、労いを込めてその頭を撫でてやる。
しばしマシロを撫でていると、どうやらこの熊を追っていた冒険者達が追いついてきたようだ。
「アーティア! さっきの凄い音きっとホーングリズリーだよ! 急がないと逃げられちゃうから!」
聞こえてきたその声は若い女の物だった。
このまま立ち去ろうかなとも思ったが……。
その声の主に少し興味が出た。
だってここは人がほぼ来ない地域なのだ。
そんな場所にわざわざ来る女性冒険者に興味が出た。
なので、折角だ。この声の主がどんな人物なのか、顔を拝んでみるとしよう。
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