28 マシロ2度目の進化
ポイズンクロウラー討伐の依頼をなんとか終えた俺とマシロ。
だが二人とも魔力の残りも少なく、間もなく夜が訪れる時間という事もあり今日はこのままオキシア湿原で1晩野営をする事にした。
魔力を回復させるのに俺がよくやるのが、人化した状態での食事だ。
変幻の指輪に刻まれた闇魔法が、俺の口にした食物を魔力に還元してくれるので極端な話飯さえ食えれば、魔力はなんとかなる。
一番効率がいいのはマナポーションだが、毎回あれを飲むのは精神的にきつい。
しかも値段もそこそこ高いから、可能なら温存しておきたいしな。
魔法の袋から取り出した干し肉を一切れ齧りながら、簡易式の折り畳みテントを組み立て寝床の準備をする。
このテントは、ライムタールを出る前に、冒険者向けの雑貨店で買った物だ。
その店でテントの他にも、野営用の調理器具等をまとめ買いしたら、店主が値引きしてくれて銀貨3枚で済んだ。
広さも俺とマシロが使うには十分な物で、組み立てるのも簡単だ。
普段は魔法の袋に収納していれば邪魔にもならないしな。
無事テントの組み立てが終わったので、次はいよいよ食事の準備をするとしよう。
先ずは火が欲しいので、薪代わりに周囲の枯れ枝を拾い集めて火打ち石を使おうとしたら、マシロがブレスを使って点火してくれた。
相変わらず気が利く子だな。
マシロのブレスによって火が点いたのを確認し、購入しておいた食材や調理器具を取り出して準備にかかる。
料理なんて久しぶりだなー。
しかもこんな大自然の中でなんて猶更だ。
こういうのがやりたくても、前世では仕事が忙しくてなかなか出来なかったしな。
さて。
取り出した食材はミーア・シープと呼ばれる羊の様な魔物の腸詰。要するにソーセージだな。
次にチーズ。そしてジャガイモによく似た野菜のポルトだ。
まず依然立川の選別で確認していた魔道具の一つ。
魔力を込めると空気中の水分を集めて真水を作り出す水筒。
面倒なんでそのまま魔水筒と呼ぶ。
これを使って集めた水でポルト洗い、皮を調理用のナイフで剥く
前世ではピーラーを使ってたからか上手くいかない。
悪戦苦闘しながらも、なんとか皮を剥いて一口サイズに切ったポルポを、油を引いたフライパンでソーセージと一緒に炒める。
ジュッーっと肉の妬ける食欲を誘う音と匂いが漂いはじめ、マシロがそれを見て涎を垂らしてそわそわしている。
「今飯作ってるから、出来るまでもーちょっと待ってな」
そんなマシロの様子に苦笑しつつ、食材を炒めていく。
いい感じにソーセージとポルポに火が通ってきたので、更に上からチーズを投入。
「マシロ。少し温度上げたいしブレスたのんでいい?
フライパンを炙る感じで」
「シャ? シャアァァ!」
マシロの小さな口から炎が飛び出し、フライパンを下から炙る。
ちゃんと加減はしてくれてるようで程よい火力だ。
「おお。いい感じいい感じ。そのままの強さでもう少し我慢な?」
マシロのブレスで温度が上がり、チーズがソーセージとポルポに溶けてかかり実にいい感じに仕上がる。
最後に少しの少々の塩を振りかけて完成。
素材も少ないし雑な料理になったが、俺にはそこまで金銭に余裕が無い。
食べるのは俺とマシロの2人だけだし、これでも十分だろう。
今回の依頼の報酬が入れば、次回からはもう少し贅沢な料理も作れるかもしれないけどな。
そうだ。ついでにライムダールで料理の本でも買おうかな。
「そら。
出来たぞマシロ。今取り分けてやるからまってろ」
「シャッシャッ!」
マシロは器用にとぐろを巻いて尻尾を振りながら俺に返事をしてくる。
更に魔法の袋から白パンを1つずつ取り出す。
小皿にソーセージとポルポのチーズ焼きを乗せて、更にその横にちぎったパンを入れてやる。
皿に乗った料理を近づけると涎がさらにぽたぽたと垂れていた。
どうやら待ちきれないようだ。
「すまん。待たせたなマシロ。ほら食べていいぞ」
そう言った瞬間がばっと勢いよくマシロは料理を食べ始めた。
俺もそれをにならい、ソーセージとチーズを一口。
うん。パリッとした皮の中から肉汁がじゅわーっと……チーズもあうわー……。
でもやっぱこれはあれが欲しくなる味だ。
「あーくっそ。ビールが飲みたいっ!」
まぁ今の俺が果たして酔えるのかはわからないが。
その後綺麗に食事を二人で平らげて、後片付けも終わる。
一息つけたし、魔力もだいぶ回復した。
やっぱ食事で魔力回復できるのって便利だよなー。
生命探知しても周囲に魔物反応はないし、このまま今日の成果の確認でもするかね。
俺はマシロと共に仕留めてきた魔物をギルドから支給された魔法の袋から取り出して並べていく。
ポイズン・トード×7
ポイズンスライム×8
リザードマン×6
ポイズンクロウラー×1
おおー。なかなかの数だな。
しかし毒物が大量だなやっぱ。
一体幾らで買い取ってもらえるのかは分からないが、オキシア湿原の魔物はなかなかいい値段だって話だし、期待していいのではないだろうか?
ああ。いっそ今回の報酬の額次第では、高級な甘味でも食べに行くのもいいな。
なんだかんだで俺甘いの好きだし。
まぁまだ追加の報酬がどれくらいになるかは分からないが、この依頼の成功報酬である銀貨50枚は確定してるんだ。
当分宿には困らないのは救いだな。
そしてこれだけの魔物を狩ったんだから、当然俺達のLvだって上がってる。
今の俺達のステータスはこんな感じだな。
[名前] ジェイド
[種族] スカルウォーカー
[状態] 通常
[ランク] D
[Lv] 16/20
[HP] 123/123
[MP] 72/72
[攻撃] 74
[防御] 62
[魔法攻撃] 40
[魔法防御] 37
[素早さ] 91
[所持スキル]
剣術LV1 短剣術Lv3 忍び足 生命探知
夜目 投擲Lv2 毒無効 ステータス閲覧
魔力探知Lv2 魔力操作Lv2 魔闘法
[付与スキル]
エンチャント風
エンチャント雷
[名前] マシロ
[種族] リトル・ドラぺント
[状態] 通常
[ランク] D
[Lv] 13/15
[HP] 120/120
[MP] 65/65
[攻撃] 72
[防御] 59
[魔法攻撃] 41
[魔法防御] 35
[素早さ] 86
[所持スキル]
噛みつきLv2 毒牙Lv2 ブレスLv3
鱗強化 夜目
[ユニークスキル]
突然変異Lv2
お互いのレベル以外にも、俺は短剣術と魔力操作、魔力探知のスキルレベルが、マシロはブレスのスキルレベルが其々上がっている。
種族レベルもそろそろMAXまで届きそうだな。
だが、今回の依頼は、残り時間も少ないので、明日はなるべく早くライムダールへ帰還してギルドへ依頼の報告をする予定だ。
帰道でも、当然魔物とは遭遇するだろうし、運がよければマシロは明日進化できるかもしれないな。
さて。ギルドへと納品予定の魔物の確認や、ステータスのチェックも終わった。
足元ではマシロが欠伸をしながらかなり眠そうにしているし、俺も、今日はこのまま休むとするか。
その日はマシロをテントの中で寝せてやり、俺は見張りとして魔物図鑑を読みつつ魔力操作の鍛錬をしながら夜を明かした。
――そして翌日。
テントを畳んで魔法の袋にしまうと、このオキシア湿原を出るため出口へと進み始める。
依頼の終了期限は今日の夜までだ。
せっかくポイズンクロウラーを仕留めたのに時間切れで依頼失敗なんて目も当てられない。
なので行きと違い、帰りは極力魔物が少ないルートを選んで走る。
ただこのオキシア湿原に冒険者が来ることは稀だ。
なので魔物の数は非常に多い。
どんなに反応が少ないルートを通っても最低限の戦闘は発生してしまうのは仕方ない事か。
「ゲコォォ!」
そんなもはや聞き慣れた声を上げながら、道を塞ぐように水辺からポイズン・トードが2匹飛び出してくる。
これでもう3回目だぞ……。
至るところにいるなこの毒蛙。
俺もいちいち立ち止まってもいられないので、そのまま走りながらエンチャントを発動。
雷刃のダガーを最速でポイズン・トードへ突き刺して仕留める。
直ぐに刃を引き抜き、もう1匹も同じ要領で仕留めようとしたが、そちらはマシロが素早くブレスを浴びせて、怯んだところですかさず腹を食い破られていた。
多きさはどうあれ所詮は蛇と蛙の関係か……。
とりあえず追加報酬のため2匹の死体を袋に回収。
開敵から回収までこの間わずか2分。
最早戦闘というより作業だな。
死体を無視して進めばもっと早いだろうが、流石にそれはもったいないのできっちり回収。
金は多いに越したことは無いんだよ。
このままのペースで進めばオキシア湿原は昼前には抜けれるな。そして草原地帯からライムダールまでは全力で走れば1時間ちょい。
うん。依頼の期限にも十分間に合うな!
これで夕飯は白羽亭で食べれそうだ。
今夜のメニューはなんだろうな……。
「シャアッ!」
ん?
「シャアシャア!」
再びマシロを乗せて走り出そうと準備した俺だったが、マシロはその場にとどまり、俺に何かを訴え始め。
マシロの奴どうしたんだ?
そういえば確か前にも一度こんな事があったような……。
あれ。これってまさか……。
俺は急ぎマシロのステータスを確認する。
[名前] マシロ
[種族] リトル・ドラぺント
[状態] 通常
[ランク] D
[Lv] 15/15 MAX
[HP] 125/125
[MP] 70/70
[攻撃] 76
[防御] 62
[魔法攻撃] 44
[魔法防御] 38
[素早さ] 88
[所持スキル]
噛みつきLv2 毒牙Lv2 ブレスLv3
鱗強化 夜目
[ユニークスキル]
突然変異Lv2
やっぱり進化可能になってる。
成長限界はマシロの方が早いのがわかってはいたが、やはり進化は先を越されてしまったか。
でもマシロは今回の依頼でも頑張ってくれたんだ。
その努力によって進化可能になったんだし、素直に喜ぼう。
そっと頭を撫でてやり、俺はこのままマシロの進化が終わるのを待つことにした。
さて、今度は一体どんな姿になるのかね?
でもいきなりとんでもなく大きくなるとかは、勘弁してくれよ。
マシロはしばらくじぃーっと俺の方を見つめていたが、やがてその体が光に覆われる。
進化の光だ。
しかも今回の光は前回の進化よりも激しい。
まばゆい光がマシロを包み隠し、あの中でマシロがどのように変化してるのたろうか……?
リトルドラベントの時は突然変異のLvも上がったが今回もその関係で予想外の変化が起こる可能性もある。
まぁ、どんな姿になったしてもマシロはマシロだ。
こいつがどんな姿になっても俺の相棒という事には変わりないか。
やがて、マシロの体を覆っていたまばゆい光が晴れた。
ゆっくりとマシロがその姿を見せる。
やはり進化後の姿も白い体の赤い瞳をした蛇の魔物のようだ。
体の大きさは殆ど変ってない。
角の数も2本のままだ。やや伸びているか?
だがその顔つきは、蛇やというより、竜の様な形をしていた。
更に一か所だけだけ今までと明らかに違う場所がある。
ーーパタパタ
そんな音をたてながマシロの背で羽ばたくのは、小さな翼。
鳥類のような、羽毛の生えた物ではなく、どちらかというと蝙蝠の翼に近い印象を受ける。
翼の生えた白い蛇。
それが、進化したマシロの姿だ。
おおぅ……。まさか翼が生えるとは思ってなかったぞ。
レッド○ル飲ませたつもりはないんだが、誰に授けられたんだその翼は……。
マシロは何に進化したんだ?
とりあえず先ずは、恒例のステータスチェックからしてみようか。
[名前] マシロ
[種族] ウィング・ドラぺント
[状態] 通常
[ランク] C
[Lv] 1/35
[HP] 135/135
[MP] 85/85
[攻撃] 83
[防御] 68
[魔法攻撃] 63
[魔法防御] 60
[素早さ] 98
[所持スキル]
噛みつきLv4 毒牙Lv4 ブレスLv4 刃鱗強化
夜目 鎌鼬Lv1 飛行LV1 念話
[ユニークスキル]
突然変異Lv3 竜の因子
翼の生えたドラペント種……かな?
ステータスの伸びがなかなか大きいな。
そして突然変異スキルが上がってるのを考えると、これもまた、通常の進化先ではないのだろう。
他にも新たなスキルが増えていて、気になる物が多い。
まず鱗強化が刃鱗強化になってる。
鱗強化の進化系か?
だが、マシロの見た目は前と変わらない気がするのだが……。
一体どういうスキルだ?
次に飛行。
これはあの翼があるってことはやはり飛べるとみていいのか?
鎌鼬。
これは見たことある。
確か前に森で見た最終進化の蟷螂が持ってた奴だ。
名前からして恐らく遠距離攻撃系のスキルだろうか。
そして一際目を引くのが念話とユニークスキルに追加された竜の因子。
2つ目のユニークスキル。
竜の因子……か。
マシロのこの姿は、このスキルと何か関係があるのか?
突然変異と同じく進化先に影響を与えるスキルなのかもしれないな。
しかし、マシロは一体何処こへ向かって進化しているのだろうか……?
最後に念話スキルだ。
でもこれってまさか……。
『とーさま』
え?
マシロの姿とスキルに様々な疑問が沸き起こっていた俺の頭に、突然声が響いた。
それは舌っ足らずな小さな女の子の声だ。
思わず周りを見渡すが、ここには俺とマシロしかいない。
生命探知で確認したので間違いない……。
となると……やはり……。
『とーさま!』
再び視線をマシロに移す。
この声の主は、やはりマシロのようだ。
これが念話のスキルか……。
まさかマシロと話せる日が来るとは思ってもいなかった。
ある意味今回一番びっくりさせられたスキルだなこれは……。
しかし、とーさまか。
一体俺はいつからこの子の父親になったのだろうか?
次回は6/29 18時更新




