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スケルトンの冒険者 異世界生活記 ~人化の術で冒険者やってます~  作者: 肉巻きおにぎり
2章 スケルトンと人間
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閑話1 とーさまとマシロ

初めての主人公以外の視点で書きます。今回はマシロ視点です。時間軸はジェイドと出会う少し前からリトルドラペント進化時までの話になります。

 私の名前はマシロ。

 とーさまが私にその名を与えてくれた。

 といっても、名前を付けてくれたこの人は、私の本当のとーさまでは無い。

 私がそう勝手に呼んでいるだけだ。



 私にはかーさまや兄弟たちがいた。

 でも皆と一匹だけ体の色が違う私の姿をかーさまや兄弟達はいつも気味悪がっていた。

 そんな状態で、まともな生活等有るはずもなく、ある日突然かーさま達に巣を追い出された。


 巣を追い出す前に一応狩りのやり方、安全な寝床の探し方なんかをかーさまが教えてくれたのは、今思えばかーさまなりの優しさだったのかもしれない。


 1人になった私は、生きるために餌となる虫や兎等を必死に探しながら、時折現れる大きな魔物達から隠れるように毎日生きていた。

 そんな生活を続けていたある日、少し大きめの兎を見つけて、それを追いかけて普段は近づかない森の奥へと入ってしまった。

 なんとか兎を仕留めて、そのまま食事をしていたら、がさりと近くの草むらが揺れそこから一匹の大きな魔物が私の前に姿を現す。


 後でとーさまが教えてくれたが、この魔物はコボルトというらしい。

 今でこそ私もこいつらを狩れるようになったが、当時の私はではこんな大きな魔物にとてもじゃないが勝てない状態だった。

 そのコボルトは私を見ると、にやりと笑って持っていた棒で私を殴りつけてくる。

 躱そうとするも、向こうの方が遥かに速い。

 体に痛みが走って、そのまま地面を転がされる。

 だが、そのままのんびりしてるわけにはいかない。

 痛みに遠のきそうな意識を必死に繋ぎ、なんとかこの場を離れようと必死に体を動かす。

 早く逃げないと、弱い私は殺されてしまう。

 

 この世界に私を助けてくれる存在などありはしないのだ。

 だから自分の力だけで、この世界を生き延びなければいけない。

 必死に痛む体を動かし、コボルトの攻撃を躱し続けるも、少しずつ体には傷が増えていき視界もだんだんと霞んでくる。

 ああ……。これは逃げられないかな?


 どうやら私は今日、ここで死ぬ運命のようだ。

 別に恨んでなんかいない。

 私が弱い存在でこの魔物が私より強かった。だから私が死ぬ。

 この世界では当たり前の事だ。

 私だって、自分よりも弱い虫や兎を食べながら今まで生きてきたのだ。

 今度は私が食べられる番になっただけ。

 なので、もう諦めて楽になってしまおうかなっと思っていた時、突然コボルトが悲鳴を上げて吹き飛んで行った。


 一瞬何が起こったのか理解できなかった。

 どうやらあのコボルトは何者かの攻撃によって吹き飛ばされたようだ。

 コボルトを吹き飛ばした物の正体。

 それは灰色の布を纏った骨の魔物だった。

 私と同じく赤い目のような物があり、その視線の先には先程のコボルトが苦しそうに呻いていた。

 骨の魔物は、コボルトの落とした棒を拾うと、そのままそれをコボルトに投げつけて突き刺す。

 コボルトはそのまま死んでしまった。

 正に一瞬だ。

 私では絶対に勝てないと思ってた相手が、こうも簡単に殺せる存在に、当然私が勝てるわけがない。

 きっと次は私なんか踏み潰すような感覚で殺されるのだろう。


 やはりこの世界は残酷だ。

 力を持たなければ生きていけない。

 当たり前の事だが、私の様に弱い存在にとってその当たり前は、呪いのようにも感じられる。


 コボルトを殺した骨の魔物は、その赤く光る目を私の方へと向けた。


 どうやら次は私みたいだ。

 やっぱり今日ここで死ぬ事に変わりはない。

 それならそれで構わない。

 せっかくだ。

 どうせこのまま大人しく死ぬ位なら、この魔物の体を、せめてひと噛み位してやろうかな。

 

 私の牙には毒があるとかーさまは教えてくれた。

 この毒が効くのかは分からない。

 でもひと噛みでも出来れば、私の様な弱者でもこの世界の強者に立ち向かえたんだと、ちっぽけな満足感を得られるかもしれない。

 私なりの、最後の抵抗だった。

 きっと、無駄な足掻きに他ならないが、私なりにこの理不尽な世界の強者に何かしてみたかったのだ。


 さぁ来い。

 手を伸ばして来たら思いっ切り噛んでやる。

 もうすでに体はボロボロで、完全に虫の息のはずなのだが、私は必死に自分を奮い立たせて、その強者に精一杯威嚇をする。


 しかし、そんな私の精一杯の頑張りを余所に次の瞬間意外な事が起こった。


 その魔物は突然赤い水の入った入れ物を取り出して、私にその中身を振りかけてきた。

 まさかこんな攻撃をしてくるなんて思わなかったので、反応が遅れ、私はその液体を思いっ切り被ってしまった。

 途端に、体に再び痛みが走る。

 

 ああ……。体が焼けるようだ。

 必死に抵抗しようとしたが、結局私は何もできなかった。

 所詮はこんなものか。

 結局最後の最後までやっぱり私は、この世界では弱い存在のままなのだ。

 間もなく、このままこの痛みの中で私は死んでいくんだろうな……。


 そう諦めていたのだが、次第に何かがおかしい事に気づく。

 確かに赤い水を振り掛けたられた時はしみるような痛みが体に走っていたが、今はそれが鈍くなっている。

 しかも先ほどまで霞んでいた視界もなんだかはっきり見えている気がする。

 これは、どういう事だろうか?


 疑問に思ってる私に、その魔物は更に追加で赤い水を振り掛けた。

 だが、今度は痛みは無い。

 それどころか、徐々に体が軽くなっていき、先ほどまでに感じていた鈍い痛みも完全に消えたのだ。

 不思議に思い自分の体を見てみると、あんなに傷がついていた私の体が元の綺麗な状態に戻っていた。

 私は夢でも見ているのだろうか?

 それとも実はもう死んでいるのだろうか?


 混乱する私に、その魔物はそっと頭に触れてくる。

 しまった。

 攻撃されるかと思ったが、実際はそのま優しく撫でてくれるだけだった。


 信じられない。

 強者である魔物が、弱者でしかない私を助けてくれたというのだろうか?

 理解できなかった。

 この強さこ全ての世界で、これはまさに異常な光景だ。


 何かの罠かもしれない、体が動くようになったのだ。ならば逃げなければ。

 そんな事が次々浮かぶが、私は何故かこの手の感触に、心を許してしまっていた。


 生まれてこれまで、周りに味方とも呼べる存在もいなかった私へ、初めて向けられた小さな優しさ。

 それが私にはとても大きなことで、すごく嬉しかったのだ。

 私はもはや抵抗することを止めると、その手の感触に身を任せた。



 しばらく私を優しく撫でてくれたその腕は、やがて離れていく。

 このままこの骨の魔物は、ここを立ち去るのだろう。

 それが分かってしまった、私の体は、ほぼ無意識にその腕を離すまいと巻き付いてしまった。


 一瞬その魔物の赤い目が驚いたような気がしたが、構うものか。

 私は初めてこの世界で助けてくれた、この腕を必死に逃すまいと、そのまま体に巻き付き進む。

 ちょうど良い隙間を見つけたので、そこに潜り込んでがっちりと体を巻きつけた。


 今考えると、自分でもあれはかなり強引だったと思う。

 きっとびっくりしただろう。

 ごめんなさいとーさま。

 でもあの時の私は、とーさまと離れる事にとても恐怖を覚えてしまったのだ。

 初めて善意を向けられた相手と別れて、再び味方のいないこの世界で一匹で生きていく自信がなかったのだ。

 それは私が初めて感じた、わがままな感情だろう。

 でもそんな私を、とーさまは結局連れて行ってくれることにしたようだった。


 嬉しかった。

 初めて、頼れる存在を見つけた。

 初めて、兄弟たちと違う自分を受け入れてくれた存在と出会えた。

 

 だからこの時私は思ったんだよ?

 とーさまが私を守ってくれたように、次は私がとーさまを守るんだって。


 

 その誓いを果たす機会は意外にも早くやってきた。


 骨の魔物は、一緒に旅をする私にマシロという名前を付けてくれた。

 突然私の頭の中に声が響いたのだ。


 条件を達成しました。

 ヘビー・ホーンスネークの名前をマシロに決定しますか?

 一度決めりと変更できません。

  Yes/No


 この魔物が私に名前を付けてくれている。

 名前とは親から子供への大切な贈り物だ。 

 私達普通の魔物は、普通に生きている限り名前をもらえる事はまず無い。

 人間にテイムされるか、自分より格上の存在から、魔力と魂の一部を譲り受けることで、名を授かるものだからだ。

 当然、私の様な弱い存在に、名前は無い。

 そんな私が、名前を貰える。

 そう理解した時、私はすごく嬉しかったのを覚えている。

 この時から、私にとってこの魔物が私の中で、とーさまとなった。


 私は迷わず頭の中の声にYesと返事をした。

 

 マシロ。

 それが私の名前。とーさまからの大切な贈り物。

 私の宝物だ。

 とーさま。どうもありがとう。

 だけど凄く嬉しいのに、この喜びをうまくとーさまに伝えられないこの体が少しもどかしい……。


 そんな事を考えていたら、突然、森の奥から凄い音と殺気を感じた。

 急ぎとーさまは私を連れてそこに向かうと、ゴブリンと呼ばれる魔物の里を人間が攻めていた。

 しばし、とーさまはその戦いを木の上で眺めていたが、やがて木を降りて、巻き込まれないように静かに移動しようとした時だ。

 背後の茂みから1匹のゴブリンが飛びだしてきた。

 その手には大きな木の塊が握られていて、とーさまを攻撃しようとしている。


 とーさまも人間達の戦いに集中していて、気づくのが遅れたようだ。

 このままでは直撃だと思った時、私は無意識の内に体が動いていた。


 自分でも驚くほどの速度でとーさまの体から飛び出すと、そのゴブリンの喉に思いっ切り噛み付く。

 肉に牙が深々と刺さるのを感じ、そのまま力の限り、その肉を食い千切る。


 ゴブリンは青黒い血を撒き散らしながら、地面へと倒れた。


 や、やった?

 私が、ゴブリンを倒せた?

 とーさまを守る事が出来たの?


 ゴブリンを倒した私を、とーさまは優しく撫でてくれた。

 凄く嬉しかった。


 その後は、とーさまが狩りをする時に私も連れて行ってくれるようになった。

 私一匹では勝てないような大きな魔物達も、とーさまと一緒なら倒すことが出来た。

 しかも不思議な事に、倒す度に少しずつ強くなれているのを感じる。


 そして、それを一番実感したのは、とーさまに教えられたやり方でコボルトを奇襲して倒した時だ。

 いくら奇襲による攻撃とはいえ、前の私がそれをやってもコボルトを倒せているとは思わない。

 牙を突き立てる時に、抵抗もほとんど感じず、その肉を食い千切るのにもほとんど力を使わなかったのだ。


 やはり私は強くなっているようだ。

 不思議な気分だ。

 今まで小さな存在でしかなかった私が、いまでは自分より大きなコボルトやゴブリンを倒せているのだから。


 その後もとーさまと一緒にゴブリンやコボルトを探しては狩り続け、ついにその時が来た。


 再び発見したコボルトの喉を私が噛み千切り仕留めた時だ。

 頭の中にまたあの声の様な物が響く。

 名前を決める時にも聞こえたあの不思議な声だ。



 条件を満たしました。進化が可能です

 ベビー・ホーンスネークの種族を進化させますか?

 Yes/No



 進化。それが何かは本能が理解していた。

 あんなに弱かった私が、進化可能になるまでに強くなれたのだ。

 私は嬉しくて、思わずとーさまに報告をしていた。

 とーさまは私に何かあったようだと気づいてくれたようだが、進化が可能になったと気づいてくれただろうか?

 私もとーさまもお互いに言葉を話すことが出来ない。

 それでも、とーさまはかなりわかりやすく、私に身振り手振りで色んな事を教えてくれる。

 確かにお互いそれでなんとなく伝わるので問題はなかったが、私はいつか直接話してみたいと思っていた。


 とーさまは私をじっと見つめてそのまま動かない。

 きっと私が進化をするのを待っていてくれているのだ。

 そう思い、私は迷わず進化を選択する。 

 すると、またあの不思議な声が頭に響く。



 特殊条件を満たしていますので変異進化が可能です

 通常進化先のホーン・スネークではなく、リトル・ドラペントへの変異進化を選択しますか?

 Yes/No



 これは一体なんだろう?

 不思議に思っていた私だが、不思議な事に、これは絶対に選ばなければいけない気がした。

 その感覚に従い、リトル・ドラペントへの進化を選択する。


 私の体が突然発光し、まるで体が作り変えられていくような、奇妙な感覚が襲う。

 これが進化なのだろうか? 不思議な感覚だ。


 やがて、光が収まると、私の視点が少し高くなっているのに気付いた。

 どうやら体も少し大きくなったようだ。

 だが、それだけだろうか?

 何かほかに変化は無いかと自分の体を見回すが見つけられない。

 一つあるとしたら、喉の辺りがなんだか、じんわりと熱を持っている感覚がする。

 なんだろうこれ?

 試にそこに意識を集中すると、喉の熱が更に広がる感覚。

 そして私はこの熱の意味と使い方をなんとなく理解できた。

 それが分かったのは、この体に刻まれた本能だからだろうか?


 ありがとうとーさま。

 とーさまのおかげで、マシロはまた少しだけ強くなれました。


 とーさまはそんな私をじっと見つめている。

 だが、その瞳がどことなく嬉しそうに感じたので、きっと喜んでくれているのだろう。


 私が強くなれば、とーさまは喜んでくれる。

 なら、これからも、もっと進化していつかはとーさまを私が守れる位に強くなってみせよう。

 そうしたら、きっととーさまは沢山褒めてくれるから。

 その日までマシロは頑張るね。

 だから見ててねとーさま。

バレバレだったと思いますが、マシロは女の子です。

本編もそろそろ投稿しようと思います。

休みがなかなか取れないので、とりあえず今書けている分だけになりますが……。

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