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スケルトンの冒険者 異世界生活記 ~人化の術で冒険者やってます~  作者: 肉巻きおにぎり
2章 スケルトンと人間
19/60

18 変幻の指輪

7/11 加筆修正しました。

「変幻の指輪……?」


 それが、今の俺の姿を変えた指輪の名前か。


「ああ。上位の魔物の中には、人化の術と呼ばれるスキルを使う奴らがいるんだ。有名なのは属性竜エレメント・ドラゴンとか精霊狐スピリット・フォックスみたいなこの世界でも上の存在だな。この指輪は、その術式を少し改良して刻み込んでいる物らしい」


「……らしい?」


「ああ。この指輪は、ある魔王が作ったものでな。その魔王から貰ったんだ」


「魔王……。いるのかやっぱり」


「まぁ一応、勇者だってここにいるしな」


 そう言って、どやって感じの笑顔を浮かべる勇者タチカワさん。

 なんかこの人、こうして話すとけっこうノリ軽いな。

 意外と体育会系って言うか……。

 ステータス見る限り思いっきり魔術師なのに。

 案外普段は肉体強化と魔闘法を併用しての近接戦とかしてそうなイメージだ。


「ああ。えっと……。じゃあお世話になります。タチカワさん」


「あ? なんで俺の名前……ああ。お前ステータス閲覧持ちか。勇者以外でも習得可能だったのか。あっちから来ると皆拾得できるのかねやっぱ?」


「このスキルはやっぱり珍しいんですか?」


「とりあえず敬語は必要ないぞ。面倒だしお互いに砕けて話そうや。それで質問の答えだが……。そうだな。俺が知る限りステータス閲覧を所持してるのは勇者だけだ。勇者は皆共通してステータス閲覧と召喚者のスキル持ちでな。後はそれぞれの固定ユニークスキルを1つ持ってる。ステータスを見たなら俺のユニークスキルはもう知ってるだろ? なんで俺がこれなのか知らないが、魔道具創造のスキルを持ってる」


「でも俺はステータス閲覧はあるけど、ユニークスキルは持ってないな……」


「恐らくお前の方は召喚者じゃないからだな。俺はこっちの世界に召喚されて来た勇者だが、お前さんは違うだろ。それに人間の体じゃないのも原因かもしれない」


 などと俺とタチカワさんが話していると、小さく、ぐぅーと言う気の抜けるような音がして、そちらを見るとエミリアがじっと体育座りしながら、顔を赤くして俺達を見ていた。

 マシロもどことなく不機嫌そうに俺を見ている。

 あれは空腹を訴えてるな。

 どうやらお互い話に夢中になりすぎていたようだ。


「あー。とりあえず続きは俺の家で話すか。娘も腹減っちまってるみたいだし、いつまでもこんな森の中ってのもな。お前も、その姿でなら村へ来れるだろ? ほら。追加のマナポーションもやるから、これ飲みながらついてこい」


 タチカワさんは俺に追加のあの青い薬を数本渡してきた。

 これはマナポーションという代物らしい。確かこれを振りかけてもらったら魔力が回復したな。


「さっきは体に振り掛けたが、本来は飲んで使うものだ。一応皮膚等からの吸収もできるんだが効率がえらく落ちるからな」


 それだけ言うと、娘のエミリアを抱えて、指輪を取りに戻る時よりは遅く(それでもかなり速い)、村へ向かって走り出した。


 俺とマシロと少しの間、顔を見合わせていたが、マシロを右手で抱きかかえてやると、タチカワさんを追って走り出した。


「つかあの人早すぎだろ……。本当に人間かよ」


 生命探知を発動してひっしに追いかけるが、少しでも速度を落とすと見失いそうな速度だ。


 生命探知と変幻の指輪で持って行かれる魔力を、貰ったマナポーションを飲むことで補給しようと、口に含む。

 だが、一口含んでみると、そのあまりの不味さに、思わず吹き出しそうになってしまった。

 物凄く苦くてしかも少し酸っぱい、あと変に後味が残る。

 吐き出しそうになるその液体を、むせないように必死に飲み込む。


「げほっげほっ! くっそまずい……!」


 だが実際効果があるようで、魔力不足の倦怠感が軽くなった。


 だが、しばらく進むと、また魔力が不足しだす。

 やはり生命探知と変幻の指輪の同時発動は想像よりずっと魔力を使うようだ。


「これ、量足りるかな?」


 結局俺は、村に着いた頃には、あの恐ろしく不味いマナポーションを3本飲み干すはめになった。


 村の入り口で待機してたエミリアとタチカワさんが俺達の姿を見ると手招きして村へ案内してくれた。

 こうして、あれだけどうやって侵入しようか悩んだ村に、こんなにあっさりと入る事が出来た。

 

 村へ入るとそのまま連れて行かれたのは、一軒の石造りの家だ。

 他の家に比べてみると、少し大きくて立派なのがわかる。

 どうやら、ここがタチカワさんの家らしい。


「ようこそ我が家へ。歓迎するぜ元同郷人! おいおい。どうした? 青い顔して。 体長でも悪いのか?」


そう俺にわざとらしく訪ねてくるタチカワさんは、ニヤニヤしていた。絶対分かってて聞いてやがる……。


「いや、お気遣いなく。ただあのポーションくっそ不味かったので……」


未だに、口の中に残るマナポーションの嫌な後味に少し気分が悪くなってきた。


「くっくっく。だろうなぁ。可能なら俺もあんなゲテモノ飲みたくねーからな。まぁ今回は必要経費だと思って諦めろ」


「あなた。お客様を玄関にいつまでも待たせないで下さい」


 タチカワさんと玄関で話していたら家の奥から女性の声で叱咤が飛んできた。

 奥さんだろうか。


「ああ。悪いナーシャ! ほら。お前もさっさと入れ入れ」


「……お邪魔します」


 タチカワさんの家は石造りだが、中にはしっかりフローリングが敷かれていた。

 案内されたこの部屋はダイニングのようだ。傍に小さいが暖炉もある。

 さらに隣は厨房になってるようで、そこには綺麗な金髪の女性がエプロン姿で料理を作っている。


「ようこそいらっしゃいました。娘のエミリアを助けていただき、ありがとうございます。私はナーシャと言います。ウイチの妻です」


 そう言ってにこりと微笑むナターシャさん。

 年齢は20代前半位だろうか?

 ナターシャさんは、その金色の髪を腰まで伸ばしており、青い瞳で艶やかな唇が特徴の、はっきり言ってかなりの美女だ。

 そしてなにより胸がデカい。

 これってG位あるんじゃないだろうか……。

 等と思わず思ってしまうくらいのモノが、服の中に押し込まれて窮屈そうにしているのが、エプロンの上からでもはっきり分かる。


「俺の自慢の嫁さんよ。どうだ美人だろー?」


 再びこれ以上ない位のどや顔をするタチカワさん。

 おのれリア充め!


「リア充死すべし……」

「はっはっは。僻むな僻むな。お前も自分で理想の嫁さん見つければいいだろ?」


 俺が呪詛の籠った返事をするといい笑顔でそんな事をぬかしてくる。


 異世界美人の奥さんとか本当に羨ましい。

 タチカワさんが羨ましすぎて、今なら本物のアンデッドになれそうだわ。

 なったら速攻でこの人に殺されそうだけど……。


「ちょうど夕食の準備が整っていますので、よろしければお掛け下さい」


「あっ。はい。……失礼します」


 タチカワさんにもっと言いたいことはあったが、ナーシャさんにそう言われ素直に椅子に腰かける。

 

 本当に綺麗な人だなー……。

 本物の金髪美人だ。肌も綺麗で胸もでかいなー……。

 

 俺の視線に気づいたのかナーシャさんは首を少し傾げて微笑みかけてくれる。

 めっちゃかわいい。


 くっそ! こんな可愛い金髪奥さんがいるとかタチカワさんがマジで羨ましい。


 これは断じてモテない男の嫉妬ではない!

 きっとまたアンデット特有の羨望の方なんだ!

 等と、内心で思いナーシャさんに見とれていたら、マシロが俺の指に噛み付いてきた。

 驚くことに、痛みもちゃんと感じた。

 久方ぶりに感じる刺激ではあるのだが、これはちっとも嬉しくない。


「いでっ。やめろマシロ。それ痛いからっ!」


「シャー……」


 対してなぜか不機嫌だ。こちらをちらりと睨んでくる。

 マシロがこんな態度を取ったのは初めてだ……。

 なんだ? そんなにいつもの肋骨に巻き付いていたかったのだろうか?


「蛇さん。私と一緒に食べよう?」


 暫しマシロを不思議に思ってみていたら、エミリアがそういってマシロに呼びかける。

 マシロは俺を少しだけ見て、そのままエミリアの方へと行ってしまった。


 一体なんなんだよマシロの奴……。


 そんなマシロの態度を不思議がってる間にテーブルにはナーシャさんが作った夕飯が並ぶ。

 

 料理の種類は少ない。

 白パンに野菜とベーコンのスープ。

 そして見たことのない魚の塩焼きが1つずつ。

 見た限り、この世界の家庭料理って感じだな。

 やはり米ではなく主食はパンのようだ。


「さて。んじゃ積もる話の前にまずは食事だが。お前さん今まで碌な物食べてないんだろ?」


「碌な物も何もまったく食べてない。そもそも食べることができなかったからな……」


「そうか……。マナポーション飲んだから知ってると思うが、その指輪をしてる間は、普通に物が食えるしこうして話す事も出来る。疑似的だが人間の体を魔力で再現してるらしいからな」


「一体どういう原理なんだ……」


「正直なんとなくしか、俺にも分からん。これでも魔道具には結構詳しい方なんだが、この指輪に使われてる技術は、今の人間では再現不可能なのもあってな。正直ある程度の考察は出来ても原理までは解明できてないんだよ」


「そんな貴重な物を借りてもいいのか?」


「どうせ俺が持ってても仕方ないし、もうも必要ない物だからな。そんな事より飯だ飯。俺もエミリア探し回ってたから腹減ってんだ! お前も話してばっかいないでさっさと食え食えっ!」


「……いただきます」


 タチカワさんに話を打ち切られ、俺はおとなしく前世の記憶通りに両手を合わせて食事をはじめる。


 まず白パンを一口。

 噛んだ瞬間、小麦とバターの風味が口いっぱいに広がる。

 夢中に貪るようにそのまま一つぺろりと平らげる。

 まさか、ただのパンがこんなに旨く感じるとは……。


 次はこのスープだ。

 具材は、人参に玉ねぎとハーブそれとベーコンだな。

 味はあっさりとした塩味だが、これもどこかほっとする味でとてもおいしい。


 最後にこの魚だが……。

 形はどことなく鮭の塩焼きににてるな。

 だが色は白身魚っぽいか。

 食べてみる、あっさりした塩気とハーブの香りで魚の臭みを感じない。

 味も白身魚特有の淡白な感じで食べやすい。


 どの料理もすごく美味しい。思えばこの世界に来て初めてまともに食べた食事だ。

 しかもこんな美人の手作り。あまりに嬉しくて涙が出てしまったのは仕方ないと思う。


「ご、ごめんなさいね? お口に合わなかったかしら……。

 娘の恩人にこんな物しか出せなくて……。

 まだこの村での開拓は始まったばかりで食糧もそう余裕が無いので……。ごめんなさい」


「い、いえ! 大丈夫ですよ。あまりに美味しいのつい涙が出ただけですからっ!」


「まぁ……。ありがとうございます。大したものではありませんが、好きなだけ食べてくださいね?」


「あ、ありがとうございますっ!」


 俺が泣いているのが、口に合わなかったと思ったらしく、ナーシャさんは甲斐甲斐しく謝ってきた。

 おまけに性格まで優しいとか、どんだけいい奥さん貰ってんだよこの人っ!

 内心でタチカワさんへの嫉妬を押し殺し、残った料理を平らげる。

 


 なおタチカワさんは俺の内心をわかってるのか、たまにこっちをみてにやにやしていた。

 凄く殴りたい。絶対返り討ちにされるからやらないけど……。


「ふふ。蛇さんこれも美味しいよ?

 はい。あーん」


「シャー……」


 一方マシロとエミリアは仲良く食事をしている。

 マシロもエミリアに肉の切れ端を食べさせて貰ってるようで、すっかりご満悦のようだ。


「はい。次はこれね。

 お口あーんしてね蛇さん。」


「シャ!」


 エミリアが持ってきたベーコンを大人しく口に運んでもらっているマシロ。

 どうやらエミリアは、この短期間で随分マシロの扱いを心得たらしい。

 マシロも特に抵抗せずおとなしくしていた。

 いや。あれは単に餌付けされているだけかな?


 こうしてこの世界に来て初めての食事は、俺の内心を余所に、穏やかな雰囲気に包まれていた。

次回は6/15の18時を予定してます。

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