↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スケルトンの冒険者 異世界生活記 ~人化の術で冒険者やってます~  作者: 肉巻きおにぎり
2章 スケルトンと人間
15/60

14 人の心と魔物の心

7/11 一部内容変更と追筆修正。

 マシロも無事に進化をする事ができた次の日、この森ともお別れする時が来た。

 遂に、俺達は森を抜けて、外へと出る事が出来たのだ。

 森の外に広がっていたのは、青々とした草原地帯。

 風に揺られた草の海が、穏やかに揺れていて、どこかのどかにも感じる景色だ。

 

 そんな草原地帯に、細いが、人の手によって作られたと思われる道がある。

 この道は見た限り、人の手で整備された跡ように思えるのだが、もしかして、この道を辿っていけば、村か街等の人が住んでいる場所が見つかるのではないか?

 可能性はあるな。

 あの森でゴブリン達と戦っていた人間達も、おそらくこの道の先から来た可能性があるし。


 しかし、長かったな……。

 初めは、森を1日で抜けてしまう予定だったのだが、まさかここまで広かったとは。

 

 ただ、悪い事ばかりではない。

 俺のLvも上がっているし、何よりマシロと出会えた。

 結果的に無駄な時間では無かったと思おう。


 この先に、できれば小さな村とかが存在しているといいんだがな……。

 もし、村を見つけたら、後は夜まで待機だな。

 その後は、予定通りに村に侵入して、こっそり物資を分けてもらおう。

 ちゃんと代金も払うし、素早く立ち去れば、後はどうとでもなるばすだ。

 俺には忍び足のスキルもあるのだし、多分大丈夫だろう。




 草原に作られた道を、ひたすらに進む俺達だが、未だ村や街は発見できていない。

 そろそろ陽が沈みはじめる時間か。

 

 仕方ない。

 今日は、この辺で野宿だな。


 ――おや?


 ふと、妙な感触を感じて、マシロの方を見てみると、俺の肋骨をその口で軽く齧っている。

 別に攻撃している訳ではない。

 これは俺に対して、マシロが何かを伝えた時の合図だ。

 

 どうやら今回は、夕飯を狩りに行っていいかを尋ねているようだ。

 進化したマシロは、知能も前より上がってるのみたいで、空腹の時はこうやって俺に合図をするようにしたようだ。

 

 そういえば、マシロの牙って毒があるんだよな。

 俺は毒無効スキルがあるからいいんだけど……。

 もし耐性スキルが無かったら、大変なことになってるんじゃないかこれ?


 マシロをそっと地面に降ろしてやると、俺も魔力の回復を兼ねて腰を下ろす事にした。

 生命探知を常に使ってるからMPの残りも半分近くまで減っているしな。

 この辺には魔物の反応も感じなかったし、遠くへ行かなければ、マシロが一人で狩りをしても大丈夫だろう。


 マシロはさっそく、草の海へと入っていく。

 さっそく夕飯を狩りに行ったのだろう。


 ――がさり。

 そんな草を掻き分ける音をたてながら、マシロが、1匹の兎を咥えて帰って来た。


 思ったよりも早かったな。


 おや?

 どうしたことか、マシロは、俺の前までくると、咥えて来た兎を俺の前に落とした。

 そしてそのまま、じっと俺を見つめてくる。


 食わないのか?


 不思議に思いマシロを見つめ返すが、マシロは取ってきた兎にいっこうに口をつけない。


 ひょっとしてこれ……。

 マシロは俺の為にこの兎を取ってきてくれた……とか?


 え? なにそれ。

 なんか、すごく嬉しいんだけど……。

 俺、物食えないけど。

 嬉しくて、なんだか泣いてしまいそうだ。

 涙腺が無いから涙なんかか出ないけどな……。


 マシロの気持ちは嬉しいが、この兎はお前が食べていいんだぞ。


 俺は、マシロを撫でてやると、兎をそっと差し出した。


 マシロは、しばらく俺をじっと見ていたが、やがて静かに兎を齧り出す。

 

 兎を食べ終えたシロは、満足したのか、一声鳴いていつもの定位置に戻ってきた。

 満腹により、ご機嫌のようだ。

 その日は草原の中に生えていた一本の木の下で、一夜を明かした。


 そして次の日。

 延々と続くと思われた道を歩いていた俺達だが、ついに人の集落と思われる場所を発見した。

 方角的には、あの大森林から北東に進んだ場所だ。

 大きな山脈があり、その麓の森にこの村はあった。

 

 どうやら山の麓の森の一部を、開拓して作られた村みたいだ。

 村の外では今も数人の男が、斧を使い木を切り倒そうとしている。


 村の様子を探るため近くで一番高い木の上へと登り、様子を見てみる。


 この村は、周りを木の柵で囲んでおり、石で造られた民家が50件位建っている。

 規模からして、小さな村だな。

 まだ作られて日が浅いのかもしれない。

 人口も100人いるか、いないか位だが、畑や家畜小屋、小さいが風車小屋なんてのもあった。

 作物は小麦をメインに育てているみたいだな。

 

 ……やっぱ水田は無いか。

 こういう山の麓とかだと、美味い米出来るって聞いたことがあるんだが……。

 やっぱりこの世界も米よりパンが主食なのかな?


 あと家畜は、俺が前世でよく知る牛や豚等ではなく、羊の様にもこもこの毛が生えている山羊みたいな生物だった。

 あれって魔物かな?

 しかし、もっふもふだな。

 ちょっと触ってみたい……。


 村の中では、今も小さな子供たちが数人、笑いながら駆け回っているのが目に入る。

 元気だな。

 他にも畑を耕している老人や、家族で買い物をしている親子。

 久しく見ていなかった、人間の生活というものが、そこにはあった。

 皆特に暗い表情をしてる感じはない。

 どうやらここは、規模こそ小さいが、とても活気のある開拓村のようだ。

 

 てっきり、魔物が存在するような世界だから、村の雰囲気はもう少し殺伐とした物なんじゃないかと、考えてたんだが。

 少し拍子抜けした気分だ。

 だがその分、俺が思ってたよりは、この世界は平和なのかもしれないな。

 

 平和そうな村なら、俺が侵入するのもたやすいだろう。

 あとは、予定通り夜まで待機だな。





 どれくらい時間がたったのだろうか。

 俺は飽きる事もなく、木の上で、じっと村の様子を見続ていた。


 最早、懐かしいとすら感じる人の生活風景。

 それをずっと見ていると、俺も、あんな普通の生活というものを、やっぱり心のどこかで望んているのだなと、悟ってしまった。

 

 分かっている。

 今の俺では、それが不可能なこと位。 

 しかし、このまま諦めずに進化を続けていけば、俺もいつか、人の社会の中に、戻れ日が来るのだろうか?


 気付ば、俺は見続けている村人達に対して、ある感情を覚えている事に気付いた。

 それは嫉妬。いや、羨望とも言えるか。

 

 どちらにしろ、嫌な感情だ。

 意識しだすと、どんどん強くなる。


 ダメだな。

 気分がだんだん暗くなってしまっている。

 なぜあの人達に対してこんな気持ちになる?



 そう言えば、前世で読んだ小説では、アンデッドは命ある者を羨み襲うって設定が書いてあったな。

 今の俺はスカルウォーカー。

 確かにアンデッドだ。

 ならば、この暗い感情が芽生えたのはその為だとでも? 


 ……はははっ。

 空想の中の話だけだと思っていたが、案外その設定、当たってるのかもしれないな。

 この骨の体そのものが、幸せそうな生者を羨んでるというのか?



 村の人々から目が離せない。

 幸せそうな人々の様子に、だんだんと理不尽な怒りを覚える。


 それは、何かがおかしい。

 八つ当たりも良い所だ。

 自分でもそれが分かっている。

 だが、思考が靄がかかったようにぼやけて、定まらない。

 

 溢れそうになる暗い感情を、心を奮い立たせて追い払うとする。

 

 このまま村を見続けているは、何かヤバそうだ。

 とっさに視線を外そうとしたが、俺は村人たちからは目が離せない。

 

 なぜ俺はこんな目に合っているのに、あいつらは楽しそうなのだ。

 なぜ俺だけがこんな目に合わなければならない。

 なぜあいつらは生きていて俺は死んでいる?

 なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ……。


 幸せそうな人々を見ていると、だんだん理不尽な感情が溢れそうになる。

 暗い感情に、思考が塗りつぶされていくようだ。


 ああ……まずい……。

 このままだと戻れなくなりそうだ……。

 痛みを感じないはずの体なのに、頭痛を覚えた。


 頭が割れそうだ。

 ああ。くそっ。

 こんな思いをする位なら、いっそ目障りなあの人間達を、今この手で……。


 ――こつん。

 ふと、俺の胸に小さな衝撃を感じた。

 

 視線を移すと、マシロが頭を俺に頭を擦り付けている。

 見上げてくるマシロと目が合った。

 マシロは何かを感じているのか、まるで心配するように、その赤い瞳で俺を見つめている。

 

 そっとその頭を撫でてやる。

 マシロが嬉しそうに目を細める。

 その様子を見ていると、さっきまでの暗い感情が少しずつ晴れていく。

 マシロの無邪気さに毒気を抜かれたような気分だ。

 

 俺の心て、本当に人間のままなのかな。

 それとも、実はもう完全に魔物なのか。


 もしマシロがいなかったら、俺はあの暗い感情に支配されていた?

 考えただけで体が震えそうになる。

 怖い。

 それを否定できない自分の事を、恐ろしいと感じてしまう。

 

 ……落ち着け。

 俺の心はまだ人間だ。

 心まで魔物になったわけでは無い。

 そう自分に言い聞かせるように、俺はしばらくマシロを撫で続けていた。



 日が沈み現在は夕刻。

 俺は村近くの、木の上で胡坐をかき、村やその周囲の様子を時折見ながら時間が過ぎるのをひたすら待っていた。

 ちなみにマシロは、俺の足元に丸まって眠っている。


 あの俺を襲った、暗い感情は、今は完全に消えている。

 マシロを撫で続けていたら、自然と落ち着いて、今はいつも通りだ。


 案外、俺は自分の想像以上に、今の状況に疲れていたのかもしれないな。

 もし、マシロと出会わず、ずっと一人きりだったら、俺はあのまま自分を見失っていただろう。

 

 ……本当に、お前と出会えてよかったよ。

 ありがとなマシロ。


 眠っているマシロを、起こさないように軽く撫でてやりながら、なんとなく辺りを見回していると、ちょうど村へと帰っていると思われる女の子の姿を見つけた。


 艶やかな黒髪を肩まで伸ばし、灰色のワンピースを着ている5、6歳位の女の子だ。

 その手には小さなバケットを持っていて、中には見たこと無い蒼い花が沢山入っていた。

 薬草か何かだろうか?

 お使いにでも出てたのかな。

 でも、あの年頃の子供が外で1人なんて、危ないんじゃないか?

 魔物も出るかもしれないし。

 それともこの世界だと、これくらい普通なのかな?

 俺はその女の子を少し心配して、目で追ったがもうすぐ村の入り口だし、流石に危険は無いだろうな。


 等と思ってたんだが、見事に予想が外れたようだ。

 突然、その街道の脇から3人の男が飛び出してきて女の子を取り囲んできた。


 全員それぞれに武器を持ち、穏やかな雰囲気じゃない。


 ここからでは聞き取れないが、男は女の子に何か語りかけているみたいだ。

 女の子は脅えた表情で、距離を取ろうとし、そんな女の子を男達は下卑た表情を浮かべながら捕まえようとしている。


 あかん。

 完全に事案だこれ。

 


 すると突然、女の子は右手を上げると、その掌に火の玉が出現した。


 おおっ!?

 あれは……。まさかの魔法か?

 あんな小さな子でも使える物なのか?


 女の子は、そのまま手を振り降ろし、その火の玉を正面の男へ放つ。

 下卑な表情を浮かべていた男達は驚愕の表情をしている。


 そりゃそうだ。

 あんな女の子が、いきなり魔法を使ってくるとか俺だってビビる。


 放たれた火の玉は見事に正面の男に命中。

 服に炎が燃え移り、男は悲鳴を上げて地面を転がり、懸命に火を消している。


 うわー。

 この世界の幼女は強いなー……。


 女の子は、更に続けて2発の火の玉を放つが、残りの男達はその攻撃を予想してたのか、素早く回避するとそのまま女の子へと一気に詰め寄る。

 女の子の方は、慌てて更に2つ火の玉を出現させるが、それより早く男の一人が女の子の腕を捕まえて押し倒した。


 ああなると大人複数対子供1人だ。

 流石に身体能力の差が有り過ぎる。

 男達は女の子を2人掛かりで取り押さえると、そのまま連れ去ろうとしているようだ。

 たが、そこに火を消した男までも加わると、暴れている女の子の腹をその拳で殴りつけた。


 っ! おいおい。あんな幼い子相手にいくらなんでも手荒すぎるだろ。


 殴られた女の子は、痛みで嘔吐して、そのままぐったりと動かなくなった。

 どうやら気絶してしまったようだ。


 男達は、気絶した女の子を担ぐと村とは反対側へ歩き出した。


 流石に、このままじゃ不味いよな……?



 俺は、寝ているマシロを揺り起こすと、広範囲の生命探知を発動。

 先程の男達と女の子のは……あった。

 あれだな。


 恐らく、このまま行くと、あの男達との戦いは避けられないだろうな。

 最悪、殺すことになるかもしれない。

 

 人を殺す……か。

 当然前世でもそんな経験が無い。


 思えば日本でも、ニュースを視れば、毎日誰かが死んだって話を見ない日は無かったな。

 実際、それを聞いても、自分とはどこかずれた世界の話だと思っていたんだが……。

 それを俺が、今からやるかもしれないとは……。


 終わった時、はたして俺は、最後まで人の心を保ち続ける事が出来るだろうか?

 

 正直不安はある。

 だが、それでも俺はあの女の子を助けたいと思ってしまったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。