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スケルトンの冒険者 異世界生活記 ~人化の術で冒険者やってます~  作者: 肉巻きおにぎり
2章 スケルトンと人間
11/60

10 悪いことは重なるもの

7/11 加筆修正

8/6 全体的に話の流れを少し修正。戦闘結果等は変わりません。

 森の脱出を目指してか早半日。

 そろそろ陽が暮れそうだ。

 今は少しでも早く、この森を抜けてしまいたかったのだが、そうも簡単にはいかなかった。


 この森が、思ったよりも広大だった理由ももちろんあるのだが……。問題はそれだけではなかった。

 あの遺跡から東に進んだとき。森の一角ではあるのだが、大型の魔物が多数生息している場所があったのだ。

 それも、複数。

 

 生命探知に大型反応があれば、俺は急いで迂回して、慎重すぎる位の注意を払い、こっそりと進んでここまで来た。

 気付かれないように忍び足を念入りに発動し、ただ只管にこっそりこっそりと。

 私は木。森の雑草の一本。

 そんな事を念じてどうか気づかれませんようにと。

 時間にしたら1時間くらいだったはずだが、ものすごく疲れた。主に魔力の消費量と精神的疲労の二つの意味で……。

 

 そんな感じでゆっくりと進めば、当然距離を稼げる訳がない。

 安全の為とはいえ、どうにももどかしいと思いつつも、俺は隠密を徹底して進んだ。

 

 ちょっと慎重すぎないかだって?

 だが、それも仕方ない事なのだ。

 なにせ俺は、この大型反応の恐怖を知ってしまったのだから。


 

 それを知ったのは、遺跡を出て進み始めて数時間しての事だった。

 当初の目的通りに東に向かい、真っ直ぐに進んでいた俺は、警戒の為に一定間隔で生命探知を使っていた。

 ときおり引っかかるのは小さな反応。主にゴブリンの様な小型の魔物の物だった。

 一々相手にしていては陽が暮れると思い、そういった反応は無視して先に進み続ける。

 だが、何度目だろうか。

 俺が再び生命探知を使った時に、一匹の大きな魔物の反応が引っかかった。

 それは明らかに、あのホブゴブリンよりも強力な反応だった。



 俺は生命探知に引っかかったこの大型の反応を見て、考える。

 このまま真っ直ぐに進むとこの魔物と鉢合わせるな。


 ならば迂回して進むか?


 だがここに来るまでにも結構な時間を使ってしまっている。可能なら今日中に森を抜けてみたい所だな。


 ならば、どこかに隠れてこの反応が通り過ぎるのを待つか?

 そして通り過ぎた後に、また進み始めればそれで済む話か。

 今考えたらこの思考そのものが愚かだったと思う。


 正直に言おう。

 俺は初めて引っかかったこの大型反応に、要らぬ好奇心が生まれたのだ。

 この大型反応の魔物は、一体どれくらいの強さの魔物なのだろうかと。

 

 止めればいいのに、そんな興味が出てしまった為に、結局はこの反応の正体を確かめて進む事にしたのだ。

 当然、こんな大きな反応だ。

 強力な魔物であるのは容易に想像がつく。


 なので、俺は一先ず高い木の上に登る事によって、その反応の正体を安全に確認してみる事にしたのだ。

 その時の俺は、もしこの反応が危険な魔物であっても、生命探知と忍び足があれば逃げ出す事は容易だろうと、そんな軽い気持ちだった。

 

 どう考えても、明らかに危険な相手なんだから、この時の俺はさっさと逃げ出すべきだったのだ。

 そして案の定、俺はすぐにその軽率な行動を後悔する事となった。



 その魔物を初めて目にした時に、俺は恐怖で動けなかった

 幸いなのは俺が木の上に上っていたからか、その魔物に存在がバレていなかった事だ。

 もし、正面からコイツに出会てしまったら、俺は逃げだす事すら出来ずにそのまま終わっていた事だろう。

 

 それは正に俺の想像を遥かに超えた魔物だったのだ。


 大型反応の正体。

 そいつは、紫色の外殻に鋭い大鎌を持った全長5メートルはある、巨大な蟷螂の魔物だった。

 まるで死神の鎌を想像させる、巨大な2本の大鎌は鈍い輝きを放っており、人が身に着ける金属の鎧など、簡単に両断できるのではないかと思うくらいに鋭い。

 この蟷螂は、周囲に恐ろしい程の威圧感を放っていて、恐怖により俺の体が無意識に震えてしまう。

 

 そして、何よりも驚愕したのはこいつのステータスだ。


[種族] ギガント・キラーマンティス

[状態]  通常

[ランク]  B (最終進化)

[Lv]   55/80

[HP]   650/750

[MP]   400/490

[攻撃]   688

[防御]   545

[魔法攻撃] 450

[魔法防御] 320

[素早さ]  532

[所持スキル]

 大鎌乱舞Lv5 鎌鼬Lv5 真空刃 食い千切りLv4

 剛刃撃 身体能力強化 風魔法Lv6 捕食者の威圧

 打撃耐性 斬撃耐性 刺突耐性 麻痺耐性



 ランクBの魔物!? しかも、さ、最終進化だと……。

 明らかに序盤に出てきていい魔物じゃない。

 絶対ゲームとかだと終盤とか隠しダンジョンとかに出る魔物だコイツ……。

 つかLvもステータスも馬鹿みたいに高ぇ……。


 もし見つかったら、文字通り首が飛ぶ事になる。

 しかもスキルを見る限り、なんとこの蟷螂は魔法まで使うようだ。

 近接戦闘においても、かなりの強さを発揮しそうなのだが、魔法やスキルを考えると、遠距離でも十分戦えるのではないだろうか?

 俺が死闘の末に勝利した、あのホブゴブリンなんかとは比べ物にならない。

 正真正銘の化け物だ。


 あまりの強さの違いに、俺は気配を殺して、どうかこのまま通り過ぎてくれと、ひたすら祈る事しかできなかった。

 その蟷螂は周囲を見回し、時折ギチギチと顎を鳴らして警戒している様子だが……。

 まさか、こいつは俺の存在に気が付いてるのか?

 

 いや……。

 どうやら違うようだ。

 少し遠いが、この蟷螂が警戒している森の奥に、大きな反応がある。

 こいつはその反応を狙っているのか?


 幸運にも、この蟷螂は俺に気付くことなく、再び森の奥へと消えてくれた。

 蟷螂が消えた後、程なくして森の奥で激しい戦闘音が聞こえてくる。

 どうやら、大型の魔物同士の戦闘が始まったようだ。

 轟音が周囲に響き渡り、遠くの木々をなぎ倒し、爆風が土煙を舞い上げている光景を遠目に確認したのだが、どんな相手と戦ってるのかは、分からかった。

 

 流石にあんな戦いに、巻き込まれては命は無い。

 俺は急いで木から飛び降りる。

 あの蟷螂と同じような反応が複数いる時点で、この場所はかなり危険地帯だ。

 先ずは周囲の安全を確保。

 魔力を多めに使う事を意識して、俺は最大範囲の生命探知を発動する。

 疎らではあるが、大型の反応が10匹位見える。

 これ全てがあの蟷螂クラスか……。

 ここは魔界か何かかよ!

 

 どうやら蟷螂クラスの化け物達は、この森の一部分のみを縄張りにしているようで、その限られた範囲内で争い続けているようだ。

 まるで蠱毒みたいだな……。

 余程、何かあいつらが執着するような物でも、この森には有るのかもしれないが、それを確認しに行く事はしたくない。

 正直、もうあんな化け物と出くわすなんてのは勘弁だからな。


 俺は、生命探知を常に最大範囲で発動させ続け、大型反応を迂回しながら進み続ける。

 正直、かなりMPを持っていかれて辛いが、今は少しでも早くここを抜けてしまいたいので、生命探知を発動させ続けて必死の思いで進み続けたのだ。

 その甲斐あってか、俺は蟷螂達の縄張りから抜け出すことに成功した。


 とまぁ、こんな感じで大幅に時間をロスしてしまったから俺は未だに森の中を彷徨い歩くことになってるのだ。


 それからは生命探知を後半に長時間発動させた事によって失った魔力を、回復させる為に休息を取った

 幸い蟷螂達の領域を抜けた先で、小さな洞穴を見つけられたので、そこで一先ず休息を取り、MPがある程度回復したのを確認して再び森を抜けるために歩き出した。

 あの洞穴は、最悪今日中に森を抜けられなかった時の仮拠点にするか。

 生命探知を使うにもMPを使う。

 いくらLvが上がって総量が増えているとしても、そこまで劇的に増加するわけではない。

 今の俺が生命探知を使い続けても、限界までMPを使い続けても、せいぜい3時間が限度だ。

 

 疲れ知らずのこの体であっても、流石に原動力の魔力が減れば、動きが鈍ってしまう。

 時間経過で回復するのは救いだが、それでもこうした安全に休める場所が無いと、それも難しいからな……。



 ――そして冒頭の夕暮れまで時は戻る。

 結局、洞穴を出て歩いてみたが、今日中に森を抜けることは出来そうに無いと判断した俺は、あの洞窟に戻ることに決めて進んでいた。


 夜になると、今度は夜行性の魔物も出てくるだろうし、無理は禁物だ。

 一応俺には、夜目のスキルがあるので、戦えなくはないだろうが危険は出来るだけ避けるべきだと思う。

 もう今日はあの洞穴に戻ってゆっくり休もう。

 例え眠れなくても、今はゆっくり魔力を回復させられる場所でじっとして居たい。

 そんな事を考えながら俺が洞穴に向かって歩いている時だ。

 用心の為に一応発動させていた小範囲の発生命探知に、小さな反応が一つ引っかかったのだ。


 この反応。

 魔物……か?

 反応の大きさは結構小さいようだが、小型の魔物だろうか?


 なんか、かなりゆっくりとした速度で移動しているみたいだな……。

 場所は、ちょうど洞穴までの帰り道。

 避けて進んでもいいのだが……。

 小型ならそこまで苦労せずに倒せるかもしれないか?


 俺は別にあのホブゴブリンみたいな戦闘狂ではない。

 むしろ、避けられる戦いなら避けるべきだと思う位の安全思考者だ。

 だが、逃げてばかりでは、俺のLvが上がらないのだ。

 確かにこの世界に転生した当時に比べれば、俺は強くなったと思う。

 だが、俺なんかより強い魔物は、まだまだ存在する。

 今日見たあの蟷螂とかがいい例だ。

 

 そういった魔物に、今後不意に遭遇する可能性もゼロではない。

 そういうアクシデントの時に、少しでも生存の可能性を上げる為には、地道にレべリングをする必要があるだろう。

 結局この世界で安定して生きていくには、倒せそうな敵を見つけ可能な限り戦うしかないのだろう。


 ――よし。戦おう。


 こいつを倒さなかったら、あの洞穴までやってくるかもしれないしな。

 魔物の反応も、見たところこいつ以外は無いし安全を確保したらそのまま洞穴に戻って夜が明けるのを待つとしよう。


 そう結論した俺は、生命探知の反応に向かって走り出す。

 やがて、たどり着いた場所には、奇妙な物体が存在していた。

 サイズ的には人間の子供位だろう。

 巨大なアメーバと言えばいいのだろうか?

 泥水の様に濁った茶色の体。

 まるで、ドロドロの粘液の塊のようなその魔物は、ゆっくりと地面を這うように進んでいる……。


 なんだこいつ……?

 随分気持ち悪いな。

 とりあえず、ステータスを確認してみよう。



[種族] アシッドスライム

[状態]  通常

[ランク]  D

[Lv]   8/20

[HP]   55/55

[MP]   30/30

[攻撃]   30

[防御]   65

[魔法攻撃] 20

[魔法防御] 45

[素早さ]  8

[所持スキル]

 酸弾 腐食 分裂 増殖 

 HP自動回復Lv2 打撃耐性

 

 おお。

 こいつスライムなのか。

 しかし前世のゲームで見たのは、もう少し可愛いらしい見た目だったんだが……。

 こいつは、ただ不気味だな。

 ちょうど食事中だったのか、その体をよく見てみれば、溶けてボロボロになった小動物の死骸がいくつも浮いていた。

 取り込んだ生物を体の中で溶かして食べるようだ。

 なので今はなかなかにグロテスクな見かけをしていて、正直かなり気持ち悪い。


 ステータスはDランクの魔物にしては低いな。

 スライム系ってやっぱりこの世界でも弱いのか?

 これなら俺でも倒せそうだな。


 アシッドスライムは、どうやら俺の存在に気付いたようで、ゆっくりとした動作で俺に向かってきた。

 速度はかなり遅い。

 素早さ一桁しかないもんな……。

 これなら万が一の時に逃げ切る事は容易だろう。


 俺は素早くナイフを抜いて走ると、すれ違い様にスライムを切りつけた。

 大した抵抗も感じず、刃を受けたアシッドスライムの体の一部が飛び散るが、特に大きなダメージを受けていないのか、構わず向かってくる。

 更に4、5回切り付けるもやはり大したダメージは無いようだ。



[種族] アシッドスライム

[状態]  通常

[ランク]  D

[Lv]   8/20

[HP]   48/55

[MP]   30/30

[攻撃]   30

[防御]   65

[魔法攻撃] 20

[魔法防御] 45

[素早さ]  8

[所持スキル]

 酸弾 腐食 分裂 増殖 

 HP自動回復Lv2 打撃耐性


 うわっ……これは時間が掛かりそうだ。

 しかも、アシッドスライムをよく見ると、切り付けた個所の再生が既に始まっているのが確認できる。

 体をいくら攻撃しても倒しきれないか?

 耐久型の魔物はやりにくいな……。どこかに急所でも無いか?


 少し離れて様子を見ようとした俺に、アシッドスライムが突然震え出し、体から何か液体のような物を飛ばして来た。

 なんだか気持ち悪いので、俺は咄嗟に横に回避したが、その時背後でジュッと言う音が聞こえた。

 気になって振り向くと、なんと液体を受けた大木に、大きな丸い穴が空いていたいた。


 今のは、酸弾のスキルか。

 思ったより威力が高そうだな。

 このまま闇雲に攻撃し続けても危険そうだな。


 そう思い更に距離を空けると、改めてスライムを観察する。

 正直凝視したい見た目ではないのだが今は仕方ない。

 嫌悪感を抑え、どこかに弱点のようなものは無いかと探すと……。


 おっ。なんだあれは?


 取り込まれた一匹の小動物の死骸の近く。

 その付近に直径10センチくらいの赤い球体が浮いているのを見つける。

 自然物じゃないよなあれ……。

 となると、あれがスライムの核とかだろうか?


 少し試してみるか。

 俺は手にしたナイフを、素早くスライムに投げ放った。

 まっすぐに飛んだナイフは、スライムの体を容易に貫通していく。

 そのまま勢いを落とさずに核と思われる物体に深々と刺さる。


 途端にスライムに変化が起きた。

 突如、狂ったように激しく暴れて、辺りに酸弾を滅茶苦茶に放ち出した。


 うわ!? 危ねぇ!?


 急ぎ後ろへと退避して様子を伺うと、アシッドスライムの周りは大参事だった。

 所々から煙を上げて地面や草木が溶けている。


 ひとしきり暴れたスライムは、徐々にその体積を減らしながら、やがて核だけを残し動かなくなった。



【経験値を88獲得しました】


 た、倒せたのか?

 しかし最後の最後にあんな攻撃をしてくるなんて……。

 あれ接近戦で止め刺してたらヤバかっただろうな。

 とりあえず、核に刺さったままのナイフを回収するか。


 動かなくなったアシッドスライムの死体へと近づき、俺はその核に未だ刺さったままのナイフを引き抜いたのだが……。


 げっ! 刃が溶けてる……。

 柄を残し刺さった刃は完全に溶かされてしまっていた。


 俺の貴重な武器が……。


 まぁ、あれだけ強力な酸弾を放ってくる魔物だ。

 恐らくこの核が、あの強力な酸を生み出している部分だったのだろう。

 そこに金属の刃なんか突き込めば、こうなるのが当然か……。


 唯一の救いは切り札であるククリを使ってないことか。

 あれは、変えが効かない俺の切り札だ。

 手入れ碌にできない今の状況で、常に使う武器ではないので今は温存していた。

 それで今回はナイフをメインに戦ったのだが……。

 せこい貧乏性に救われたな。


 だが、これだけ苦労してスライムを倒したのに、Lvも上がらずに武器も1つ失ってしまった。

 はっきり言って、赤字の方が大きい状態だ。

 今度からはスライムを見つけても無視しよう……。


 しかし今日は出会ったら即死するような化け物の領域を抜けたり、スライムに武器を一つダメにされたり……。

 散々な日だったな……。


 俺は肩を落とし、重い足取りで洞穴へと引き返するのだった。

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