第三十八話 英雄の終わり
「ふんぬー!!!」
アキタ、ジョエスト、グラントの三人は力一杯聖魔門の扉を押す。
「だ、ダメだ。びくともしねぇ」
「アキタ隊員、そう言えば君はバエルの力が残っているんだろう? その力でなんとかならないか?」
「えー? 出来るかなー。にへへへ……」
「何ニヤけてんだよ。やれさっさと」
アキタはエーテルが出ない体質のため、魔法の様な力は使えなかった。しかし、今はバエルが残した大地を操る力がある。新たな力を手にしたアキタは内心嬉しくて堪らないのだ。
「でも残念です。この門に触れていると力が使えないみたいっす」
バエルの力が発覚した後、ある程度力むと発動することが分かり任意に使えると思いきや、聖魔門の前ではそれが使えなくなっていた。
「そうか……。本来聖魔門の開閉には膨大なエーテルが必要のアナリシスは言っていた。そんのものは今用意出来ないし……」
ジョエストは頭をポリポリと掻きながら思案する。そして徐に顔を上げる。
「よし、私は今からグランベルを呼んでくる。門を出るぞ」
「え? 閉めなくて良いんすか?」
「良い。君には別の重要な任務を与える」
「え、任務すか?」
「今から言うことを良く聞いて迅速に行動してくれ」
ジョエストはアキタとグラントに指示を出すとブランクの中へと進んで行った。
「グラン! クレール!!」
大量の魔獣相手に必殺技を叫ぶグランベル。何処に持っていたのか、いつの間にかマスクをしている。魔獣達は大分駆逐したが筈だがまだまだ現れる。
「どこから湧いてるんだコイツらは!」
グランベルもいい加減に飽きてきたかと思いきや、
「悪の根源を根元から絶つ!」
そう言うと構えを変える。
「煌めけ閃光! グラン・エクレール!」
グランベルは構えから剣を突き出すとそのまま光を纏い突進する。走る訳ではなく、突き出した勢いで滑る様に前進していく。その速さは目にも留まらぬ程で、連撃とすることで縦横無尽に戦場を駆け巡る。その機動は雷鎚の如く鋭く無規則だ。
「グランベルー!」
遠くからジョエストが向かっているがグランベルは自分の世界に入り込み気が付かない。
「く、まだ湧くか! しかし魔装騎士グランルミナリオはこんなことでは挫けない!」
「楽しんでるな……。おーいグランベルー!」
「とぅ! グラン!」
グランベルはまだ気付かずに必殺技を繰り出そうとする最中に割って入るジョエストの腹の底へ響く声。
「グランベル!!!!」
「エクレ、! な、なんだ?! ……、ジョエストか……」
「お楽しみの所申し訳無いんだが、ここは引くことにする。一緒に門の外まで来てくれグランベル」
「か……勘違いをしていないか? わ、私はグランベルでは無い。魔装騎士グランルミナ……」
「わかったわかった。行くぞグランベル」
「……」
ジョエストはグランベルと門を目指し空を駆ける。するとグランベルは徐にジョエストへ近付く。
「このことは内密に頼む……」
「大丈夫だ。分かっている」
「助かる」
みんな分かっているぞ、とジョエストは言いかけたが止めた。
「ニアが心配だ……」
「一旦引くだけだ。門を閉めることは諦めたよ。ムラクへ向かう魔獣を退けたらまた中に戻れば良い。それにニアにはリンクスがある。大丈夫だ」
「しかしジョエスト、このまま帰ってもすぐ奴らに突破されてしまうぞ」
「それも大丈夫だ。足止めの手は打ってある」
そう言うジョエスト達の足元には魔獣達がもう追いついていた。じきに抜かれるであろうその時、魔獣達の進撃が止まる。先頭で盛大な土煙を上げ断末魔の様な叫びが響くそこには魔獣達の行く手を遮る様に無数の大きな穴の列があった。
「落とし穴を仕掛けておいた。エーテルが有り余ってるのでね。炸裂魔法よりも強力な爆炸魔法をフルパワーで開けた穴だ。かなり深くできたよ」
魔獣達は次々とと穴に引っ掛かる。しかし大量の魔獣に穴はすぐにいっぱいになりそうだ。
「上手くやってくれていれば良いが、アキタ隊員……」
二人は門の外へと急いだ。




