第十七話 門が動くとき
「みんなー、仕事だぞー」
総務課に呼び出されたジョエストが帰って来た。
「次はなんなんすか。また何か捕まえるんすか?」
「私達って防魔隊なのかなあ」
ニアとアキタは半ば投げやりだ。
「次は門の点検調査任務だ」
「はーい、隊長。それ防魔隊関係あります? 城壁の門は管轄外だと思いまーす」
ニアは小さく挙手してから発言する。
「それがただの門じゃないんだな。聖魔門なんだ」
「聖魔門!? 古代からある聖域との隔壁、開かずの門ですよ? 点検なんてするとこないでしょ?」
ジョエストは席に着き、用意してきたお茶を置く。
「最近、突然門扉が発光するのを中央が確認したんだそうだ。それが何か確認して来いとの御達しだ」
「だからそんなの、私達じゃなくて中央とか、そもそもそこら辺は学術院がやることじゃないです?」
このままではホントに便利屋になってしまう気がしてならない。そんな表情のニアにジョエストは困った顔をしながら小声で言う。
「うーん、これは極秘事項なんだが、今回、この件に関して神智に触れる者達が調査に名乗りを上げた。で、先方の要望で予備隊も是非にとご指名って訳だ」
「もう、是非にってお茶会じゃないんだから……」
はははと笑うニアはアナリシスと言う語に引っ掛かる。
「ってアナリシス!? 滅多に人前に出て来ないあの集団が?」
「ちょ、ニア隊員! 声が大きい!」
ニアは驚きを隠せない。一般には半ば寓話の存在と思われている、一部の者しか実在を知り得ない、ムラク最奥にある秘められた智慧を解析するためだけに存在する者達のその名。その集団が外の事象に興味を示し接触しようとするなど、ニアの知る歴史上には無かった。
ジョエストは咳払いをして仕切り直すように声を整える。
「そうだ。公式な記録ではここ数百年の間ずっと沈黙していた門の動きに上層部のみならず、世間から隔絶された《《奥の院》》までザワついているってことだ。もし門が開かれれば、空白の獣達が一気に迫って来るかも知れないからな」
ジョエストはお茶を啜る。
「まあ詳細は資料を読んでおいてくれ。実行は先方の用意ができ次第だが、此方も数日の準備期間を貰っている。資料にはアナリシスに関する部分は省かれてるからそのつもりで。あ、だから予備隊が門を点検調査するって体になってるから、アナリシスのことは他言無用で頼むよ」
「はい」
心なしか目が輝いているニア。
「あ、ダメだ。ニア、頼んだわ」
資料を数枚捲ってすぐに目を伏せるアキタ
「もう、仕方ないなぁ」
いつになく素直なニアにアキタは少し戸惑う。
「な、なんか熱でもあんのか?」
そのときニアの心中はある希望が芽生えていた。
「アナリシス、ここでコネクションを作ってみせる」




