第十四話 残された物
「なんだ、これは……」
グラントは木っ端微塵に吹き飛んで更地になった建物跡に立ち尽くしている。
数時間前。
「グラント部隊長! 至急現場に来てください!」
ブラックオウルことジョエストが拝金教団施設を吹き飛ばしてから一夜たった警縛局、警縛隊部隊長補佐のミシャルが駆け足で報告する。
「なんだよ、あそこは黒覆面クソ野郎が粉微塵にしてったろうが、何も残ってねえだろ? あー、あの時のジジイ無理矢理でも捕まえとくんだったぜ」
「粉微塵になった跡が問題なんです!」
ミシャルの目が血走っている。
「わーったわーった、行きますよ」
そして今。
立ち尽くすグラントの眼前には、巨大な魔法陣が描かれている。建物が破壊される前は床の下にあったであろう、一階部分を覆う程の大きな魔法陣。
「調査部の話では、この魔法陣は機能していないそうです。ただ、今世間一般で使われている魔法パターンのどれにも当てはまらない紋様とのことで注意が必要だそうです」
「拝金教団……、ソロモン派の儀式、か?」
グラントがボソボソと独り言を呟いている間に移動したミシャルが呼ぶ。
「部隊長! こっちです!」
「なんだ、まだあんのか?」
そのミシャルの足元には、
「扉だな」
床板を持ち上げる形の扉。隠し扉だろうか。
「です。まだ誰も降りてません。調査部の確認を待って、っあ!」
グラントは躊躇なく扉を持ち上げ開く。
「んなことしてると有るものも無くなっちまうだろ」
「あ、待ってください!」
二人は扉から下へ伸びる階段を降りていく。照明グリフで照らし出される石壁は古めかしく、苔の生えた階段は人がすれ違える程の幅がある。
かなりの段数を下った先、
「広間か……」
二人は広間に出た。天井は高く、照明グリフの明かりが薄っすら届く程度。
「ヤケに綺麗だな……」
降りてきた階段には歴史を感じさせる付着物があったが、ここは不自然な程に、まるで人が隅々まで手入れしたかのように綺麗だ。
緩やかな円になっている広間の壁沿いをゆっくり歩く。注意深く周囲を見ているが何も無い。薄っすら見える反対の壁にも特に横穴や通路も無いようだ。暫く歩き、入って来た所の反対位置までやって来た所で、
「部隊長! 通路があります!」
「わかるよ、隣にいるんだから」
降りてきた階段と同じ程の幅のその道は思いのほか長い。終わりが無いのではないか、途中で引き返すべきだったかと不安になった辺りで光が見えた。
「光です! 部隊長!」
「わかるってよ、隣にいるんだから。おんなじ方みてんだからよ!」
と言いつつ自身も不安だったグラントの声は明るくなる。
長い地下道を抜けた先、光の元へ出たそこは、
「川だ」
大きな川に出た。それはムラクの城壁内を流れる川が流れ込む大きな河川だった。
「こんな所に繋がってんのか……」
「何も無いですね」
見渡す限り砂利と川。ムラクの地下で何かが行われ、此処に痕跡が残されていたとしても、雨で流量が増えれば流されて何も残らないだろう。
「取り敢えず調査部に連絡入れろ。調査部に現場引き継いだら帰るぞ」
「了解です!」
ムラクの地下に存在した広大な広間と地下道。ソロモン派は何を行っていたのだろうか。グラントは溜息を吐きながら悩ましげに頭を掻く。
「嫌なんだよなぁ。学者様を頼るのは……」




