第九話 片隅の伝説
ある晴れた日の東方防魔局。
「くそー。なんで雑用ばっかなんだよ」
「文句は言わないアキタ隊員」
「おーいアキター、こっち草溜まったから回収お願ーい!」
予備隊の三人は防魔局の草むしりをしていた。
「こんなの魔法でどうにかなんねんすか。草むしりのグリフとかねんすか?」
「中央に行けばあるかもね」
せっせと草をむしり取るジョエスト。
「中央の学術院なら日々新しい魔導技術が産まれているから、そんなのもあるかも知れない」
「おーい! おー……っくそ」
そんな二人の遠くで大声で呼ぶニアの様子がおかしい。
ニアは魔法で背丈程の草の山を持ち上げる。草の塊は日を遮り影を作る。
「お、おいおい……」
塊の影に入ったアキタの手が止まる。
「人の話しを……」
ニアが手を振りかぶると、高く上がった草の塊も合わせて動く。
「ま、待て!」
「聞けー!」
容赦なく振り下ろされるニアの細腕は、アキタ達の脳天に草の塊を落とす。
「うあああ!」
数分後、草の中から這い出したアキタ達は暫し休憩となった。
「草むしりのグリフ? 無い無い。そんなもの作る奴いない……、訳でもないか」
「なんだ、思い当たる奴がいんのか?」
「んー、知り合いが一人いるんだけど、変わった奴でさ。そんなことやりそうだなって」
「じゃあ、頼んでみてくれよ。草むしりのグリフ」
「でも、その人は多分、もっと《《深い》》所に行ってるから……」
「なんだよ、出来ねーのかよ」
「まあ、メッセージは送ってみようかな。久し振りに」
「はいはい、アキタ隊員は他の草を回収してくれ。あっちにもいっぱい有るから」
とジョエストの指す方には人の倍ほどもある草の山。
「げー! 運ぶのは今さっき魔法で出来たでしょ!? ね、隊長?」
「いやあ、エーテルで念動力は作れるんだが魔法って言っても結局は自分の生体エネルギー、まあスタミナみたいなものを力に変換してるだけだからな、疲れるんだ。なあニア隊員」
「もう力が出ないですぅ。スパナより重いもの持ったこと無いので重いの無理ですぅ」
嫌にしおらしくなるニア。
「マジかよ」
そんなこんなで粗方草むしりを終え、草を敷地の片隅へと廃棄したときのこと。
「なあ、そう言えばずっと気になってたんだけど、この剣はなんなんだ?」
アキタが指を指す。それは東方防魔局裏の片隅にある古めかしい台座に刺さった錆た剣。今まで目には入っていたが色々なガラクタが寄せ集められている区画にあったために聞かずにいた。
「ああ、あれな。《《伝説の剣》》だな」
三人は台座を取り囲み、まじまじと眺める。
「これは昔っからここにあるものだよ。誰も抜けないし、こういうオブジェじゃないかって言われている」
ニアが握ってみる。
「ホントだ、抜けない」
「へー」
続けてアキタが何気なく手を伸ばし引き抜こうとしてみる。
シャポッ
「あ」
ピカッと輝きが溢れる瞬間、
シャコン
収まる光、訪れる静寂。
「……」
シャポッ
ピカッと輝きが溢れる瞬間、
シャコン
「……いやいやいや」
シャポッピカ
シャコン。
シャポッピ
シャコン。
見つめ合う三人。
「……そっと、しておこうか」
ジョエストはみんなの目を見つめ静かに言う。残り二人も何となくそれが良いと思い、今のことは三人の心に留めることとなった。




