第7話 深夜の急襲2(第1部・全15話)
「肉弾戦だ! 接近用武器で対応を!」
まあそうなるよね。
キリはそう思った。
だが肉弾戦なんてイヤだ。
好きではない。
んなこと言ってる場合じゃない。
キリは重火器を投げ捨て、新たに配給された武器を手にする。
右手にヒートナイフ、左手に火薬式銃で迎え撃つ。
遠くから見ると小さな白い小虫兵器生物群に見えた。
だが直前で見ると視覚情報とは違う。
目の前まで迫ってくると、でかい。
2~3メートルはあるだろうか。
イヤだ。
ちきしょう!
この『小虫兵器生物』の体内にもあのコアカプセルがあるのだろうか?
そこが弱点なのか?
だが確認している場合ではない。
キリたち捨て駒突撃隊は手にするヒートナイフと火薬式銃で肉弾戦に突入する。
襲いかかってくる小虫兵器生物の触手? 足をヒートナイフでブロックする。
接触した部分がビリビリバリバリ言って電光石火が走る。
明るい。
眩しい。
まるで大きな線香花火みたいに辺りを照らす。
線香花火だったらよかったのに。
どのような仕組みで発光するのかは知らない。
んなことどうでも良い。
すかさず左手に持つ火薬式銃を小虫兵器生物の頭部?腹部?に弾丸を打ち込む。
発砲音の重高い音が辺りに響きに、弾丸が体内にのめり込む音がボコボコと聞こえる。
効果あった!
だがそれも虚しかった。
うーん、よくある映画の描写そのもの。
小虫兵器生物から噴き出した『血液』が、まるで青白い花火のように噴き出す。
飛び散る花火。
火花とも言える。
バチバチと輝き、あたりを照らす。
それに驚いたメンバーの表情が見てとれるほどだ。
だがその花火と一緒に『血液』が飛び出す。
その血液は、まるで溶岩のように、溶けた鉄のようにあたりに飛び散った。
それはほぼ溶岩であった。
一体どうなってる?
小虫兵器生物から激しく噴き出した青白い花火と共に、
溶岩状態の血液が他のメンバーに降り注ぐ。
薄暗い戦場の中で、溶岩を浴びせられて燃え盛る人影。
この世の物とは思えない地獄の悲鳴を上げて燃えていくメンバーたち。
冗談じゃない!
キリは怯んだ。
当然、他のメンバーも怯んだ。
撤退か?
だが命令は来ていない。
どるする?
このままじゃ自分達も危ない。
その時、一斉通信が入った。
撤退の命令であった。
「全員、直ちに前進基地直前の最終防衛ラインまで撤退するように。」
その命令の内容は、最前線で戦うキリには不満大炸裂の極致であった。
だがこんなところで文句を言っていても仕方ない。
自分たちは捨て駒突撃隊なのだ。とにかく逃げよう。
「全員、基地まで撤退するぞ!」
メンバーが口々にし、全速力で基地に戻っていく。
全力ダッシュで駆け抜ける。
息がきれる。
そう言えば、全力ダッシュで走るのはいつぶりぐらいだろう?
背後からは小虫兵器生物や円盤生物が差し迫っている。
キリ自身のわずか数メートル後ろをすぐそばまで迫り来る。
こうなったら全力ダッシュくらべだ。
これが徒競走だったらまだ良かった。
それなら死ぬことはない。
キリ以外の捨て駒突撃隊のメンバーの何人かは犠牲になっている。
霧の背後から絶叫のサラウンドが重々しき響き渡る。
やべっ!
足がもつれる。
疲れた。
このままではやられる!
いかん、ピンチだ!
その時、助けが入った。
「キリ君、大丈夫?」
アヤカ先輩であった。
前進基地に駆け込むキリにアヤカ先輩たち突撃兵団が助けに来た。
捨て駒突撃隊には支給されていない大型のヒートナイフで、
キリの背後に迫る小虫兵器生物を切り裂く。
花火のように振り注ぐ溶岩のような血液を、
これもまた見たこともない盾で防御するアヤカ先輩。
「早く、前進基地まで戻って!」
キリは嬉しかった。
憧れのアヤカ先輩が自分のことを助けに来てくれたことが嬉しかった。
だが嬉しい気分は続かなかった。
隙をついて、別の小虫兵器生物がアヤカ先輩に狙いをつける。
「アヤカ先輩、危ない!」
キリがそう叫び、必死に対応しようとした時、救援の閃光が走る。
「おい、早く行け。」
カミヤであった。
ピンチのアヤカ先輩をカミヤが助けに入った。
カミヤもアヤカ先輩と同くキリが見たことのない最新装備で武装している。
キリはなにもできなかった。
キリはカミヤのように素早く対応できなかった。
「ありがと。」
「どういたしまして。」
呆然と立ちすくむキリに、カミヤは視線を逸らすことなくキリに告げた。
「早く最終防衛ラインまで戻れ! ここは俺らの管轄だ!」
冷たく言い放つカミヤのセリフに反応できずにいると、
アヤカ先輩が戦いながらキリに告げる。
「キリ君! 早く安全地帯に戻って!」
見事なシンクロ率で敵を撃破し続けるアヤカ先輩とカミヤ。
カミヤが続ける。
「早く行け! 俺たち突撃兵団に任せろ!」
キリの心の中を、嬉しさと悔しさが大量に押し寄せ、胸が熱くなり息が乱れた。
その時、最新兵器発射のカウントダウンに入ったと、全員通達で緊急連絡が入った。
* * * * * *
「インケース・ゲージコース・オープン!」
作戦司令室のコンソールに座る副司令のマヤの声。
「地上部隊は撤退したの?」
視線を前にコントロールルームの巨大マルチモニターを凝視してマヤに問うハヤセ作戦司令。
そのすぐ手元付近にも複数の小型マルチモニターがふわふわ浮いている。
「はい。地上部隊、現在撤退中。全部隊がこの前進基地にもどるまで、推定後5分です。」
ハキハキとした的確に状況を伝えるマヤ。
ハヤセはモニターの表示を見つめながら疑問に思う。
「あと5分で先行した突撃隊が完全に撤収できるの?」
ハヤセの素朴な疑問に、マヤが即答する。
「大丈夫です。念の為、突撃兵団を救援に向かわせました。」
ハヤセが見るモニターに先行した突撃隊=捨て駒突撃隊と合流する
突撃兵団の識別信号が交差している。
「さすがね、マヤ。判断と手際がいいわ。」
その言葉に、さりげなくクールに答えるマヤ。
「先輩の日々の指導のおかげです。」
その言葉にハヤセは複雑な表情で答える。
「模範解答ね。まあどっちにしても、ツングースカ・ファープ全機展開まで
5分以上かかるから味方を攻撃してしまう心配はなくなったわね。」
ハヤセは自身が陣取る作戦司令室中央のすぐ横で待機しているマーシャに話しかける。
この作戦司令室において、一人異なる軍隊の制服を着用しているマーシャは少し浮いて見えている。
それはそうだ。
その制服は外国軍の物。
しかもそれは米軍の物ではない。
その違和感を感じてか、マーシャは大人しくしていた。
ベレー帽を被った凛としたマーシャのその姿が、ハヤセにとって心強かった。
マーシャはハヤセの語りかけに聞こえないかの如く、前面の巨大スクリーン群を注視している。
一見無視をしている態度であったが、ハヤセはちょっと笑みを浮かべて気にはしてはいなかった。




