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奪還するは我が青き星  作者: 宙美姫
第1部 地球攻防戦
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第5話 基地への帰還(第1部・全15話)

活動が停止した要塞級のメドゥサ。

キリが突き刺したコアの表面はまるで氷のように細かく飛び散った。

その中にある『シリコンの塊の結晶体』。

これはいったい。

「キリ君、コアを。」

アヤカ先輩の言葉で我に返るキリ。

キリは要塞級のメドゥサのドロップアイテムと言えるコアを手に取って

アヤカ先輩に差し出し渡そうとする。

「それはキリ君が収納ボックスに入れて持っていて。」

「え?」

「それはキリ君の功績だから。」

キリは思わず切り返した。

「でも、これは三人で。」

アヤカ先輩はキリの問いかけを無視して続ける。

「入るでしょ、その収納ボックスに。センチネルヘッドと一緒に。」

惚けていたのかもしれない。

三人で協力して勝ち取った成果なのに。

でもそんな、アヤカ先輩が好きだった。

男勝りのアヤカ先輩が好きだった。

男?

そういえば男がいる。

重力銃?と言うキリの知らない最新兵器で敵を足止めしてくれた、男。

カミヤだ。

「俺の収納ボックスの方に入れろ。たぶん、それだと二つは入らない。」

そう言ってカミヤは自身の持つ大きめな収納ボックスを差し出す。

カミヤ!

むかつく!

そうくるか!

こいつは嫌いだ。

学生時代、散々俺のことをコケにしてくれた嫌なやつ。

きっと、コアを手に入れた成果を独り占めにするんだろう。

確かに三人で協力して戦った成果なのだが。

「ありがとう。カミヤ君。」

アヤカ先輩がそう言う。

アヤカ先輩がそう判断するなら良しとするか。

確かにキリの収納ボックスに収穫物のドロップアイテムは二つは入らない。

アヤカ先輩の言葉を信じて、手に入れたコアをカミヤに差し出すキリ。

その時、カミヤが反応する。

「あれ? お前、キリか?」

今気がついたのかよ!

全然気がついていなかったのかよ。

まあキリにとって嫌な思い出の張本人だからすぐに思い出したが。

だがカミヤにとってキリなど眼中にない思い出の人物だから、そうなるのだろう。

カミヤの顔が驚きから、嘲笑の表情へと変わる。

「おお! お前キリか。2人とも無事で良かったな。」

キリはカミヤの表情が驚きから嘲笑に変わったのを見逃さなかった。

だからカミヤとはそれ以上会話は続けなかった。

特に好きではないし関わりたくないから会話を続ける必要はなかった。

だがなんで!

なんでこんな時にこんなやつが!

カミヤはキリにとって思い出したくない存在であった。


その時、2人の通信装置が鳴った。

アヤカ先輩とカミヤが装着している最新鋭の装備が反応している。

アヤカ先輩がすばやく通信装置に目を配る。

カミヤもだ。

だがキリの装備にはそのような通信設備は装着されていない。

自身の身体をギリギリ精一杯守るプロテクター装備しかない。

「前進基地に至急撤退って事ね。なんでこのタイミングで。」

重力銃を肩に乗せたカミヤがすでに来た方向に身体を向けている。

「なんか最新情報があるんじゃね。早く戻ろうぜ。」

そう言って足早にその場を離れるカミヤ。

アヤカ先輩はきびすを返してキリに声をかける。

「行くわよ、キリ君。前進基地に戻りましょう。」

自分だけ、捨て駒部隊の自分だけ、通信設備を支給されていない。

悔しい。

なんか悔しい。

だが、せっかく憧れのアヤカ先輩がキリの事に気を遣ってくれている。

悔しいけど嬉しかった。

キリは嫌なことを払拭するため、精一杯虚勢を張った。

「はい。わかりました。アヤカ先輩。」


* * * * * * * * * *


「キリ君、そのカプセルを本部に渡しに行ってよ。連絡しておいたから。」

アヤカ先輩がサバサバとキリに伝える。

「え? だってこれ、アヤカ先輩やカミヤと協力して戦った結果なんじゃ?」

アヤカ先輩がさらりと口を開く。

「いいじゃん。直接手に入れたの、キリ君だし。」

なぜだ?

キリはちょっと納得いかなかったので、少し離れたカミヤの方を見る。

カミヤは三人が帰投した前進基地入口ゲートでパスコードを打ち込みながら答えた。

「キリ、お前これ本部に持っていけ。」

入口ゲートを開けたカミヤはそう言って自分の持つ収納ボックスをキリに投げて渡す。

え?

なんで?

俺が運ぶの?

てか、俺使いっぱ?

いや、違う。

違うか。

疑問の表情でカミヤを見るキリの表情を見ることなく続ける。

「あ? なんだよ。本部に顔出すの面倒なんだよ。それに、俺今日疲れたし、

俺はそれに興味ない。今日のお前の戦利品だよ。」

カミヤ、お前アヤカ先輩がいなかったら独り占めしたんじゃないのか?

本当か?

いいやつなのか?

本当はこいつはいいやつなのか?

だがしかい、いい記憶は何一つない。

なぜここで出会った。

二度と絡みたくない。


「腹減ったし疲れたし、俺はメシ食って寝るわ。」

カミヤは直接顔も見せず、ゲートを通り過ぎて前進基地の中へと消えた。

「でも。」

納得いかないキリにアヤカ先輩は淡々と続ける。

「いいから早く。上の方にはもう伝えてあるから。」

上の方。

上の方。

あまりいい響きには聞こえなかった。

キリ自身は捨て駒突撃隊だ。

ちょうど上に直訴できるチャンスとも言えた。

でもキリはそんな気になれなかった。

「キリ君、じゃあね。また戦場で会いましょう。」

そう言って手を振ってアヤカ先輩も立ち去っていく。


え?

そんな。

これなんかの罰ゲーム?

まあ確かに、二つの収納ボックスの中にはキリ自身の手によって収穫された

『センチネルヘッド』と『コア』が入っている。

この世の物でない、邪悪な侵略者のブツだ。

なんでカミヤが成果を独り占めしなかった?

アヤカ先輩がいたからか?

それともあれか?

なんか強力な放射能とか未確認の謎の細菌だったりするのか?

キリは言わば下っ端で何も聞いていない。

だけどアヤカ先輩たちは情報を得ているかもしれない。

確かに収納ボックスは『厳重な多層構造』で作られている。

このせいで汚染や感染したら嫌だな。

確かに罰ゲームかも。


そう思いながらキリは富士山嶺外枠付近に構築された前進基地の

本部エリアへと進んでいく。

最初は暫定的な野戦基地であったが、敵との戦いが一進一退を繰り返すと、

その場しのぎではなく恒久的な基地へと変貌していった。

そう。

敗走上等の野戦基地状態だったのが、ある時期を境に急に人類側が強くなり、

反撃し、今では互角の状態へと進化している。

人類側が強くなった時期に、この野戦基地は本格的な恒久的前進基地へと

増殖・拡張していった。

なぜなのか?

確かにある時期を境に『最新鋭の未知の装備』が開発され、

現場にも支給配備されるようになった。

今キリ自身が持つ敵のサンプル。

それは今回は初めてではないはず。

これまで何回か『敵の捕虜』を捕まえたという噂も聞いたことがある。

それらの分析が人類側に反抗のチャンスをもたらせたのか?

それにしては、急激に『未知の最新兵器』が開発されるのは都合が良すぎる。

まあ、捨て駒突撃隊のキリにとって、それらは全く関係ないことなのだが。


キリたち捨て駒突撃隊の『宿舎』はいつでもどこでもすぐに移動できる車両基地だ。

『いつでもどこでも』と言えば聞こえがいいが、

結局は大型トレーラーやキャンピングカーがいっぱい連なる原っぱだ。

ぜんぜんゆるくない、ハードなキャンプ場みたいなものだ。

『本部』はプレハブの建物から、近くにあった鉄筋コンクリートの建物を

接収&改修して、エアコン常時完備のすてきなホテルみたいになってる。

まあ、キリたち捨て駒突撃隊の間では本部のことを

『巨大モーテル』って呼んでいるのだが。


まるでホテルのような『巨大モーテル』こと『本部』入り口に辿り着くキリ。

当然の事ながら衛兵がいる。

事情を伝えると事前に伝わっていたようで普通に通される。

なんか田舎の小さな営業部から、いきなり大都会の本社に呼ばれるような感じだ。

今は敵の侵略が始まって、そのような昔の出来事はおとぎ話状態になっている。


ドアを開けて中にはいる。

エアコンの行き届いた空調と温度、湿度が心地よい。

まさに本社って感じ。

結構広い受付の衛兵に伝えるとしばらくして、女性将校が現れた。

「この戦利品はあなたが手に入れたのですか?」

キリが受付に手渡した二つの収納ボックスを見て女性将校がそう言った。

作戦司令のハヤセだ。

そのはずだ。

たぶん。

民間から急遽招集されてこの人類反抗軍に入った元一般市民のキリであったが、

さすがに『地球反抗作戦』の指揮を取るハヤセ作戦司令の顔を見てわかった。

階級章はよくわからなかったが、地球反抗作戦で目に見えて結果を出している

ハヤセの顔はわかった。

「はい。いえ、自分だけの手柄ではないのですが。」

ハヤセは目を輝かせて収納ボックスを見つめる。

「これが要塞級のコアとセンチネルヘッド。」

キリが手渡した二つの収納カプセルをじっと見つめているハヤセ。

ハヤセが他のことを気にせず、ずっと収納カプセルを近距離で見ている、

と言う事は、放射能や謎の細菌に感染する心配はないと言うことか。

カミヤの嫌がらせと考えたのは思い過ごしということか。

もっともアヤカ先輩もいたわけだから、そんな事はない。

キリの思い過ごしという事にした。

しばらくすると奥からもう一人の人物があわられた。

作戦司令のハヤセと同じ女性の武官だ。

作戦司令のハヤセとほぼ同じぐらいの体型。

見た事もない軍服を着ている。

どこの国の軍服だ?

顔を見ると『外人』であった。

金髪の髪型によく似合うベレー帽。

階級章は知らない物だ。

米軍か?

まあ米軍だろうな。

そう思った時、結果的にハヤセが答えてくれた。

「マーシャ、見て。連絡のあった要塞級の収穫物よ。」

マーシャ、と呼ばれた外国軍の将校。

たぶん米軍以外だろう。

それはそうだ。

突如として始まった地球規模の地球外から来た敵の侵略。

生き残った残存兵力で手を組むしかなかった。

「彼は?」

ハヤセの横に立ったマーシャはキリを見て問うた。

「彼がこの要塞級の収穫物をゲットしてくれたの。」

ハヤセとマーシャがじっとキリを見る。

キリは視線をどこに合わせていいかわからず、思わず目を逸らした。

本当ならここで敬礼するのだろうが、キリは緊急招集組だ。

キリは敬礼することを思い出して遅れてそれを行った。

「要塞級の残存パーツ、とても貴重。どうもありがとう。」

マーシャが結構流暢な日本語で口をひらく。

天才か、勉強家か、あるいはスパイか。

スパイ。

もうそんな事を言っている余裕はない。

お互い信じて協力するしかない。


恥ずかしがらずに自分の視線を二人に戻すキリ。

「ご苦労様でした。」

ハヤセがそう言ってキリに敬礼し返す。

しばし収納カプセルを見ていたマーシャも遅れてキリに敬礼する。

二人の視線が熱い。

二人の視線になぜか耐えられなくなった。

キリの心にモヤモヤとした複雑な気持ちが込み上げてくる。

行こう。

戻ろう。

なんとも言えない気持ちで胸がいっぱいになった。

「失礼します。」

そう言ってキリは敬礼を終え、振り返り、来た道を戻る。

ここは空調が効いて温度や湿度がとても心地よかった。

こんな素敵な環境で生活できていたのは、いつぶりくらいだろうか。

まあ、いい。

今日は疲れた。

自分のベースに戻って早く寝よう。

野晒しで夜風が吹き込む凍える合宿キャンピングカーのベッドであったが、

キリにはもう慣れていてそれが心地よかった。


* * * * * * * * * *


「分析、完了しました。解析率98パーセント。」

作戦司令室の複数のモニターに表示される分析結果の数値や、

シミュレーションモデルの数々。

コンソールに座る副司令のマヤが左右に立つハヤセとマーシャに伝える。

表示されるデータを目で追うハヤセとマーシャ。

「彼が、突撃兵の彼がゲットしたと言う、敵のドロップアイテムを分析はこれで全部?」

ハヤセの問いにマヤは素早く答える。

「ですね。センチネルヘッドと要塞級のコアから得られた分析結果はこれで全部です。」

じっと見つめるマーシャ。

ハヤセが声をかける。

「マーシャ、どう思う?」

モニター群の表示から目を離さず、少し考えて口を開くマーシャ。

「やはりね。想定通りだわ。スキャンチューブ自体は探索装置の『ケーブル』。

センチネルヘッドはスキャンチューブの先端部分。

探索装置と破壊攻撃用を兼ねてるわ。

要塞級は言わば中継ステーションの役割ね。

ここから枝分かれ的にスキャンチューブがあらゆる方向へと放たれているわ。」

マーシャの答えにハヤセは再確認するかのように問いかける。

「すなわち要塞級と全てのスキャンチューブは敵のドーム基地本体に

有線で繋がっていると、言うわけね。」

マヤがその分析に割って入る。

「と言う事は、敵のドーム基地の役割とは、やっぱり。」

ハヤセとマヤの言葉に対し、マーシャは視線を逸らす事なく、呟く。

「あの敵のドーム基地自体が、外宇宙から来た『探査機』と言う事ね。

この星の、地球の状況を調べるためのね。」

マヤが残念そうに呟く。

「探査機。」

マーシャが続ける。

「私たちが以前、月や火星や金星に探査機を打ち上げ、

表面に着陸させて調べたのと同じ事ね。

でも、彼らは探査と同時に攻撃も行っているわ。

すなわちあれは『探査機』であると同時に『侵略兵器』でもあるわ。」

ハヤセが再確認のため、マーシャに問い続ける。

「敵の探査機である敵のドーム基地は、どこから来たの? やはり。」

この時、初めてマーシャはハヤセやマーシャの目を見て口を開く。

「そう。月よ。月の裏側のコロニーから打ち込まれたと思って間違いないわ。」


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